「彼女のルーツ」

私のルーツは　南の島なんです
女は言った　聞きもしないのに

確かに肌の色が浅黒く
黒目がちでエキゾチックな顔立ち

南の島といっても　日本なのだけれど
ヤマトというくくりからは距離を置く地域

そこにルーツがある　そんな顔立ちの女
どう流れて南の島から来たのか
祖父　父も早くに亡くなり　不明という
彼女は続いて何事かを話しているけれど
そのファミリーヒストリーに
さほどの関心も持てず
ただ　ぼくは
饒舌に　ひたすら饒舌に語る女の顔をのぞき
豊かな胸にドキリとさせられ
この時間がずっと続けばいいな
と
ただ　ただ夢想するばかり