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「お前の欠点は一重」と父が言った時アイプチで父のまぶた引っ付けてやればよかったな

「お前は、頭もいいし、聞き分けも性格もいい。だが目が一重、それが唯一の欠点だな」

と父が夕食時に漏らした。私が中学3年の時だったと思う。なんだか血が冷えたのを覚えている。

今となっては「オカンに似たんじゃボケぇ」と返せるが、当時の思春期の柔らかな心は父の心によって重石がのったようにズシンとした。漬物石くらい重かった。漬物石持ったことないけど。

姉がとても愛嬌があって可愛らしいクリクリの目をしていたのでずっとコンプレックスだった。子供の頃の私はパラメーターで言えば「かしこさ」に全振りした状態で、顔は平々凡々のボンだった。

中学3年にもなると残酷なスクールカーストの中で生きていたので、外だけじゃなく家でも顔の評価をされているということが非常にショックだったのだ。

高校は誰も知り合いのいないところに行って、毎日アイプチをしていた。めちゃくちゃ遠い高校だったので5時半に起きて目を二重にして行った。

自意識がマウントフジだったので、なぜかアイプチをしていることを友達にも隠していた。

ほっそいテープで二重を作るメザイクに変えたら、ずさんな性格のせいで肘とか袖とか色々なところにあの黒いテープだかゴムだかがひっつきまくっていて、「まくらちゃんなんかついてるよ!これなあに〜?」と聞かれまくっていた。

その度に「あ〜!両面テープ♡」と謎のごまかしをした。さっきパラメーターを「かしこさ」に全振りしたと言ったな。あれは嘘だ。

生卵くらい柔らかな思春期の心はちょっとした刺激ですぐにどろりと潰れる。

大人になれば心は、投げかけられる言葉に慣れて、つまめる生卵になったり、目玉焼き(半熟)、卵焼き(完熟)、はたまた茶碗蒸しくらいになるけれど、思春期の心は殻を割って出てきたばかり。(慣れるというのは、傷つかなくなるという意味では決してない)


父が何の気なしに言った言葉で、生卵はぐっちゃりと潰れてしまってダメだった。おかげで、狂ったように二重に憧れ続けた思春期となった。

一重まぶたは、脱毛の記事を昨日書いてふと思い出したコンプレックス。気にし始めたのにはハッキリと理由があったんだな。忘れていた。いいや、忘れてはいなかったのだが、二重まぶたに憧れるのは世間的に当たり前だと思い込もうとした。

ああ、思い出すと、むかっ腹が立つ。家でまで顔面評価されたくなかったわー。そのせいで私、24時間メザイクしてたかんね。父はのんきに「おっ、お前美人になったんじゃないのか〜?」って言ってたけど、フザケンナ、メザイク代(1ヶ月1200円*n年間分)返せや。

25歳を過ぎたくらいからやっと、「あぁ私今傷つきましたあ!!!」と言えるようになった。今だったら、聞き分けも性格も全然良くなくなったので「なんつったあ!?」ってドロップキックくらいはできると思う。いま、頭の中の思春期まくらは父に反撃する。

「はー!今私傷つきましたあ!!私のお目目は世界で一番可愛いのに欠点なんてお前の目がおかしい、お前の目が世界で一番欠点!!よく見れるようにしてあげましょうかあ!?(アイプチで父のまぶたをかっぴらいた状態にしながら)」

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