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永遠なれ、上かつ丼フェア【Sandwiches #66】

 すてきな雨がふっております、週末です。みなさんはいかがおすごしですか。わたしはといえば変わらず多くの時間を自宅作業に割いておるが、そういえば! 昨日の夜は、友人と落ち合ってひさびさに近所のお蕎麦屋さんに出かけていました。

 なかなかの老舗で、たしか大正8年創業とか……しかして過度ないかめしさもなく若者も入りやすい雰囲気だもんだから、以前からよく通っていた行きつけです。件の自粛があけてはじめて足を踏み入れたけれど、注文を取ってくれるおばちゃん(いつも「遠慮しないでえ」といいながらたくさんお茶のおかわりをくれます)も以前と変わらぬ様子で安心した。

 蒸し暑い夕がたには冷たいお蕎麦をつつっとすするのがよかろうて、天ざるでも剛毅にいったろか、そんな気合いでメニューを開きました。が、どどんと大きく目に飛び込んでくるのは「上カツ丼フェア」のページで、いくらのところがいまならいくらいくら、と書かれてある。そんでもってこのフェアがくせものでありまして、だって思い出せる範囲でもこの数年間、店を訪れればかならず「期間限定!」という謳い文句で上カツ丼セットが割引されているのです。

 「期間」の範囲がわからんが、や、にしても数年のあいだずうっとディスカウントされていては「上カツ丼」の矜持も形無しでありましょう。もはや割り引かれた金額が定価の様相だもんで、常連さんはみな「いつこのフェアが終わるのだろうか」とか、そんなことが気になっているのではないか。

 そんでまあくせもの、と言ったのは決してはてしない割引のことだけではなく、じっさいにこの「上カツ丼」が絶品であるという点なのです。今日は違うメニューに挑戦しようと意気込んでいても、いざ注文する段になるとよ、いつのまにか「じゃあ、上カツ丼セットで」と頼んでしまっている! おばちゃんもなれたもので、付け合わせはお蕎麦かおうどんか、温かいのか冷たいのか聞いたのち、すぐに盆を運んできてくれるのであります。

 昨日はといえば、当初の気合いをすこしでも達成すべく冷たいお蕎麦をえらびました。薬味を落としたつゆに、かためのお蕎麦をすすりつつ、それでも主役は「上カツ丼」そのひとですから、あつあつのとんかつにはふはふ言いながらかじりつく。やあやあ、これがまたジューシイで美味しいのなんの、一度取り憑かれたら戻ってこられない魔の領域でございますよ。「やっぱりうまいねえ」なんて友人と顔を見合わせて(彼もまったく同じセットを注文していました)、あっという間に完食です。満腹のおなかをなでなで帰路につきました。

 きっと、つぎに行ったときもまた「上カツ丼フェア」に乗っかってしまうのだろう、とそんな予感を抱きつつ……いまは、永遠に続くかとも思われるその「期間限定」のページが消えないことを願っているわたしです。

●本日の一曲

 ちょっぴり珍しい組み合わせ。だけどこんなコラボレーションに憧れていたりします。

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 さあさ、何日かおやすみしましたがお便り返信コーナです。投稿いただいたみなさま、お待たせしました。

●ペンネーム:ラビットガールオングリーンさん

以前は機材に関する説明をありがとうございました。作曲に関してはどのような過程で行っていますか?またギターなどの楽器は弾いたりしますか?

>>前回に続きありがとうございます! 作曲のスタイルはときと場合によってさまざまですが、たとえば昨日から紹介している最新アルバム『Circles』の際は、最初にプロデューサーのアズマさんから100曲近いトラックの「タネ」のようなものを送ってもらい、そこから自分好みのトラックを選んでフック(サビ)のフレーズを考えました。

 つまり、鍵盤やギターをつかってコード進行から曲を考えたりするのではなく、選び取ったサンプル・ビートのコード感にあわせてメロディをつくるという順序なのです。シンガーとしての勘は持ちあわせぬわたしですから、とにかくなんども歌っては書き、歌っては書き、自分の中で納得のいくかたちになるまでやり直します。あらかじめ、コード感がある程度決まっているというのはやりやすくもあり、同時に制約でもあるけれど……そのなかでどんなアプローチができるか、とそこに集中していたのがここ数年の制作だったように思います。

 自分でギターを弾くことはできませんが、最近では友人のミュージシャンの力もかりながら、別の作曲方法も試しつついろいろと企んでいるところです。いまはツールもスタイルもとにかく多様ですから、楽しく遊んでゆきたいですね! 

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