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うぞむぞげんきね、おおむかで【Sandwiches #54】

 「短い日」です。もはや日記のごとくゆるやかに、どんどこうすぺらくなっていく予感のただなかにおりますよう。なんてたって今日はね、「部屋にでっかいムカデがでたの!!」とそれだけ書いて終えようとしとるもんでね……や、ほんとうに出てしまったのです。でっかいやつ。

 わたしの部屋では、毎年梅雨の時期になるとちいさなちいさなムカデの赤ちゃんが水回りに出没します。それはほんとうに糸くずのようなほそい体をしていて、最初こそびっくりしたがまあ慣れれば気にならない。黒光りするGについては考えるだけで怖気が走るほど苦手やけど、ムカデといえば福岡の実家ではおなじみの存在やったから、やあ! 懐かしいねえと流す余裕もあったわけです。ただ、そりゃあくまで赤子の話やった。

 ついおとついの、深夜2時前後だったでしょうか。のどの渇きからふと起き出したわたしは、水を飲むべく電気スタンドのスイッチを入れました。と、コンタクトをはずした曖昧な視界のなか、部屋を横切るなにやら黒い帯がある。最初はただの見間違いか、髪の毛ほこりか、と思ったのだけど、違う。なにやら生き物のようです。あわててメガネをかけてみると、うねりうねりと進むそれの正体はゆうに15cmはあろうか、赤黒い体表を備えた立派な大人のムカデそのものでした。

 おそろしさのあまりわたし、そのまま凍り付いてしまった。でっかいムカデもね、実家におるにはおったけれど、しかし東京のワンルームで出くわすとその恐怖感は桁違いなのね。上京から8年目にしてはじめて、身をもって体感しました。むかし父親が大きなムカデに噛まれたことがあって、ぎやあ、本当に痛そうだったことを覚えている。ぜったいに噛まれちゃならん、ならん、その一心で後退し、結局は堂々したその肢体が洋服ダンスの裏に消えていくのを見送ることしかできませんでした。 

 その夜はもう生きた心地がせん、しかしなんかしらの方法でおびきだしたとてきゃつを処す手段などもたないもんだから、泣き寝入りするしかなかったのです(実家では火バサミで掴んでぽいっとできたんのやけど)。それから一日たち、二日たち、いまだあの黒い体が姿をあらわすことはありませんが、なんだっけね、昔みた漫画かなにかで、寝ているうちにムカデが口やら鼻の穴から人の体に入り込むおぞましいイメージがあった、それがぞわりぞわりと想起されるもんでもうあかん。このまま同棲など続けられるやろうか。

 そんでもって、ひとまずブラックキャップを買ってきた今日でした。ムカデはGを餌にするらしく、そのGを消すことによって間接的に出ていってもらう作戦ですね(なんて、書くのもやあね)。一応書き加えておきますが、Gは出てませんよ、いまのところ……もう! おわりです。

●本日の一曲

 あいつが現れた瞬間なりひびいたテーマ。

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 あろうことか、お便りが尽きてしまったので返信コーナはおやすみです。下記フォームは引き続き開いておりますゆえ、気が向いたらどうぞ。

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