おもいやり
「ワクチン接種終わった?」
と、友達が聞くので答えた。
「うん、2回完了したよ。○○ちゃんはもう済んだ?」
普段こういう話は自分から振らないけれど、聞かれたので同じように聞いただけだった。
「・・・」
あれ?
「実は予約すら取ってないんだ。」
あ、そうなんだ と相槌を打って、次の言葉を待つ。
「実はアレルギー体質で子供の頃予防接種で死にかけたから打たないでおこうかと思っていて・・・」
なるほど。
話を持ち出されたので、てっきりワクチン接種したのかと思ってしまった私は、ちょっと失敗したかなと思った。
「おぉ、そっかそっか。それは打たない方がいいかもね。」
打ちたいと思っている人で、体質的にも問題ない人が接種するものだから、そういうこともあるだろうと思い普通に返事をする。
すると、
「会社でその話が出る度にヒヤヒヤするんだ。
ワクチンを打たない=”悪”みたいになってるから、
早く打った方がいいよ!予約した?と詰められるんだよね・・・」
私は驚いた。
自分の職場でそんな話を聞いたことがなかったからだ。
「体質的に難しいってことを説明しないの?」
「説明できる雰囲気じゃないんだよね。だからいつもごまかしてるんだ。」
職域接種などもあったからか、私の職場でもワクチン接種の話が話題に上ることはあったが、最初にワクチン受ける派か否かを確認してからその後の会話を続ける人がほとんどだった。
なので、受けない人に対してどうこう言うのを聞いたことがなかった。
とは言っても、在宅ワークが基本なのでオンラインミーティングで一緒になった人たちだけが数少ない私のサンプルなのだが・・・。
ネット上でワクチン接種を受けない人へのハラスメントがあるというのは見たことはあったが、嫌がらせや差別とまでは言い切れなくても、その類を身近に感じたのは初めてだった。
また別の友達は、季節性の持病があってしばらくワクチン接種を見送っていた。
症状が改善したので検討しているけれど、開発されて間もないものだから、多少疑心暗鬼になっている部分があるとも言っていた。
その友達も周囲の人がワクチンを打つのが当たり前だと思っているために、返答に困っているそうだ。
こちらの事情を聴く前に、
「早く予約をした方が良いよ!」
と、ある種の正義感や思いやりから強く言われるのだそうだ。
ワクチン接種については各人の価値観や考え方があるものだし、さらにはその人の持病・体質がネックになるような非常にデリケートな問題なのに・・・。
数からするとワクチンを打たない人の方が圧倒的にマイノリティだ。
マジョリティの一員になると、対峙しているその相手がマイノリティである可能性を極端に少なく見積もってしまう。
相手も自分と同じ体質・考え方である(べき)と思って接してしまい、知らず知らずのうちにマジョリティの当たり前を押し付けてしまう。
差別や嫌がらせをするのはそもそも論外なのだけれど、私の友達の場合、ほとんどの発端は相手への思いやりだったのでは と思う。
その人の事も周囲の人の事も心配しているからこその「早く打った方がいいよ!」なのだろう。
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もう少し若い頃、よくこういうことを言われ、密かに傷ついていた。
(そのうち流せるようになったが)
「どうして結婚しないの?早くした方がいいよ!」
「子供欲しくないの?早い方がいいよ!」
こちらが何も言わなくても、年頃なのに結婚していないというだけで、勝手に決めつけられるのが嫌だったが、どうやらその人たちは心配してくれていたり、良かれと思って言ってきているのだ。
でも、これまでの人生、何もなかった人なんていない。
あなたにも事情があるように、私にもあなたの知らない事情がある。
体質や考え方についても同じ。相手にはこちらの知らない事情がある。
ワクチン接種においても、相手が自分と違う人間であることを頭の片隅においてコミュニケーションしようとする人がさらに増えるといいなと思う。
(これ以上、○○ハラスメントなんて種類、増えなくていいのに!)
何はともあれ、せっかくの「思いやり」なんだから、
「重い槍」に変えてしまわないうちに、ふんわり優しいまま相手に届けたいな。
最後までお読みいただきありがとうございます。 また是非遊びにいらしてくださいね! 素敵な一日を・・・