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「障がい者就労移行支援におけるSST(ソーシャルスキル・トレーニング)の現状と課題」

今回は私も研修や就労移行支援で実施しているSST(こちらはソーシャルスキル・トレーニング)について簡単ではありますが、出来るだけ誤解を生まないように書いていきます。


就労移行支援とは、「障がい者総合支援法」によって定められた障害福祉サービスのことです。
障がいを持つ人は原則として、就労移行支援を行なっている「就労移行支援事業所」の利用開始から就職が決まるまで最長で24ヶ月の間、働くために必要な知識や能力を高めるためのサポートを受けることができます。


就労移行支援では、障がい者の人たちがその特徴により「社会で生活しにくい」と感じる部分をカバーする方法として、「SST(ソーシャルスキル・トレーニング)」を実施しています。

▼ この記事でわかること
・ SSTの詳しい内容
・ 就労移行支援とは
・ SSTを受けることによる効果
・ 今後のSSTの展望

この記事では、就労移行支援におけるSSTの現状と課題に加え、就労移行支援における問題点や今後の課題ついて、詳しくご紹介していきます。


認知行動療法とは

認知とは、「ものの受け取り方」のことを指します。人は、ストレスを感じると考え方が悲観的に走る傾向があります。そして、強いストレスを受け続けることによって、考え方に歪みが生じます。認知行動療法では、こうした考え方を明るく健康的なものにし、バランス良くすることを目指します。


✔具体的な認知行動療法の例

人は、気持ちが大きく動揺したときや、悲しいことが起きて辛い気持ちになったとき、「自動思考」が頭に浮かんできます。認知行動療法では、その考え方が現実とどれくらい食い違っているのかを認識することで、思考のバランスをとっていきます。

基本的な例をご紹介します。


1. 患者を一人の人間として理解を深める


2. その人の悩みや問題点だけでなく、長所や強みまで引き出すように力を合わせて面接を続ける



3. 行動的技法として生活のリズムを考える。具体的には、優先的に行う必要のある行動や、楽しめる活動、やりがいのある活動、日常的に行う決まった活動などに優先順位をつけて行動に移す「行動活動化」という方法をとります。


4. 一定の身体活動や運動を用いて自身を取り戻し、コントロールができるようにします。


5. 自動思考に対しては、書籍やウェブを使ってその根拠や反証を確認することによって、認知の偏りを修正する方法もあります。

このとき、「他の人と関わる」という体験をすることで症状に対応するという方法が効果的であることがあります。
これに特化したのが、「SST」であると言えます。

SSTとは

SSTは「ソーシャルスキル・トレーニング」を略したものであり、日本語では「社会生活技能訓練」と呼ばれています。認知行動療法の1つとして活用されています。
障がい者である人は「自分の考えや気持ちを伝えるのが難しい」「自分の要求を言葉にして伝えるのが難しい」「相手にどのように言葉を伝えるべきかわからない」などの特徴を持つため、ストレスを抱えてしまうことが多いです。
このような特徴が、社会に出て仕事をする上で課題になっていきます。
だからこそ、SSTを活用することで、障がい者である人にとって生活をしやすい状況にすることが必要です。


SSTに期待できる効果

SSTをすることによって、「相手の意見を尊重しながら自分自身の意見や想いを伝えることができるようになる」という形になることを目指しています。
障がい者の人たちは、SSTをすることなく社会に出て働こうとした場合、対人関係、コミュニケーションに悩んでしまうことがとても多いです。
仕事の進め方がわからないことや、業務についてしっかりと理解ができないことが問題に上がるケースも多いです。
このようにストレスを溜めることにより、仕事が続かないのは問題です。
SSTを受けることにより、社会でもじゅうぶんに生活していくことができるだけのコミュニケーション能力を身につけることができるのです。

それではもう少し具体的に、就労移行支援にてどのようなSSTが行われているのか、実態について説明します。


就労移行支援でのSSTの実態

就労移行支援として、SSTは様々な集まりの中で、それぞれの方法で進められています。
地域ごとにそれぞれの就労移行支援を行なっている事業所があります。
事業所で行なわれている取り組みのほとんどは、テキストブックなどを利用して行う座学ではなく、「ワークショップ」として事業所で働く職員と一緒に進めるスタイルです。
主な内容は、「質問の仕方を学ぶ」「依頼の仕方を学ぶ」「質問されたときの回答の仕方」「断り方を学ぶ」などがあります。
実際の職場でどのような場面が起こる可能性があるのかを仮定して、演技をします。
そこで、その課題にどのように対応するのかを考えて、実際に演技(ロールプレイ)をしてみます。
他にも、ゲームを通して体を使って意思を表現する練習をする方法もあります。
これを通して、日々のコミュニケーションの基礎となるものを学んでいくのです。


✔SSTとしてのテーマの例

SSTには様々な方法がありますが、例として1つのテーマをご紹介します。
障がい者の人は、「頭の中にあることを表現して伝えることが難しい」という特徴や、「人の話を聞いて意味を理解するのが難しい」という特徴があることが多いです。
これは社会に出たとき、上司や同僚、取引先との関わり方に大きく関わっていきます。
「うまく伝わらない」ことや、「相手の意図がうまく理解できない」というストレスを抱えることがないように、「伝達をするゲーム」がかなり効果的です。

ゲームの方法は簡単です。
シンプルな図画を見せて、それを言葉だけで相手に伝えます。
相手は、しっかりと話を聞いて、それを絵にします。
例えば、木と犬、太陽のあるシンプルな絵を見た一人が、もう一人に言葉だけでその絵の情報を伝えます。
情報をよく聞いた相手は、その通りに絵を描いてみるというテーマです。
とてもシンプルですが、この方法により「伝えたいことを言葉にして的確に伝える」力や、「相手の話をしっかりと聞いて理解する」力を養うことができます。


就労移行支援の抱えている問題や課題など

就労移行支援が抱えている問題として、おおきく分けて4つあると言えます。

1. 求人はハローワークや人材紹介会社を利用する必要がある


2. 通っている期間中は就業準備に専念する必要があるため、アルバイトであっても就労することは許されない


3. 就労移行支援事務所の利用料金が発生する場合がある


4. 用意されているプログラムや就職支援メニューのほとんどが、障がい者雇用枠での就職を希望する人向けであるため、一般枠での就職を希望する場合に就活支援メニューやプログラムが希望に沿えない可能性がある


就労移行支援はあくまで就労をすることができるように準備をするサポートをしているので、求人そのものを手伝ってもらえるわけではありません。
これは、障がい者にとっては最後に一歩劣らない課題と言えるでしょう。


ただし、就労移行支援事業所によっては独自のネットワークを持っているため、企業実習や企業との雑談会、企業見学などの機会を得ることができる場合もあります。
これを通して就職につながるケースは多いため、ぜひ生かして生活をして欲しいと思います。


今後の展望や取り組み方など

SSTにおける課題は、「一人ひとりの声を大切にしながら理解をする」ことであると言えます。
取り組みの目標は、障がい者である人たちが「集団に参加」をして、「1つのことに向けて一生懸命に取り組めるようになる」ことです。
この目標を達成するためにSSTで力を入れるべきなのは、「利用者の障害や病識への理解」です。
利用者の中には、その特性から「集団行動は嫌い」な人や「集団に参加したくない」という気持ちが強い人もいます。
そういう人たちは、「今日はSSTに参加したくない」と意思表示をする日も出てくるのです。
このような場合にも、「自分の意見を伝えた」ということ自体を評価しつつ、グループワークの大切さを理解してもらえるように働きかける必要があります。
また、時間をかけながら問題解決スキルを育む努力が大切であることも理解してもらうことが重要です。


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