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「マキャベリズム」合理的に行動していくべきという思想

「ダーク・トライアド(暗い3角形)」ナルシシズム(自己愛性)、マキャベリズム、サイコパスについての第2弾「マキャベリズム」についてです。
さあ、いってみましょう!

マキャベリズムとは、イタリア・ルネサンス期に生きた「マキャベリ」という政治思想家が「君主論」で説いた思想のことです。
多くの人に知られているマキャベリズムの考え方は、その合理的な思想から「目的のためには手段を選ばない」とか「結果を出せるならどんなに残虐なことをしても良い」という意図があるようにイメージされています。
しかしそのイメージは、マキャベリが説いた思想の一部をくり抜いて広まったことが背景にあり、実際の意図とは違う「合理的に行動する」ための思想が説かれていることを知らない人は多いです。

▼ この記事でわかること
・ マキャベリズムの意味とは
・ なぜ合理的であることが重要なのか?
・ 君主論が現代に与える影響とは

マキャベリズムは近代的な政治思想の始祖であると言われています。
この記事では、マキャベリズムの意味や特徴、近代的政治思想への影響について詳しくご紹介します。

マキャベリズムとは?合理的に行動していくべきという思想

マキャベリの思想は客観的であり合理的であるため、とても現実的です。当時はキリスト教や政治、倫理に重きをおく考え方が主流であった西洋では、在命中に評価されることはありませんでした。
非道徳的であろうと目的達成のためなら手段を選ばないという思想はマキャベリの書いた「君主論」をもとに批判され、「マキャベリズム」と呼ばれるようになりました。
しかし実際にこれはマキャベリの思想を正確にとらえて批判されているのではなく、書かれた内容の一部をくり抜いて批判されているのです。
マキャベリが本来説いていたのは、場合によっては少数の残酷な処罰をすることで合理的な判断を下すことは必要な場合があり、慈悲深さの非合理的な側面には問題があるとしました。
君主論の中で、理想の君主論について書かれた第17章の一部をご紹介します。

“君主は、自分の臣民を結束させ忠誠をつくさせるためには、残酷だという汚名を気にかけてはならない。なぜなら、あまりにも慈悲深いために殺戮と略奪を生み出すような混乱状態を放置する者たちよりも、ごくわずかな残酷な処罰を下すだけで、ずっと慈悲深い者となるだろうから。”

「目的のためには手段を選ばない」というのが間違っているわけではありませんが、ここで説いているのは「残虐なことをしろ」というわけではなく、「目的達成のためには合理的になる必要があり、犠牲が出ることも必要である」ということなのです。冷酷で残酷な無慈悲的な君主を良いとしているわけではありません。

キーワードは「合理的」!リーダーに必要な資質とは?

「君主論」でも述べられている、マキャベリが考えるリーダー(権力者)の資質は3ポイントに分けられます。
キーワードになるのは、「合理的」な行動です。

1. 道徳や倫理よりも合理性
「君主論」では「合理性>道徳や倫理」であることが述べられています。
リーダーになるためには、ときに道徳や倫理に逆らったり、捨てたりするだけの強いメンタルが必要であると言われています。

2. 恐れられること
サイコパス的な狂人思考を持つことを意味するのではなく、みんなに好かれてとっつきやすい人間性よりも「超えてはいけない一線があり、恐れられている」人間性を意味します。
恐怖政治をすることを意味しているわけではありません。
リーダーとはつまり、集団を引き連れる役を担います。
確かに人に好かれてとっつきやすいリーダーも良いですが、集団を動かして統率するのであれば、恐がられているリーダーの方がうまく指揮をとり、指示を浸透させることができるのです。

3. 孤独であること
集団でいるということは、意見が割れることがあります。その中でリーダーは集団の方針を決める必要があります。
人と意見を交わして取り入れることも重要ですが、最後の決定権はリーダーにあります。
そして、最前の判断を下すために、リーダーは誰かの存在に依存してはいけないのです。なぜなら、依存をすることによって意見が偏ったり、信ぴょう性にかけたり、不満が湧いたりする可能性が高くなることが理由としてあげられます。そして何より、他の誰かの意見に依存してしまっては、リーダーである必要がなくなってしまいます。
だからこそリーダーは、孤独である必要が出てくるのです。
リーダーとして成功を収めたい人は、マキャベリズムの3ポイントを押さえておくことが重要と言うことです。

なぜ合理的であることが必要なのか?自己利益が大切な人間観

上記では合理的であることが権力者にとって大切であることをお伝えしました。
そしてその背景は、マキャベリが「君主論」の中で解説しています。

“そもそも人間は恩知らずで、むら気で、偽善者で、厚かましい。人間は恐れている者より愛する者を容赦なく傷つけるのである。単に恩義の絆でつながれている愛情などは、自分の利害が絡めば、すぐにでも断ち切ってしまうからである。“

概要すると、「君主や官僚も結局みんな自己利益を追求するように行動をする」という人間的な面を指摘していると言えます。
「人間は愛されるよりも恐れられる方がはるかに安全である」と言う内容は、上記で説明した「リーダーにとって大切なのは恐れられることである」と関わり合っていると考えられます。
当時、君主の生き方は「人間的な欲望に流される」ことは悪であると言われていました。道徳や倫理を重きに置く考え方がされていたのです。
しかしマキャベリはそんな世の中を見て、「実際は自己利益を追求しているではないか」と現実をありのままに見ていたのです。
君主も名誉や権力などの自己利益のために行動することを悟っているからこそ、徹底的に合理的な手段を選ばないのであれば権力者として生き抜くことはできないのである、と考えたのです。だからこそマキャベリの思想は、「現実的思想」であると言えるでしょう。

人間は元々邪悪な存在だという考えはよく、「人間性悪説」と呼ばれます。古代中国の筍子が「性悪説」を説いたのは有名です。これに対して「性善説」を説いたのが孟子です。

マキャベリにとって課題とは?イタリアの時代背景

イタリアの時代背景から、マキャベリにとっての課題とは「イタリアを安定させること」であったことがわかります。
当時のイタリアは、激しい権力政治の舞台となっていた背景があります。
そしてマキャベリは都市共和国であるイタリア・フィレンツェで外交や軍事担当の書記として政治に深く関わっていました。
マキャベリ自身も、メディチ家による支配からの没落、共和制の再建やメディチ家の復権などといった荒波の中を生きています。
このような時代の外交や軍事に携わっている立場だったため、今までの政治思想とは違う「現実主義的」な思想としてマキャベリズムが生まれたと言えます。

マキャベリズムが現代に与える影響とは?

目的のために手段を選ばない合理的な思想であるマキャベリズムは、その後の政治思想におけるリアリズム(現実主義)の源となります。
こうして政治学に科学的な見解を導入することにより、共和主義思想を近代的なものへと変化させることで、その後の時代にも残したのです。
マキャベリは、生き抜くために権力者が持つべきものとして、人間固有の「法律」と野獣に固有する「力」両方を兼ね備える必要があると言います。国家は法のみに縛られるのではなく、権力者自体が状況に対応するための力を持つ必要性についても述べています。
このようなマキャベリズム的思考は、現代の政治家やビジネスマンにも根強く広まっています。
「君主論」は現代人が読んでも学びが多い本となっています。

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