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アルバムの修理 〜教え子からのプレゼント〜

『布装のアルバム』 1940年代

このnoteは、ただいま開催中のBook Lovers展(@MOTOYA Book Cafe Gallery・会期2021/3/3〜3/28)の展示作品「g project|19c」とリンクしています。

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アルバムの持ち主は大正生まれの元教師。
太平洋戦争の最中、東京の女学校で勤めていました。生徒たちにとって、きっと憧れの先生だったのでしょう。授業が終わって職員室の窓際の席に座っていると、慕ってくれた教え子の二人が窓の外から手を招いては、ときどきプレゼントをくれたそうです。そのうちの一つがこのアルバム。表紙と背表紙には、インパクトのある帆船の絵が描かれています。

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その後、婚約を機に学校を退職。戦争は激化の一途をたどり、結婚してすぐに夫が徴兵されてしまいましたが、運良く帰ってくることができました。戦争が終わり暮らしが落ち着いてからの家族の記録をおさめてきたのが、このアルバムです。

「子供たちの写真の裏に、お祖父さんが "宝物" と書いてくれたのよ」
そんなエピソードつきの写真は、残念ながらはがれてなくなってしまったよう。ほかにも、ページが破れていたり、表紙がちぎれたり、時間の経過とともにそれなりの傷みはありますが、テープで丁寧に補修されています。

「元の雰囲気を残しつつも丈夫に使えるように直してほしい」とのリクエストで、埃や汚れのクリーニング、破れた台紙の補修、バラバラのページを糸で綴じ直し、傷んだ布表紙は土台を新しく作製しその上に元の表紙を貼り込んで修理完了です。


▽After画像4

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アルバムを手にするたびに話してくれたのは、教え子たちのこと。退職後は連絡をとることもできず、どのような人生を過ごし今どうしているのか、知るすべもありません。アルバムは大事に引き継がれ、かわいい教え子たちの存在がどれほど支えとなってきたことか、いつか伝えることができたらと願っています。



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