コロナの時代
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コロナの時代

LOUISE通信

先日、かわちゃんのお父さんの命日、それも一周忌だった。お葬式はちょっとした有名人くらいに盛大だったけれど、今回は義理のお母さんがたった一人、お寺でお線香をあげただけらしい。私たちが聞くまで、すでに終わっていたことさえ教えてくれなかった。小さな田舎の街で床屋を細々とでも続けているお母さんからすれば、東京に住む長男夫婦が来ることは、近所の人たちの手前もあり、私たちが思っている以上に怖いことなのかもしれない。だけど息子に「来ないで」とも言えなかったんだろうな。ならばせめてお花を、と思ったが、かわちゃんから今は送らない方がよさそうと言われたのでやめることにした。夫の家のことは夫に任せた方がいい。

OPEN DAYの前日「午後から手伝いに行くね」と次女のしーちゃんからラインが来た。私は少し迷って(迷ったのは、しーちゃんに会いたかったから)、「お会計終わってるし、お弁当とお花渡すだけやからひとりで大丈夫、リスク回避しとこ。」と返した。それでも当日しーちゃんは一瞬だけやってきた。差し入れと言って持ってきたバーガーキングのカフェラテを冷蔵庫に入れて(いや、店にもっと美味しいコーヒーあるし)、しばらく使っていないキッチンを軽く掃除した後、なにも言わず帰っていった。「しーちゃん下にずっといましたよ」とあとでお客さんから聞いてびっくりした。長居すると私に怒られると思って帰ったふりをしたらしいが、帰り方が不自然だったのを思い出すと笑ける。しーちゃんも、すさみんやお客さんたちに会いたかったのだろう。会いたいよね。

小さい頃、私の父は職人としての腕は超一流だし、弱い立場の人たちをいつも助けてあげてるし、酔っぱらいに喧嘩を売られて負けたことがないし、近所にあった金沢組のおっちゃんたちと道でばったり会っても堂々と話しているし(私はいつも少し緊張していた)、何があっても守ってくれる、どんなことがあっても大丈夫だと思っていた。高校生の時、神戸の地震が来たあの朝も、寝室があった三階からパンツ一丁の姿で、古いが故の急すぎる階段を「大丈夫かッ!」と言いながらドタバタ転げるように降りてきた。その姿がまるでガニ股で踊るゴリラで、後からその姿を思い出して笑いながらも、今まで見たことのない父の真剣な表情は心に焼き付いており、それだけで全てが解決したみたいな安心感に包まれて、私たち子供はたぶんなにひとつ心配していなかった。

私はいま、あの頃の父の年齢とほぼ変わらないんだなぁ。そう思うと、父が決して最強なんかじゃなかったことが痛いほどわかる。その勢いのまま実家の母に連絡した。母と話すといつも泣きたいくらいイライラする言葉が返ってくるから、私から連絡することはなくて、そういうのはしーちゃんがやってくれる。でも今は、イライラするくらい平気だと思った。

「お母さんたち大丈夫?お金あるん?」とメールした。(あるわけないんだけど)。少し時間がたって「いまヨガきてる」と返ってきた時は、力が抜けた。どんなヨガか知らんけど(笑)、ヨガ行くお金も気持ちの余裕もあるんだ。頑固な父と頑固な母と老いぼれたかずえ(犬)だけの貧困生活。長年の不満が爆発して殺人事件になっても受け入れようと覚悟さえしていたから、母が父と喧嘩にならないよう距離を取る努力をしてること、もともとエアロビが大好きだった彼女だから、きっと運動することを心から楽しんでると思えたことも嬉しかった。ほっとした。「国からお金入ったから、お母さんたちにおこづかいあげる。」と言うと、「わたしらは大丈夫やから。何もできへんけど、頑張って」と返事がきた。
これにはめちゃくちゃ驚いた。たぶん大阪から見る東京は、私が実際に住んで実感しているよりも大変に見えているんだろう。ロンドンでテロがあった時も同じような反応で、テロのニュースを日本で見てるのと、実際に住んでいるのとでは全然違う。すぐ横で爆発してるわけじゃなかったけれど、とにかく心配された気がする。いや、すごく怖かったんだけど、怖いながらも普通に生きていたし、今も私は全然大変じゃない。だけどそのおかげで、母と仲良い親子みたいなやりとりができるなんて。

「いやいや、ちょっとだけやし。明日確認してください。ヨガいいよね!お父さんにもよろしくね。」と返した。お父さんにちゃんと半分渡すか心配だけど(笑)、ま、大丈夫だろう。あの味は親には理解できなさそうなので現金だけでいいかな、大阪に住む妹や弟には、桉田餃子のセットを注文して送った。
言葉にするのも怖いけど、よぎってしまった。高齢で持病持ちの父に、私は次いつ会えるんだっけ?

(写真はOPEN DAYの日に初めて来てくれた台湾人の男の子がフィルムカメラで撮ってくれたもの。勝手に撮られてたけど、ちゃんと送ってくれるところが優しい。ありがとう!)



ありがとうございます!!
LOUISE通信