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自社のバリューを言えますか?

経営者の皆さんは、自社を売却するとすればいくらになるか、その「価値」を把握しているでしょうか?もちろん、実際の売買は、買う人がいて初めて成り立つので、買い手のニーズによって価格は変わりますが、ここで言いたいのは自社のバリューを常に把握している人と、そうでない人は、経営者として天と地の差があるという話です

私がこれまで会ってきた経営者の中で、「今のバリューはこれくらい」と即答できる人はわずかで、その人たちはいずれもIPOしたり大手に売却したりしました。一人例を挙げます。

バリューを即答した還暦ベンチャー社長


もう20年以上も前ですが、シリコンバレーのサンノゼで、ある日本人起業家と食事を共にしました。その人は、大手企業を定年退職後、単身渡米し、ベンチャー企業を立ち上げた人です。最初来たときはまだ事務所に電気も通ってなくて、暗くなってきたので、そこで蝋燭の火で食事をしたと言ってました。

「同級生は悠々自適。私は還暦ベンチャーだよ」と笑っていましたが、なんとその後、米国で何社も立ち上げるシリアルアントレプレーナーになり、80を過ぎた今も現役で活躍しています。

その食事の時は、単身で立ち上げて、奥さんを日本から呼んで数年?くらい経った時だったと思います。何気ない会話の中で、

「今のうちの価値は〇ミリオンだから」

とサラッと言っていたことを、今でも鮮明に覚えています。思わず「売上ですか?」と聞いたら、「いやいや、会社のバリューですよ」と笑ってました。

当時は私も経営者になりたてのころで、「自社の価値ってどうやって測るんだ?」と疑問に思ったので、余計に記憶に残っています。

そして、

「来年はおそらく〇〇ミリオンにはなる。最終的に〇〇ミリオンになればEXITしたいねえ」

と。

いやすごい。そこまで明確に数字を把握し、数字で目標を立てているのか。

そして、その後その会社はどうなったか。数年後、何とAppleに売却しました。スティーブジョブスに直接プレゼンし、採用されたことが日本でも話題になりました。そこから何世代かのMacには、同社(Spruce Technologies社)が開発したDVDオーサリングシステムが採用されています。

その社長の名前は、曽我弘さんと言います。年齢的に、その後は引退して今度こそ悠々自適かなと思うじゃないですか。曽我さんのすごいところは、そこからまた会社を創るんですね。結局、3社か4社立ち上げたと思います。本当に、稀有な方です。

自社の価値を言えるかどうかで、経営者の価値がわかる

上記の曽我さんだけではもちろんなく、少なくとも私がこれまでお付き合いをしてきた経営者の中で、IPOや売却などで理想的な出口を作った人は、必ず自社のバリューを把握していました。IPOの準備段階にもなると、それは当然のことですが、そうではなく、そのはるか前の段階からそうでした。

現状を把握しているから、適切な手が打てるのです。

M&Aの仕事をしていると、当然、会社の価値を数字に置き換える作業をします。その価格算定方法にはいろんな種類がありますが、実際のところ、何が正解かというものではありません。会社の価値なんて、定量化できるものばかりではないですし、何より、前述のように、買い手ニーズとのバランスなので、あくまで自己評価としての価値です。

しかし、その自己評価がとても重要なのです

なぜ会社の自己評価が重要なのか。要点は2つあります。

まず、現状把握。自社の価値を判定するには、正確な数字を把握しないといけません。多くの場合、中小企業の経営者はP/L思考です。損益計算書の赤字、黒字だけを見てるので、「なんで利益出てるのにお金残らんの?」となります。自己評価をするには、BSをしっかり読み解かないといけません。つまり、会社の現状をより正確に把握できるのです。

次に、改善への施策に思考が及ぶことです。企業価値を計算すると、期待値よりも低い価値になりがちです。期待値が高いですから。場合によっては、価値がマイナスかもしれません。BSを正確に出して債務超過なら、その時点でマイナスです。マイナスの場合は、株価がつきません。買い手が現れたとしても、1円譲渡です。

これだけ頑張ってきて、1円?という、残酷な現実を把握すれば、それを改善するには何をするべきかに思考が及びます。それが重要なのです

もし、自社の価値が満足できる数字だったら、それをキープする、あるいはより価値を高めるには何をするべきか。そこにも思考が及びます。いずれにしても、現状把握は改善の第一歩なのです

そう考えると、自分が経営している会社の価値を常に把握していない人は、現状を理解できていないとも言えます。実際、銀行にお金があったとしても、それが利益なのか借金なのか、わかってない人も多いのです。P/L思考ならそうなります。

借金で会社が運営できている状態であれば、お金があるうちに早急に手を打たないと、早晩行き詰ることになります。しかし、現状を正確に把握できていないと、その手も打てないのです

これだと、迷惑するのは社員や取引先です。経営者は、少なくとも自社のバリューは把握しておくべきなのです。

経営者の方は、自社がどれくらいの価値なのか、一度客観的に把握してみてください。必要であれば、私も喜んでお手伝いさせていただきます。現状把握は、経営者の『幸せな出口』をつくる第一歩です

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