レッチリのTシャツを着た友人が田植えをしているだけで夏フェス 盗まれた私のチャリがコンビニで飼い主を待つ柴犬といる ユニクロの鏡の前で尻で書く「をの字」のようにスキニーを履く 種明かししながらマジックするように表計算を部長に教える そんなにも親しくもないパパ友と串に刺さったマシュマロを焼く 式典で飛ばした希望の風船が公民館の2階に挟まる
ロックしか聴かない兄の「元気か？」に続くLINEがちょいさだまさし また今日も河相我聞は疑われ程よい頃に殺されている いつからか原田知世は駆けるのをやめてゆったりくつろいでいる 駅前の中古ビデオのポスターの岩下志麻に睨まれている 鳴り響く美空ひばりの着信音 滞りなく法事が終わる 今日もまた正岡子規が授業中ロン毛になってる国語の時間
地図帳に架空の町を書き足して4月を1度抜け出してみる まだ春は不在でしょうか受話器からビバルディだけ聞こえる町で すぐメモをする人でした出ていった日は牛乳が切れる日でした 忘れたい思い出ばかり届くから完成しないデアゴスティーニ 存在を知らせるように駅前でポケットティッシュをもらって帰る 新しい番地をゆっくり半角で打ち込むように4月を始まる あの人が「いただきます」をするたびに私はちょっと神様になる ベランダでバジルをふたり育ててるくらいの覚悟で暮らしませんか
●赤色だけで塗り切った花 ●あきらめたのか傘は下向き ●鼻歌を検索してる
●集まれの人差し指が可愛い ●歩きで来てタクシーで帰っていった ●市民プールでバタフライ
●チラシを踏んで拾う人 ●乗り込んだ時にすべて濡れた ●冷めるまで動かない子
●現実逃避できない雲だ ●どこかの呼び鈴が聞こえる午後 ●手すりの温度で夏だと決めた
●雨の匂いする風に髭揺れる ●冬毛夏毛戸惑う春 ●猫の恋を聞いている
●春一番があの子の耳を見せる ●カーテンを揺らした柄は春に咲く花 ●ポケットの手袋が落ちそうだ
●5時のサイレンにかき消された ●今日は寒いねってもう3回目 ●鼻歌に音符を添える
●呼び鈴を押すとキミの声 ●ここまで陽が差すようになった ●ジャジャーンとか言ってるキミの誕生日
●キミはまたひとくち残す ●雪が足跡消して明日が来る ●手すりの温度を確かめて握る
どんぐりと枯れ葉6枚置いた道 通って良しとキミの口笛
おしぼりをクレープみたいに畳んでは キミの話に相槌を打つ
●キミが好きだった曲ばかり流れる ●例題を越えられない大喜利も終盤 ●ラジオネームだけ読まれた
●走って取りに帰る ●新聞紙を広げたら桃の香り ●渡せないまま曲がり角
