サボテンを育てている

2年くらい前から育てている。
金晃丸という種類だそうで、買った時から、ポケモンのダグトリオみたいに3つの頭を土から覗かせている愉快な姿のサボテンだ。
私は昔から園芸に興味があって、しかし生き物の世話をしたり面倒を見たりするのはそんなにうまくなく、金晃丸を育てている2年弱の間にローズマリーの苗を鉢に植え付けてみたりもしたが、数ヶ月で枯らしている。そんな中でもサボテンは静かに、そしてめきめきと成長を続けてくれた。先日その金晃丸を新しい鉢に植え替えた。

1週間ほど前から鉢を乾かし(鉢から苗を抜きやすくするため)、また向こう1週間で雨の降らなさそうな日を選んで(植え替え直後の水やりは厳禁らしい)、植え替えを行う。この金晃丸を買ったのは2022年の秋か冬で、2023年の春に一度植え替えを行っている。花屋で買った時のプラスチック製の鉢のままだと窮屈そうだったのと、サボテンの鉢は水はけの良い素焼きの鉢がおすすめという情報を得ていたからだ。その時は不慣れながらもそこまで苦労しなかったように思うが、今回はとっても苦戦した。素焼きの鉢ですくすくと育ったサボテンは根詰まりを起こしていて、鉢の底で絡まったり、土の中で上を向いて育ち始めていたり、知恵の輪みたいにこんがらがったりしていた。鉢底に敷いたプラスチックのネットに根が絡んでしまっていたのも大きかった。鉢の底に空いた穴からプラスチックの部分をぐっと押してみたり、鉢の中の土や小石を根気強くつまようじで取り除き、詰まった根をほぐしたりすることで、なんとかネットごと苗を取り出すことができた。根が絡みついてしまったネットはカッターナイフで切って根から取り除くつもりが、根ごとスパッと切ってしまったためちょっと心配だ。そこはサボテンの生命力を信じることにして、新しいネットと小石を敷いた大きめの鉢に、根をほぐしたサボテンを植え付ける。大きすぎるような気もする鉢の真ん中に据え、粒の細かいやわらかなサボテン用の土を流し込みながら、金晃丸が新しい土に根付くことを想像してみる。すべてが終わる頃には砂にまみれて黒くすすけた感じになってしまった金晃丸も、雨に降られればいつものあざやかな緑の肌と金色の刺を見せてくれることだろう。
あとは、この夏に買ったものの早くも根腐れを始めていた新しいサボテン、おそらく近衛という品種をカッターナイフでスパッと切った。これはアルミホイルを敷いた受け皿に置いて切り口を乾かすことにする。胴切りというやり方で、うまくいけばこの切断面から根が生えて、あたらしく育て直すことができるらしい。切断面の見た目はきゅうりの輪切りをした時のようで、カッターナイフにも透明な水滴がつくほど瑞々しいが、これをしっかりと乾かすことがミソなんだとか。高温多湿な気候が続いているので乾燥する前に腐ってしまわないかが心配だが、ネットで調べたところ根が腐っているのであればなるべく早めに胴切りをした方がいいとのことだ。もしうまくいかなかったら新しいサボテンを買おう。

サボテンは強くて、ほとんどほったらかしでも育つし、ほったらかしにしすぎたなと気まぐれで水をやれば、季節によってはめきめきと成長してくれる。私は夏が大の苦手なのだが、サボテンも同じらしく、暑すぎると成長が止まるらしい。だから私が外に出たくないくらい暑いときは水やりをサボり、最近過ごしやすいなと思うときはたっぷり水をやると、サボテンも同じような体感なのか、上手に育ってくれる。胴がへこんだ時を見計らって水をやれば、次の日にはふっくらしているのがなんとなく愛しい。それに、ゆっくりと体を膨らませながら上へと伸びていくのもかわいい。頭のあたりで集まっている刺が閉じていることも開いていることもあり、その法則性がわからない私からすると気まぐれで姿を変えているように見えておしゃれだと思う。
鉢の中で複雑に絡み合っていた白い根っこも美しかった。古くなった根は黒くなるそうなのだが、小さなサボテンの根は伸び盛りなのか、土の中でもその末端まで仄かに白くてきれいだった。園芸には興味があるくせに虫だとかナメクジとかが苦手な私は根本的に土いじりというものが苦手なのだが、自分で育てたサボテンの鉢の中身は嫌悪感なく触ることができる。

今までいろんな植物を枯らしてきたが、2年育ててきたこの金晃丸を枯らしてしまったらかなしいだろうと思う。新しい土に馴染んで、また私に育てさせてもらえたら嬉しい。

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