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大人をつなぐ、子どもの力

いきなりですが、幼稚園教諭と保育士は、仲が悪いことが少なくありません。

いや、本当にいきなり何の話かと思われるかもしれませんが、その関係の悪さにより働きづらくなってきている現場の先生は割と多いと考えています。

ちなみに、仲が悪い、と言われてピンと来ない先生方も、もちろんいらっしゃると思います。

もし同じ自治体の公立幼稚園教諭と公立保育士の関係が円滑であるならばそれは本当に喜ばしいことです。

一方で、すごいわかる!と思ってくださる方もおられると思います。

ですので、今回はそんな方向けのお話をします。



幼稚園と保育所(園)の違いとはなんでしょう?

これに正確に答えられる方は同業者か、研究者の方くらいでしょうか。

さらにそこに、幼保連携型認定こども園というものができたことで、その管轄などはさらにわかりにくくなってきています。

興味のある方はネットで調べていただくとわかりやすくまとまっているサイトが出てくることと思います。

今からはそのハード面ではなく、仕事の内容から考えてみることにします。


幼稚園教諭の仕事


幼稚園教諭は法律上では学校の先生にあたります。

つまり小学校や中学校の先生と同列ですし、公立の幼稚園教諭は教育公務員です。

そういわれると、仕事はじゃあ”教育”か。

と考えられるのですが、それは正解の半分です。

幼児期の子どもと生活する中で欠かせないのが”養護”なので、そこも当然仕事に含まれます。

小学校以上の先生も手洗いうがいの徹底、食事のマナー、身だしなみなど養護に関することを丁寧に見ておられる先生もいらっしゃるとは思いますが、年齢が低い幼稚園では当然養護について支える時間が多くなります。

一方で、教育については、幼稚園には小学校のような赤本(指導書)がありません。体系的にまとめられた授業というのは基本的に存在しません。

「幼稚園の子どもが何をしている?」

と尋ねられたら

「遊んでいる!」

と答える方が多いはずです。

それが正解で、子どもは遊びの中で学んでいます。

お恥ずかしいことに正確な文言を暗記していないのですが(じゃあ調べろと、という話ですが)、幼児期の教育の定義は”心身の健全な発達を支えること”と”子供の活動がより豊かになるための援助”です。

幼稚園教諭の一番の仕事は、いかに子どもにとっての遊びを通して子どもの成長につながる要素を盛り込んでいけるかを考え(教材研究)、個に応じた適切な援助をしていくことだと考えられます。

これは幼稚園教諭あるあるだと思いますが、遊びを通した教育として絵画制作などを保育に取り入れたとして、描き終えた子どもに

「もう遊んでもいい?」

なんて言われた時には、猛烈に反省するものです(笑)。苦し紛れに

「今のも遊びだったんだけど・・・」

なんて意味のない言い訳をつぶやきそうになることもありました。

さて、話を戻して、今は預かり保育なども始まっているので例外はあるとしても、幼稚園の子どもが幼稚園で過ごす時間は基本的に5時間程度です。

幼稚園教諭は、子どもが帰った後に、保育室の環境を整えたり、翌日以降の保育の準備をしたり、職員間で会議をしたりする時間を設けています。

これがなかなか忙しい。

「幼稚園の先生って子どもと遊んでられていいよね。」

なんて口が裂けても言えません。怒られます(笑)

ただ、小学校以上の熱心な先生方が、専科の先生が担当してくれる授業の間に答案の丸付けをしたり、授業以外に部活動指導もある中、教材研究をしたりしていることを考えると、幼稚園教諭は時間的に恵まれていたな~と感じることは正直多いです。

ただ、良くも悪くも幼稚園は教育をしてくれる施設、という印象が世間に強いこともあり、保護者からの期待が高いことは重圧を感じる部分でした。

先の絵画制作の話を挙げると、子どものためを思っての活動か

”今度作品展があるから、そのために一人1枚は絵を描き上げなきゃ”

という、大人サイドの都合、保育の先に保護者の顔が浮かぶような活動をせねばならなかったことは多いです。そういった意味では幼稚園教諭の努力ではどうしようもなく、世間が幼児期の教育についての考えを改めてもらえると嬉しいな~とも感じています。

いや、幼稚園教諭側から”これも教育ですよ~”という保護者向けの情報発信をすることもとても大切なのですけれどね。

NHKのすくすく子育て、という番組では割と一般の方向けにそんな話題も取り上げられているためぜひご覧ください!


保育士の仕事


あえて言いましょう、幼稚園と全く同じです。

保育士も幼稚園教諭と同じ教育を、保育所(園)で行っています。

さて、もし今の2行のみを読んで、ムッと思った幼稚園教諭の方がいらっしゃったならば、それが私が冒頭で述べた

幼稚園教諭と保育士は仲が悪いことの最大の原因です。

その話を置いておいて、同じと言いつつも、幼稚園教諭の仕事と異なることを整理してみましょう。

一番は、

時間的に恵まれていない

ことです。

これはやや固い話ですが、幼稚園や保育所にも教科書のような

”こんなことを大切に保育してくださいね~”

ということがまとめられたものが、それぞれにあります。そこにはこんな活動をしましょう、のようなことはほぼ書いていないのですが、まとめられてい内容は、限りなく同じことです。

さて、では保育士の仕事の時間はどうでしょう?

勤務時間は幼稚園教諭と基本的に同じ。

なのに、子どもが施設にいる時間が大きく異なります。

12時間、保育所で過ごす子どももいます。

普通に考えてみてください、

子どもが5時間程度施設にいて、残り2,3時間は大人だけの時間のある幼稚園
子どもが10時間程度施設にいて、大人だけの時間は全くない保育所(園)

どちらの方が、保育環境を整えたり、保育内容の相談をしたり、クラス便りのような保護者啓発につながる書類作成をしやすいでしょうか?

当然幼稚園ですよね。

言い換えれば、保育所(園)も幼稚園と同じ教育を行うことになっているにも関わらず、それを検討できるだけの時間が確保されていないのです。

「じゃあ、やっぱり幼稚園の方が教育できているんじゃない。」

という話をしたいわけではありません。保育士は、その時間の無さを限りなく身を削ることでなんとかやりくりしているのです。

ちなみに、これだけ読むとやたら保育士擁護をしているようですが違います。

もっと頑張ろうよ、と言いたくなる先生は当然どちらにもいて、個人の問題なので施設の違いではありません。

素晴らしい力量や努力、センスのある先生もどちらにもいて、個人のことなので施設の違いではありません。


幼稚園教諭と保育士が仲が悪い原因

先にもチラッと触れましたが

幼稚園教諭の”教育”というワードへのプライド

です。これはどちらも経験したからこそ身に染みて感じます。

やってることは同じなのにな~、というのが今の私の本音ですが、それがどうしても納得できない先生のなんと多いことか。

そして、それが幼稚園と保育所が一体となり始めている今の保育現場にどれだけ大きな障害となっていることか。

この辺、なんとかならないかな、と毎日のように感じます。


そこで子どもの登場!

いや、子どもに負担を強いるつもりは一切ありません。

ただ、幼稚園教諭、保育士の共通項と言えば間違いなく子ども好きなことだと信じています。

これは実体験ですが、はじめは険悪な雰囲気だった幼稚園教諭と保育士とが、子どもと関わる中で、自然と雰囲気が良くなっていったことは確実にあります。

本当に、子どもの力ってすごい。


これから、ますます幼稚園と保育所(園)の一体化は進んでいくと思います。

大人だけで向き合ってもめるくらいなら、初心に帰って子どもと向き合っていくのが円滑な関係への最短ルートなのかもしれませんね。

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