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パリオリンピック柔道観戦記〜総括

いやー、柔道が終わってしまった。僕の中でオリンピックはほぼ終わった感がある。柔道が一番楽しみだったからなぁ。


柔道日本の成績は立派

日本としては、男子が金2個、銀1個、銅2個、女子が金1個、銅1個、団体戦が銀。正直、もう少し行けるかな、と思ってたし、選手もそう思ってたんじゃないかと。そういう意味では、期待していたような成績は挙げられなかった、と言えるかな。

誤算というか、もう少し成績を期待できる選手はいたと思うし、東京大会で金メダルを取った選手にはもう少しいい成績を、というふうな声もあろうかと思う。

それでも、メダルの総数としてはフランスに次ぐ2位だし、金メダルの数は堂々の一位(だよね?)。ざっと確認したらフランスが団体含めて金2つ、あとはアゼルバイジャンが金2つ。3つ取っているのは日本だけ。

もう十分立派な成績ですよ。みんな胸張って帰ってきて欲しい。お疲れ様でした。

今回の結果はコーチの責任が大きいのではないか

今回は、早めに代表を決める、同年の世界選手権には出ない、といった判断を下している。それが功を奏した、とは言いにくいんじゃないかと思ってる。

阿部一二三選手や永瀬貴規選手、角田選手の3選手は、1年前に代表に内定し、パリでもしっかりと結果を残した。それだけを見ると成功何だけど、一方で早めに決まった他の選手は期待した成績を残せなかった。

試合を観てて、ピーキングに失敗したんちゃうかな、って感じてた。負けたあとのインタビューで「この一年間苦しくて」とか言う選手の声を聞くと、早めに決めることが本当に良かったの?って感じた。

あと、別記事でも書いたけど、世界選手権には永山竜樹選手以外のオリンピック代表選手は出てないんだよね。間隔が詰まってるから、ってことなんだろうけど、でも結果的に世界選手権で好成績を収めた選手が、オリンピックでも好成績だったりしている。

2ヶ月あれば十分回復するし、試合勘という観点でもメリットは大きかったんじゃないかと思うんだよね。しかもその結果としてノーシードの選手が大半になってしまった。

もちろん、ノーシードだろうと強い選手は勝つんだけど、でもどんなに強い選手でも強豪ばかりとやってたら、疲弊するって。

シードを取ることで、最初のうちは強い選手と当たるのを避けられるし、場合によっては強い選手同士で潰し合ってくれるわけだし。

それも含めた、コーチ陣の戦略ミスだったと思う。だから、選手は悪くないよね。

やっぱり組手が大事

別に現時点でも日本柔道が悪いとは思ってないし、前述した通り金メダルの数は最多なんで、悲観するほどの内容でもない。

でも、敢えてより一層国際大会で成績を残せるようにするためには、ってことを考えると、やっぱり組手だと思う。

負けた試合の多くは、組み負けている。相手の得意なところを取られて、日本人選手は得意なところを持ててない。それじゃあ勝てない。

もちろん、古い柔道をやってきた人間からすると、外国人選手の持ち方には違和感があるし、言いたいこともある。でも、現在のルールはそれを良しとしてるんだから、「俺の知っている柔道とは違う」なんて主張したところで滑稽なだけ。JUDOと柔道は違う、みたいな言説も意味がないと思ってる。

だから、現在のルールに合わせて「どうやって自分がいいところを持つか」「どうやって相手にいいところを持たせないか」をもっともっと考えていったほうがいい。

ネットで「組手を持ったところから始めるようにルール改正したら?」みたいな極論を書いてる人もいたけど、組手争いも立派な柔道の一部です。日本人選手はそこで負けてたんだから、そこから目を逸らしちゃいけない。

あと組際に技を掛けるのももっともっと練習したほうがいい。負けた選手は「よし、いいところ持った。このままじっくり攻めるぞ」ってやってるうちに相手に不十分な体勢からでも技を掛けられてた。

それは自分たちが先にやらないと、って思う。

それも含めて、組手がすごく大事。個人的な感想として、ここ10年くらいで外国人の組手ってすごく変化してきてるんだけど、日本人選手の組手ってほとんど変わってない気がする。そりゃ勝てないわ、ってなるよ。

改めて組手をしっかりと考えることが最短距離だと思うんだけどなぁ。

誤審騒動はもう何十年も継続した話題

今回は誤審がだいぶ目立ったような感じだけど、でも誤審なんてもう何十年も前からあるからね。今回のオリンピックで初めて出てきた話題でもない。

大きな話題になったのは24年前のシドニー・オリンピックの篠原信一VSダヴィド・ドゥイエの100kg超級決勝。あ、ドゥイエもフランスだ。

これはもう完全に篠原さんの一本勝ちなんだけど、最後まで覆らなかった。このあとドゥイエ選手は「俺がチャンピオンだ。日本人はうるさい」みたいなことを言って、総スカン食らっとったけど。

まあ結果が全てだし、誤審で、ってのは記録として残らないからね。

昔からあるから誤審なんか気にするな、って話ではなく、まず、柔道には誤審は付き物だ、ってところを理解する必要があると思ってる。

そのうえで、誤審が発生したときにそれを検証し、どうやったら次は防げるか、ってのを考えていく必要がある。人間がやるんだから、そりゃミスもあるよね。ミスを責めても仕方ないので、次は同じミスを出さないようにする事が大事。

あと、現在のルールって、より一層主審の裁量が大きくなってる気がする。副審とかJuryとかいるはずだけど、全然目立たない。そういうのも今後は検証してまた変えていく必要があるよ。主審の裁量が大きければ、それだけ誤審が発生しやすい土壌だ、っていうことでもある。そういう点も変えていかなければいけないんじゃないかと。

青道着にしても、指導3つで反則負けにしても、ゴールデンスコアにしても、アラフィフの僕にしたら受け入れにくい内容なんだけど、現在のルールなんだから仕方ない。これまで柔道の母国であるってことに胡座をかいてロビー活動とかおざなりにして影響力を弱めてきた、全柔連の失態なんだから。それを少しでも取り戻し、IJFへの影響力を強めていくことが大事。

今回の誤審のことだけを論うのではなく、未来志向で考えていくべきだと思う。

でも、永山竜樹選手を一本負けにした主審、副審、Juryは、国際大会で審判やる力量はないと思うけどね。

ネットでの無責任な主張と当事者への攻撃は全く無意味

まず、当事者(選手とか主審とか)のSNSアカウントへの嫌がらせコメントはクソなので、やってるアホどもはとっとと止めるべき。てかさ、そんなくだらんことをやってる暇あったら、他のことに時間使ったら?って思う。

そんな事やって自分が気持ちよくなってても、自慰行為でしかないんだから。ほとんどの人は評価してくれないし、賛同してくれないって。

あと、「IJFから離脱して別の団体を立ち上げろ」みたいなことを言ってる人もいるけど、そんなことやったら柔道がどんどん衰退していくだけだって。そんなことも分からないのかな。

1億人ほどしか人口がいない国だけで柔道をやったところで、盛り上がるわけがないよね。ただでさえ柔道人口が減ってるのに。フランスの方が4倍くらい柔道人口いるのに。

結局はそういう裾野が広いところが強いんだよ。それなのに裾野を狭めることをやっていっても無意味なだけ。それこそ自慰行為でしかないよ。

そんなスポーツを誰がやろうと思うよ?誰もやらないよ?せめてそれで1億以上は稼げるようにならないと、誰もやるわけない。

プロ野球だってサッカーだって、稼げるのと世界に繋がってるのと、この2つがあるから盛り上がってる。柔道を国内で閉じたら、稼げない世界に繋がらないで、盛り上がるわけないんだから。

それとも、そんなことを主張している人たちが、柔道が盛り上がるように色々と手を尽くしてくれるの?

そんなわけないよね。無責任なことを言い散らかしてるだけなんだから。

当事者への匿名での攻撃も、無責任な意見も、どっちも無意味で無駄だからやめた方が良いし、相手する価値もないんじゃないかと。

あと、ルールが変わっていったことに対して文句をつけてる人もいたけど、残念ながら日本国内ですらルールは何度も変わってる。蟹挟が禁止されたり、元々は有効はなかったけど途中で作られて、現在はなくなったり。あと独自のルールでやっている高専柔道ってのもあるし。

ルールってのは時代によって変わるものだし、変わるのが当たり前。「昔はこうだった、昔がよかった」なんてのは老害への第一歩だからね。ルールが変わることを受け入れつつ、今のルールがおかしいのであれば変えていくための努力が必要。

柔道を盛り上げるには、稼げることが必要

色々と書いてきたけど、僕はやっぱり柔道が好きなので、柔道はこれからも未来永劫続いて欲しいし、発展し続けていって欲しい。そしてその中で、やっぱり日本人が活躍するところは見続けたいと思う。グローバル化する中で、人種や国籍にこだわる意味ってどんどんなくなってるんだけどね。でもやっぱりアラフィフのおっさんとしては、日本人てところや、オリンピックなどに特別なものを感じてしまうのよ。

そのためには、条件が3つあると思っている。

スターの存在、楽しそうな雰囲気、稼げること。

スターは、現在男女ともにいる状態なのが超ラッキー。言わずとしれた阿部兄妹。二人共実力があって、顔が良くて、スター性抜群。

どうしてもプロ野球選手やサッカー選手みたいに「スラッと」ってわけには行かないけど、ウルフ・アロン選手とかもスター性はあると思うんだよな。素根輝選手とかも。他にもオリンピック代表じゃないけど、小川雄勢選手、ベイカー茉秋選手。女子はそんなに見てなかったんだけど、玉置桃選手とか引退しちゃったけど渡名喜風南さんとか谷本歩実さんとか。あと、話題先行になってしまうけど、古賀稔彦さんのお子さん3人いらっしゃるから、その3人とかも。

そういうスター性のあるような選手が出てきて、盛り上げてくれるといいんじゃないかと思う。「あんなふうになりたい」ってのが大事だよね。

あと、オリンピックで金メダル取れなかったら「期待に応えられなくてごめんなさい」ってのもやめたほうが良いと思う。全然楽しそうに見えないし、オリンピック出ても負けたら謝らなあかん、みたいになると、子どもたちがやりたいと思うわけないよね。

国民全体として「お疲れ様」「立派だった」って言うことと、選手みんながもっと楽しそうな空気を作るってのが大事じゃないかと。団体戦も、もっとみんなで盛り上がってほしい。

そして最も大事なのは、金ですよ金。儲からないと意味がない。

阿部一二三選手がどれくらい稼いでるのかは知らないけど、企業所属だから、色々と搾取されてると思うんだよね。CMも個人の一存では出られないだろうし。仮に1000万円くらいの年収だとしたら、大谷翔平のホームラン1本に負けるくらいの金額なわけですよ。まあ流石に1000万円ってことはないと思うけど。

阿部一二三選手くらいだと、もうホンマに2億とか3億とか稼いでて欲しい。ウルフ選手や永瀬選手も。トップ選手はそれくらい稼いで欲しいし、それくらい魅力がないと、親としてもやらせにくいよ。

こういうのもやりがい搾取みたいになるんだろうな、って思う。やりがいだけじゃなくて、金銭的にも報われないと。

「柔道が大好き」って人がやってくれるのは大事なんだけど、裾野を広げるには「柔道が大好きなわけじゃないけど得意で稼げるからやってる」って人がたくさん出てこないと。

藤井聡太竜王が独占していた将棋のタイトルも、賞金が1000万とかあるわけ。柔道でもグランドスラムは1000万、オリンピックは3000万とか、それくらい夢があって欲しい。

今すぐには難しいけど、でもそういう方向に持っていかないと、競技人口は減る一方じゃないかなぁ。

僕もそういうところに少しでもなにかできれば、とは思うのだけど、あんまりできてないな。。。

それでも柔道は面白い

僕はそれでもやっぱり柔道は面白いと思うし、僕にとっては全てのスポーツの中で一番面白いと思っている。

そんな柔道がどんどん広がっていく、街の道場が潰れるようなことがない、そんな環境ができあがるといいなぁ、と思ってる。

正直なかなか難しいんだけどね。でも難しいってことと不可能ってことはイコールじゃないからね。

僕も微力ながら少しでも支援できればなぁ、と思ってる。

色々書いてたら、アホほど長くなったわ。

#スポーツ観戦記

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