1時間目こくご第4章

【vol.011】 コラム:大臣の「がっかり」発言が炎上した理由 〜「オノマトペ」と比喩表現は具体的(でキケン?)〜


こんにちは。まえぴょんです。


ドナー登録のご提案

今年の2月12日、水泳の池江璃花子選手が白血病を公表されました。個人的に非常にショックを受けた出来事でした。

私は妻が出産に際して輸血で一命をとりとめたことがあり、その恩返しと思って骨髄バンクの説明ボランティアをしています。献血の際に2mlだけ余分に血液をいただければドナー登録ができるんですが、その登録に際して、ドナーになった場合の手順や安全性などを説明するボランィテアです。このnoteを読んでくださった方で、もし関心を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひドナー登録を検討してみてください。池江選手に限らず、救える命があるなら救いたいという、私の個人的な願いです。


ちなみに先日、我々ボランティア宛に送られてきた資料によると、2月はドナー登録者数が1万人を超えたようです。単月で1万人なんて前代未聞。それだけ大きな影響があったんですね。




「ガッカリした」 オリンピック担当大臣の「失言」

さて、このコラムでお伝えしたいことは実は別にあります。池江選手が白血病であることに触れたオリンピック担当大臣の発言を、マスメディアが取り上げバカ騒ぎしていた現象に対しての嘆きです。


大臣は発言の中で

「本当にがっかりしています」
「盛り上がりが若干下火にならないか、ちょっと心配」

とのコメントをされ、そこにフォーカスし「不適切だ」と糾弾したマスメディアの報道によって、ネットでは

「ひどい」
「選手はメダルを取るための駒ではない」
「桜田のおっさんだけは人として最低だ」
「あまりにも失礼!」
「最低の言葉だ!」
「ありえない」
「許せない!」

と人格否定を含む非難の嵐となりました。そして国会では野党議員に辞職を迫られるほど責められ、大臣は「不適切」発言を謝罪し、撤回されるに至りました。


さて、大臣の発言は何が「不適切」だったんでしょうか。発言の全文を読んでみましょう。

記者:今日ですね、競泳の池江選手がですね、自ら白血病であることと、しばらくですね、休養することを発表しました。オリンピックの大臣としてですね、それについての受け止めをお願いします。 

大臣:「びっくりしましたよね、聞いて。本当に、病気のことなので、早く治療に専念していただいて、1日も早く元気な姿に戻ってもらいたいというのが、私の率直な気持ちですね。」

記者:競泳の中でもですね、最も・・

大臣:「そう、金メダル候補ですからね、日本が本当に期待している選手ですからね、本当にがっかりしています。やはり早く治療に専念していただいて、また元気な姿を見たいですよ!」

記者:「これまであのー池江選手の活躍っていうのはどのようにご覧になられてきました?」

大臣:「いやー日本が誇るべきスポーツの選手だと思いますよね。我々が本当に誇りとするものなんで、最近水泳が盛り上がっている時でもありますし、オリンピック担当大臣として、オリンピックで水泳の部分にね、期待している部分もあるんですね。一人リードする選手がいると、みんなその人につられて全体が盛り上がりますからね。そういった盛り上がりが若干、下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね。ですから我々も一生懸命がんばって、いろんな環境整備とかありますけど、とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、またスポーツ界の花形として、がんばっていただきたいというのが私の考えですね。」

記者:「池江選手にどんなエールを送るとしたら、どんな?」

大臣:「とにかく治療を最優先して、元気な姿を見たい。またがんばっている姿を我々期待しています!」

以上です。「全文」と言いながらはしょられている記事が多いので、会見の様子をイヤフォンで聞き取りながら自分で書き起こしました。



これだけのやりとりがあって、マスメディアは

「本当にがっかりしています」
「盛り上がりが若干下火にならないか、ちょっと心配」

の2点にフォーカスし、会見の中で4回も出てきた「治療を最優先してほしい」という意見はほとんど表に出してきませんでした。


要するに、全体の一部、それも、具体的で分かりやすくてどうでもいい一部を切り取った報道だったのです。そして物事の全体を見ようとしない国民が、そのような報道を見て感情的になり、SNS等で一斉に叩き始めたのです。まぁ、よくあるパターンですが。


なぜ多くの国民の感情が掻き立てられたのか

この程度の批判記事ならネット上にも沢山あると思いますが、私は抽象度オタクです。なぜここまで多くの国民が感情を掻き立てられ、大臣を追い込む世論を創り上げてしまったのかを、「抽象度」という観点で見てみます。


まず、「本当にがっかりしています」という大臣の気持ちが、多くの人の気持ちを掻き立ててしまった原因に迫ってみたいと思います。


実は、「がっかり」という言葉は「オノマトペ」なのです。


「オノマトペ」とはフランス語で「擬声語(擬音語や擬態語の総称)」という意味で、


・脳に直接働きかけ、臨場感を生み出し、そのイメージを明確に伝えられる


という効果があります。言い換えると、


・抽象的なイメージをより鮮明に具体的に伝えられる


とも言えます。


例えば氷菓の「ガリガリ君」は、「ガリガリ」という擬音語を使うことで具体的なイメージが掻き立てられますよね。「ガリガリ」と「固い食感」という表現では、やはり前者の方が具体的なイメージができます。もし仮に、「ガリガリ君」が「固い食感の氷菓」という名前だったら、あれほど売れたかどうか(笑)


ちなみにこれは「ガリガリ君」が刺さったチューハイ「ガリチュー」です。尼崎の行きつけのお店の創作酒。本文とはまったく関係ありません。


さて、この「ガリガリ君」のように、「がっかり」というオノマトペもまた、人の心を掻き立てやすいわけです。


そして前節で「本質理解を邪魔する具体の印象強さ」の話をしました。具体的な言葉はイメージしやすくて印象強く、その印象強さに感情を持っていかれると、冷静に趣旨を理解することから遠ざかります。

今回の「がっかり」も、とても具体的なイメージができてしまうが故に、炎上するほど世論が動いてしまったのだと考えられます。

もし発言が「がっかり」ではなく「落胆」や「消沈」という表現だったなら、メディアの一部を切り取られた報道を観た人々はそこまで煽られていないかもしれません。まぁそもそも、メディアもその部分を切り取った報道をしなかったでしょうね。煽りにくいから。



続いて

「盛り上がりが若干下火にならないか、ちょっと心配」

という表現について。この「下火」という表現は、実際に燃えている火を弱くするわけではありませんから、比喩表現、例え話です。例えなので、つまり、具体表現です。この「下火」も具体表現だから印象が強くなってしまったんですね。だから

「盛り上がりが下火になるとは、何だこの大臣は!」

という非難が起きやすくなるわけです。


もしこれが抽象的な表現で、

「彼女の離脱により盛り上がりが不足する分は、我々行政が環境整備に尽力する」

と伝えておけば、このようなバッシングも起きなかったかもしれません。

ただ、具体的でないから人々の心に響きにくいですけどね。



ではここで、この大臣の発言を要約してみましょう。


池江選手には早く治療に専念して、また第一線で活躍することを願っている。金メダル候補で国民が期待を寄せている彼女が抜けることに消沈している。またオリンピックでは彼女によって全体が引き上げられてきた水泳界に期待を寄せていたが、彼女の離脱により盛り上がりが不足する分は、我々行政が環境整備に尽力する。


こうまとめると、池江選手への思いやりと、オリンピック担当大臣としての責任が感じられそうです。


全体でなく、一部の具体の印象強さを悪用したメディアの煽りは多くみられます。それを前提に考えると今回の大臣の発言は迂闊ではありますが、国民の側も報道を鵜呑みにしない姿勢でいないと、メディアの悪意に騙されてしまいます。一次情報でない限り、噂話程度で捉えておいて問題はないでしょう。騙されないためには、ぜひご自分で一次情報を取りに行き、自分の頭で考える習慣をつけてください。


はい、今日はここまでです。

昨日、鬱の人向けに作っているツイッターアカウントで、出産後の出血が止まらなくって死亡された親戚の方の話をツイートされているのを見かけたので、うちの妻も子宮復古不全による出血多量で死にかけたんですっていう返信をしたところ、なんだかポロンポロンとスマホが鳴り出して、軽めの「バズった」状態になりました。


それを知った妻は、

「あんなツイートより、このnoteの方こそ拡散されたらいいのにね」

と。

いやほんとそう!体に関する情報も大切やけど、こっち思考法も相当重要やと思うんですよ。けどまぁ拡散されないんですよね、こういう抽象的で印象強くない思考法なんて。それこそがっかりだわ。

それでももうちょっと拡散させるために、タイトル変えようかな。オノマトペ付きで。

「人生がラクになる国語の授業」→「頭スッキリ!国語の授業」

いやー、ぜんぜん違う。また考えることにしよう。

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【vol.011】 コラム:大臣の「がっかり」発言が炎上した理由 〜「オノマトペ」と比喩表現は具体的(でキケン?)〜

まえぴょん@抽象思考オタク

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あざす!抽象度アゲアゲでいきましょう!
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自身が鬱になり、なんとか復活した経験から、自己肯定感と論理的思考力さえ高ければ鬱になりにくく、そして社会でも活躍できる人材になるという仮説を立てました。2018年に設立したNPO法人他力本願研究所では、その仮説をベースに人材育成に取り組んでいます。趣味:テニス、飲酒、考えること。