「キズだらけ」

こころのキズ　からだのキズ
からだのキズ　こころのキズ

ただいま現在　昨年１１月からの変形性膝関節痛で　右膝が　イタイイタイの　大合唱　中合唱　膝が時折　痛みをがなり立てる
しかし
これ　外から見えぬ　内のキズ
からだのキズ
遠い記憶をたぐれば

生まれたときから　キズあった
難産　鉗子で引っ張り出され　この世に登場
顔面　鼻梁　若干のキズ痕　引っ張り出されて　もちろん記憶ない

記憶残る　キズ
３つ　４つ　５つの年頃
遊び　駆けまわり
神社裏の林で転んだ
その拍子　割れたガラスで膝切った
大きな　５センチばかりのキズ痕あり
停まっていた　道路舗装の工事車両にぶら下がり　ぶらぶらしてたら　落ちて転んで　唇切った
血がだらり　だらりと　零れ出し
さあ大変
と
母に負ぶわれ　夜道を医者へ
唇塗ってもらった　そのキズ痕　まだ残る
下唇の左側　今もキズが筋になってる
もうひとつ　５つのころ
おなかがイタイ　おなかがイタイと叫んでいたら
医者に行っても原因わからず
夜になってもイタイイタイと言い続け
車のある伯父さんを母親が呼び出し　遠い町の病院に即入院
盲腸の切除
暗闇の中　チョキンチョキン
と
お腹が切られていく
いや
はさみで　チョキンと切り開くはあり得ない

それでも
チョキンチョキン
と
暗闇で切られた　５０有余年の音　その記憶
手術終えた　病室
ベッドの下で母が寝息を立てる夜
天井の先は巨大な暗黒世界が広がっていた

それから　あれから
細かな　からだのキズは
あったかもしれない
今　どれも記憶はおぼろ

こころのキズ
盲腸のキズ癒えてからしばらくのち
小学校の２、３年か
ぶくぶく肥り出し　外遊びもせず家でゴロゴロ　テレビにマンガにおやつ…それに浸る肥満児に
デブデブ
と言われ続けたのは　こころのキズのひとつ

こころのキズ　こころのキズ　こころのキズ

長じて
高校　浪人　大学　就職　１年で退職　１０カ月の無為徒食をへて転職
それから　それから　３０有余年「勤め上げ」た

こころのキズは　さまざま　あったはず
だけど　だけど
そのキズ痕が見当たらない

キズがキズとして
記憶の中に刻まれることはなかった
大きな失敗　小さな失敗
叱責　無視
誰も愛さず　愛されず
空間を漂い　さすらうような感覚の中

はめられた！　不運の極み！
と
大きな穴に転がり落ちて
サラリーマンとして死刑宣告すらあった

外から見えない
自分でも忘れちゃった
こころのキズ　こころのキズ
こうして　生きているんだもん