日韓映画界はなぜ差がついたのか

最近日韓の映画業界の差についてコメントを求められる機会がありました。

日本でもうすうす知られつつあるように、今や日韓の映画には、明らかな差がついている状況です。いうまでもなく、日本が韓国の後塵を拝しているという意味です。

決定打となったのはアジア初の米アカデミー作品賞の栄誉を「パラサイト 半地下の家族」に取られた瞬間ですが、実際はそれよりはるか以前から追い抜かれていた印象です。少なくとも、多くの業界人はそう見ています。

本当に韓国コンテンツなんて流行っているのか?

……といっても一般の方にはそんな認識などないのが当然でしょう。ほとんどの日本人にとっては「パラサイト」がある日突然、ぱっと出てきた程度のイメージだと思います。

それは無理のないことで、なにしろ日本は韓国の映画コンテンツがあまり浸透していない珍しい国だからです。

大ヒットドラマ『冬のソナタ』が日本で社会現象的人気となったのは03年~04年ですが、日本で歴代興収ベストテンに入るような韓国映画は、『パラサイト~』が登場するまで、なんとすべてがこの時期までの作品で占められていました。

つまり、一般的にはヨン様だけが一時期ちょっぴり受けただけで、それ以外の時期で韓国映画は(日本においては)主流になることがまったくできなかったということです。

それはなぜか。

日本で韓国映画が流行らなかった理由とは

答えは識者によっていろいろですが、厳しい現実を言うと、このあと韓国映画は日本市場に早々に見切りをつけ、他のもっと広い市場に打って出ていたということです。

つまり、経済成長から見放された日本を相手にしても大して儲からないので、もっと勢いのある中国やアメリカ、欧州で勝負することにしたというわけです。

この点は非常に重要なのですが、あまり日本人にとっていい話ではないために、厳しく指摘した人をあまり見たことがありません。

韓国の映画業界は長年の努力によって自国のコンテンツのレベルを高め、やがてこうした国々で高く売ることに成功しました。

おなじみのネットフリックス等の配信業界でも、日本のそれより韓国の映像コンテンツのほうが、今でははるかに高額で売れている状況です。

同じ視聴数を期待できる、つまり同レベルの作品同士で比べても、日本は金額で負けているのです。

海外展開をコントロールし、適正な利益を確保する人材を育ててこなかったことが理由のひとつですが、こうした価格の差は、すなわち作品価値の差として認識されてしまいます。日本の映画は安いし、韓国のそれよりも下だね、といった感じです。それが何年も続いている状況です。ブランディング上、非常によくありません。

なぜ日本映画界は韓国に負けているのか


このような事になってしまった根本的原因は、日本の映画業界が働く人たちに十分なお金を稼がせていないからだと思います。つまり、他の業界と同じ、分配の不公平の問題です。

よく「韓国は国費を投入しているからだ」とか「日本は市場が大きく輸出しなくて済むから韓国とは違う」と言われますが、それは原因の一端ではありますが本質的問題ではありません。

韓国は、確かに国費を投じていますがそれを働く人たちに還元する仕組みを作り上げている、そのことにこそ注目しなくてはいけません。

たとえば韓国映画の一本当たりの製作費は今では日本映画のそれをはるかに上回りますが、その上昇原因はスタッフらの労働環境を良くしたからです。

監督、カメラマン、脚本家、その他もろもろ。働く人たちの給料を上げ、休みを増やし、まともな暮らしができるようにした。⇒だから製作費が上がった。⇒それを回収するために適切な海外展開をし、賞をとれるクオリティを確保した。⇒クオリティを確保するために、働く人の給料を上げた⇒(ふりだしに戻る)

という好循環のスパイラルを作り出したということです。

もちろんこの間、現場では大小さまざまな問題、軋轢が起きたと言われますが、少なくともこの20年で大幅に韓国映画界が、ビジネス面、労働環境面ともに改善を成し遂げたのは疑いようのない事実です。

今日は映画業界の話をしましたが、これは日本のあらゆる社会に当てはまる話ではないかと思っています。

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