原田を追いかけて

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<タイトル>
旅屋おかえり
<著者>
原田マハ

<出会いのきっかけは原田>
高校の国語の授業で「東京トホホ本舗」に出会って以来、原田宗典のファンになった。彼のエッセイは何かの漫画で読んだ通り「恥を切り売りする」内容であった。これを書いているのは本当に大人なんだろうか、とさえ思ったくらいである。著者紹介欄を見れば、大学の文学部を卒業し、書いた本は賞をもらって、という作家先生らしい紹介文と共に、ちょっとアンニュイな感じの写真が掲載されている。エッセイの中には平均よりも高い身長に関する描写まである。「うーむ、これはどうやらお偉い作家先生が書いたもので間違いないらしい。」と一人納得し、エッセイの内容を思い出してはふふ、と笑いが蘇ってくるのである。そして「こんな大人でも人生生きていけるのだなぁ」と、将来の不安から解き放たれていたのだ(後に笑えるネタを経験するオイシさと、それを形にして世に送り出すことの難しさを知るのだが、それはもう15年後の話)。

ある日、物語のアイディアが降りてきた。これは最近の話だ。というか、3週間くらい前の話だ。高校時代に「作文がいやに褒められた」という安易な動機で物書きへの憧れをうっすら抱いていたこともあり、今でも超が5つも6つも付くくらいの希望的観測で、物書きになるチャンスを狙っている身としては、アイディアが降りてきたことが嬉しかった。「あれ、このネタいけるのでは?」と割と本気で考えた。そのネタとは、「行きたくもない旅行に代わりに行く代行業」であった。
「いじめられっ子の代わりに行く修学旅行」「新卒社会人の代わりに行く社員旅行」「義理の両親との旅行の代行を引き受けるのだがそれには理由が…なんて感動枠も」とアイディアは広がっていく。と、この辺りで念の為に同じ予想外にすぐに発見してしまい、とても悲しかった。その作品が今回紹介する「旅屋おかえり」である。
原田マハが原田宗典の妹である、と知ったのはその時だ。既に彼女は有名作家だったので、むしろ何故今まで知らなかったのか、という方が不思議ではある。妻の本棚は「本日はお日柄もよく」が置かれていたし、もっと早く知っていてもよかっただろうに。

<作品について>
結論から言えば、自分の拙い妄想劇が綴られる前に、この作品が世に出てくれていたことに素直に感謝したい。また、同時に「フーテンのマハ」というエッセイを読んでいたこともあり、旅のプロと言って差し支えないであろう彼女がこのテーマで作品を綴ったのは必然だったと思う。主人公の「旅」への思いがとても美しく描かれている。旅への拘りとか、ノウハウとかそういうことではなく、「旅とは?」という問いかけに対し自分の思いの本質が言語化されている。数多くある旅先の美しい風景の描写よりも、この主人公の透き通った旅への思いの美しさに心を打たれた。

これは余談だが、「フーテンのマハ」には、なんとなく原田宗典テイストが感じられた。特に随所に出てくる感嘆詞の使われ方に…。もし2冊とも読まれる場合は、「旅屋おかえり」から読まれることをオススメする。


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