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サンデル教授の新刊本 The Tyranny of Merit

「正義」の話しをしよう、で知られるマイケル・サンデル教授の新刊本がキンドルでダウンロードできるようになりました。「The Tyranny of Merit」。

いずれ翻訳本が出版されるでしょうが、2020年10月21日の日経新聞朝刊で上級解説委員の小竹氏が「これから学歴の話しをしよう "知の差別”が招く分断、という記事で本を紹介しています。

本の内容は概ね記事のとおりです。小竹氏は邦題として「エリートの専制」としていますが、「学歴・実績主義の呪縛」あるいは「アメリカンドリームの呪縛」「アメリカンドリームの幻想」というような内容だと思います。

教授は言います。「アメリカは、これまで長い期間、収入や富の不平等に寛容だった。頑張れば誰でも成功を得られるというアメリカンドリームがあった」と。さらに、「共和党も民主党も、このレトリックを使って選挙戦を戦ってきた」

ただ、実際には教育機会の格差があり、ハーバード大学の学生3分の2は、所得分布の上位5%の家庭の出身です。

しかし、民主党のオバマ大統領は「教育の機会が与えられたこそ、今、自分は大統領になっている。誰でも一生懸命勉強すれば機会が訪れる」とスピーチし、サンデル教授はこれを「meritのレトリック」と説きます。

2016年の大統領選挙で、ヒラリー候補も同様のことを有権者にアピールしています。

アメリカ人の57%は、「人生における成功は、自分ではコントロールできない力によって決まる」ということに同意していません。これが欧州を含む多くの国の人は、「成功は自分ではコントロールできない力による」と思っています。

アメリカ人は、努力すれば成功できるというアメリカンドリームの呪縛に囚われている、それを民主党も煽ってきた、と言いたいのでしょう。

サンデル教授は、これについての解決策を具体的に示してはいません。大統領選挙直前に出版されたことを考えると、トランプ政権がアメリカを分断したと言われていますが、民主党政権も同じだと、と言いたかったのではないでしょうか。

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