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黎明期のPCゲーム開発記 (2) 〜はじめてゲームを作る〜

第1話では、はじめてコンピュータに触れ、映画影響を受け「謎の英数字の羅列と格闘」し始めようとするところまでをご紹介しました。
第2話は、プログラムというものを作り始めた頃のお話です。

はじめてのプログラム (N88-BASIC)

1980年代後半、私は中学生になり、英語の授業などで少しずつ理解できる英単語も増えていきました。下敷きの裏側(第1話参照)にある「プログラムに違いない」ものも少しずつ理解できるようになって来ました。また従兄弟の家で触ったコンピュータが、当時 NEC から発売されていた「PC-8801」という機種であることを知るのもこの頃です。機種がわかると、それを触るための参考書を探すことが出来ます。当時京都の四条河原町を少し上がったところにあった「オーム社書店」は、たくさんあった書店の中でも比較的コンピュータに関する書籍を多く扱っていました。「PC-Techknow 8801mkII」という本を、確かそこで購入したと思います。その本には、N88-BASIC の内部構造や BASIC のプログラムテクニックなどが書かれていて、当時の私は従兄弟の家に行っては、その本に書いてある内容をただひたすらに入力していました。

そうやって勉強していくうちに、ウォー・ゲームの下敷きの裏に書かれていた英数字の羅列は「BASIC」のコードだということを知りました。ただそのコードを PC-8801 に入力しても動くことはありませんでした。

Syntax Error...

あのコードは N88-BASIC で書かれたものではなかったのでしょうね。でもあの下敷きのおかげで、N88-BASIC を勉強するきっかけをもらいました。

そうやって遠回りをしながら試行錯誤を繰り返し、少しは N88-BASIC を理解できるようになった私の次の目標は、「ゲーム」を作ることでした。Syntax Error / Illigal Function Call などのエラーと格闘しながら、最初に作ったゲームは「モノポリー」のようなゲーム。グラフィックを駆使して・・・なんてものではなく、文字と記号を組み合わせただけのとても単純なものでした。。盤面もテキスト、駒もテキスト、サイコロも何もかもすべてテキスト。80桁 x 25行 のテキスト表示エリアの上に全ての部品を配置して、、、当然コンピュータた対戦相手になってくれるようなものは作れないので、人対人で遊ぶものになります。

たとえそんなゲームでも、形になったときはとても嬉しかった。自分で作ったゲームを友だちに見せ、それを一緒にプレイする。その感覚は、当時の私にとってはとても快感でした。

80年代後半のパソコンゲーム事情

1981年に発売された PC-8801 は、お世辞にもハイスペックなものではありませんでした。1985年には、同じく NEC から「PC-8801mkII SR」が発売されました。この機種は、それまでの 88シリーズからグラフィック機能が拡張され、また YAMAHA の YM2203 というチップが搭載された事によって、コンピュータとしての表現能力が大幅に拡張されました。ちょうどこの頃から、いわゆる「パソコンゲーム」が多く発売され始めます。

当時うちの近くには、パソコンのゲームソフトをレンタルしてくれる店があって、また同時にソフトをフロッピーディスクにコピーするツールも販売されていました(今も当時も、間違いなく違法ですが・・・)。そのお店からたくさんのパソコンゲームのソフトを借りて、コピーして、プレイしました。「ドラゴンスレイヤー」「ソーサリアン」「Ys」「ハイドライド」「大戦略」「信長の野望」などなど、、、挙げ始めればキリがありません。

またその頃、パソコンゲームに関連した雑誌もピークを迎えます。私がよく購読していたのは、「LOGIN (アスキー)」「ポプコム (小学館)」でした。新しいゲームの情報やその画面は、こうした雑誌から収集していました。今であれば「ネットで調べて・・・」となるのでしょうけど、当時はそんなものはなかったので、雑誌の情報はとても貴重なものだったのです。

作ってきたゲームと全然違う?

はじめて自分の手で「モノポリー」的なゲームのプログラムを作り、感動を得て、そして市販されるパソコンゲームによって「コンピュータってすごい!!」となっていた私でしたが、ずっと感じていた違和感があったのです。それは、私が使ってきた N88-BASIC では、どうやっても市販ゲームの処理速度には追いつけない、というものでした。私には「絵」を書くといった芸術的才能は全くなかったので、「綺麗な絵」が描かれているという部分は考えなくて良かったのですが、グラフィックを表示する速度については、全く足元にも及ばない。

どうやったら速い速度でグラフィックを描画できるのか・・・

実はその頃、すでに高校生になるかならないかの頃だった私は、答えを知っていました。世の中には「マシン語」と呼ばれる、コンピュータを直接制御できるモノがあるということを。ただ同時にそのマシン語というものが、C3 10 00 C9 などといった16進数の羅列だということを、技術系雑誌の情報から知っていました (前述の PC-Techknow 8801mkII にもマシン語の記載が少しだけありました)。普通に考えれば「こんなの分かるわけがない」と思うところです。ですが当時の私は、「どうしてもグラフィックを表示する処理速度を上げたい」という欲求が勝ってしまったようです。

「マシン語を使ってゲームを作りたい」

という言葉とともに、私は「マシン語」という沼の世界に足を踏み入れていくことになるのです。

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