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MTGの勝ち方

▷先攻ゲーの正体

 定期的に先手有利をなんとかしろとか、先攻を取れなかったせいで勝てなかったというような話を見る。

 確かに基本的に先攻は有利だ。だがそこまで先攻が有利ではない。まるで60%超の有利のように言われるが、あって55%だろうと感じている。(もちろん環境やフォーマットにより変動はあるが。)

 なぜ先攻の有利さが過大に解釈されるかについて、

①心理学的要因
②先攻向きのプレイが得意なプレイヤーが多いから

の二つが二大要因であると考えている。

 まず①の心理学的要因について。いいことより悪いことのが印象に残るという特徴を人の脳は持っている。なので後攻で先手ブンされた印象がブーストされて記憶に残るというもの。

 そして二つ目が、プレイヤーの性質によるもの。

 先攻が得意なプレイヤーが多い。逆に言えば後攻の勝ち方をわかっているプレイヤーが少ない。先攻の勝ち方しか知らないのだから、後攻の良さなど語られる由もなく。

 そんなことを思ったので、「後攻の勝ち方」から一般化して「MTGの勝ち方」というトピックで書いてみたい。

▷攻める側と受ける側

 極端な例として、あなたはコントロール、相手はバーンを使っているとしよう。サイド後「よし!圧倒的アドバンテージ差で勝ってやる!ドロソを増やすぞ!」とはならないだろう。

 ここには、短いレンジを見るバーンと長いレンジを見るコントロールの対立がある。基本的にコントロール側の方がカード一枚がゲームに及ぼす影響は大きい。そこで、アグロ側はコントロールが重いカードを使い切れないように早いレンジでゲームを終わらせようよする。コントロール側は自分の得意な土俵に立てるようにゲームを長引かせようとする。

 この例がわからないという人はいないだろう。だが得意なレンジが近づくと途端にわからない人が増える。

▷先攻と後攻

 その最たるものが同じデッキの場合である。例えば今なら黒単ミッドレンジミラーは多く発生するはず。
 
 ここで攻める側はもちろん先攻である。先攻なら1T早く行動することができる。先攻の利が最大限に発揮されるのはマナを使い切っているとき。2Tに2マナ、3Tに3マナ、4Tに4マナのカードと綺麗に展開すれば先に動いた利を活かしてそのままゲームエンドまで行ける。

 当たり前だが、後攻で「マナを綺麗に使い切る」を目標にプレイすると負ける。相手の方が速いのだから当たり前である。相手が3のアクションを出した返しに同じ3を出し、次の相手のターンにもっと強い4を出され…。先攻の理想の動きを後攻で追ったところで、相手が事故らなければ勝てる理由はない。

 「後攻で相手と同じ動きをしたら負ける」なんていうことは考えてみれば当たり前である。だが、「バーンにドロソを減らして除去を入れる」というほど常識としては認識されていない。後攻で先攻の動きを模倣する人としては、後攻だからせめていい展開をしなくてはならないということなのだろう。

 後攻が全てにおいて先攻に対して不利ならば確かにその通りであるが、そうではない。先攻は"Play First"で後攻は"Draw First"だ。ちゃんと手札が1枚多い利を活かしているか。

 後攻の神髄はカードの交換だ。先攻が3Tのカードを先に出すなら、2マナでカウンターや除去と交換すればいいだろう。4マナ5マナのカードと2マナのカードを交換すれば得だろう。

 こうすることで、先攻の先にマナを使える利を潰しながら交換をしていくのが後攻の勝ち方だ。

 でもそれって有利な先攻に交換させられているのであって、やっぱり後攻に利があるというわけではないのでは?それは違う。

▷差と比

 カードを交換することは後攻を有利にしている。はじめに1枚先に引くことでできた手札差のアドバンテージの重みを増やしているからだ。相手の手札が6枚に対して7枚の手札があることはそこまで大きな有利ではない。だが相手の手札が0であるのに対して1枚の手札があることは大きな有利だ。カード枚数のアドバンテージで勝っているプレイヤーはカードを交換することでリソース勝負での優位を確固たるものにできる。

▷目指すべき実質勝ち

 言ってみれば当たり前のことしか言っていないように感じるが、なぜこれに気付かない人が多いのか?端的に言えば目標がはっきりしていないから。ありふれた言い方をすればプレイに一貫性がないからだろう。

 先攻だとカードをなんとなくマナカーブ通りに出していればそのまま押し切って勝てることが多いのでそのわかりやすい成功体験をひきずる。後攻なのにのこのこと相手の有利な土俵に上がっていく。そして「先攻が取れなかったから負ける」のではないか。

 既に相手に利があるところで勝負して負けるのは当然。どこで勝っていてどこで負けているのか?

 バーンVSコントロールの例に戻ってみたい。バーンがサイド後にドロソを大量にサイドから入れてアドバンテージ勝負をすることはない。手札をダメージに変える火力を入れているデッキがリソース勝負で勝てるわけがないからだ。だがPWやエンチャントを入れて軸をずらすことはある。相手に効率的に妨害されないためである。だが結局目指している"実質勝ち"や避けようとしている"実質負け"の状況は変わっていない。

 例えばバーン側が相手のライフを残り2まで削れば、相手がすぐにライフゲインを用意できなければ実質勝ちだろう。コントロール側がゲインを引くよりバーン側が2を削る方が大抵速い。逆にバーン側のカードがなくなった段階でコントロール側のライフが10以上あればリソースとカードの質に優れたコントロール側の実質勝ち。

 先攻後攻でも同じである。後攻は交換を繰り返して、最後に一枚勝たせてくれるカードが残れば実質勝ちとまではいかずとも大きく有利。

 なんとなく出せるカードを出していないか?大きく負けないだけのプレイをして勝つためのプレイをする機会を逃していないか?

 ぼんやりと相手のライフを0にするという最終的な目標へ進むのではなく、どういう過程でそこに至るのかを意識するべきだ。その意識がないのに一貫性など持てるはずもない。リソースで勝つのか、ライフを削りきるのか、テンポで押し切るのか。

▷包括的な視点

 デッキ作成、チューニング、サイドボーディングにプレイング。階層的な勝ち負けへのプロセスをなぜか分離したがる人がいる。しかし真に一貫性のあるプレイをするためにはデッキを選ぶ段階で最終的な実質勝ち盤面を想定できているべきだ。

 一つのカードを出すか構えるかの判断ミスであったり、サイドボーディングがわからないということはそれそのものは本質的な問題ではない。どんな相手にどう勝つかという包括的な視点が持てていないという大きな問題に包含されている。

 どうすれば負けないかではなくどう勝つかを考えよ。勝てるとしたらどんな盤面を経由するのか?その障壁となる相手のカードは何か?どうすればそれを突破できるか?

 実は前回の記事は同じ話をデッキ構築について書いたものである。

 デッキ構築の相談を受けると、リソース力で秀でたTier1に対して真っ向からリソース勝負を挑もうとして勝てないというようなことがよくある。そりゃあそうだ、その要素で強くてTier1になっている相手に真っ向から挑んで勝てるわけがないだろう。

 勝つためのプレイで不利なりに相手の土俵で戦うなんてことはありえない。何かしらの有利な要素や相手の脆い要素を見つけてそれを押し通すのだ。

おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう