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明石市を訪れたら、感動の嵐だった

JISSEN(自治体政策青年ネットワーク)の研修会で明石市へ。
明石市といえば、職員の暴言で批判を浴びせた市長が辞職して、出直し選挙で再選された。そんなニュースを思い出す。あんなにメディアやインターネットでバッシングを受けたのに、2位に大差をつけて70%の得票率で勝った市長ってどんな人なんだろう?
児童相談所を作ったり、養育費不払いの救済だったり、オムツを無償でアウトリーチで届けて、0歳児育児を支援するなど、子育て政策がすごいけれども、どんな背景があって実施されてるんだろう?
この少子化の時代に、出生率が四年連続増えて3,000人に届きそうだったり、人口も30万人が見えてたり、税収も6年でプラス25億!なんて、どんな街なんだ??と興味津々で訪れました。

泉市長の話に、最初から魅了されっぱなし、感動の嵐でした。選択と集中、子どもファーストのブレない軸、戦略的な政策。一言一句全てが学びになりました。書き切れないくらいたくさんの学びがあったのですが、特に学び多かった戦略4つをまとめました。

戦略①「子どもが核」「明石から始まる」明確な政策ビジョン。

「子どもが核」であるまちづくりということが、かなり明確にうたわれていて、それが実現されていました。
例えば、「離婚前後の子ども養育支援」事業に関しても、基本理念で一番最初に掲げられているのが「子どもの立場で」です。子どもが安心安全な場所で、健やかに育つために支援しているということがよくわかります。世代別に離婚をする保護者の元で、子どもがどんな気持ちであるかまとめた冊子があったり、子どもの養育に関する合意書があったり。
養育費確保支援に関しても、養育費の取り決めや受け取りなどの困っている人に弁護士職員が複数名いてサポートし、養育費立替パイロット事業がスタートしたのも、「社会で子どもを育てる」「子どもファースト」というスタンスが自治体に根付いているからという認識を持ちました。
●参考記事こちら●

「明石から始まる」ということも、かなり意識されていて、
明石市だけよければよい。ではなく、全国の自治体でも活かせる取り組みになることということで、低予算化だったり、情報の公開だったり、積極的にされていらっしゃいます。明石市のまねはできない!でなはく、「やるんだ!」という決断を持てば、実行できるんだということを教えていただきました。

戦略②ターゲティングの明確さ。お金を運んできてくれる30代子育て世帯中間層で第一子。

明石は「暮らす」「子どもを育てる」に特化して、30代共働き中間層第一子のいるターゲットに絞ったシティセールスをやっています。

【ターゲットのペルソナ】明石か明石周辺で生まれた人たちが、大学は関関同立行って卒業して、就職。都心部で結婚して、賃貸で子ども1人ができる。そうすると、手間もかかるし、お金もかかることに気づく。そろそろ2人目も家も欲しいねという話になる。
西ノ宮や阪神沿線だと家買うのに4000-5000万円かかる。明石だったら、家は2000万円以下。子ども部屋2部屋が可能で庭付き。子育て施策も充実していて、第二子以降は保育料が無償化されている。病児保育も充実している。だったら、明石へ移り住もうとなる。

中間層の共働き世帯なので、税収も増えるという構造。
子育て世帯が家を買うことで、古くから住んでいる住民の土地が売れ、建設ラッシュが始まって、まちが潤ってきたそうです。さらに、子育て世帯は子育て政策で浮いたお金を外食で使うと、商店街も盛り上がり、まちが儲からないと、人も優しくなれません。最初は「なんで、子育て世帯ばっかり!」と言っていた人たちも、「子育て政策いいんじゃない!」となってきましたとのこと。

具体的なターゲットを具体的に据えて、しっかり売り込むこと。それによって、まちが大きく変わっていったようです。

戦略③子育て施策への予算の大幅なシフト

1000億円一般会計のうち、240億を子育て施策に費やしている。
就任当初は100億。それが2.4倍に。子育て関連の職員も3倍にしたとのこと!!

「そんな財源どこにあるの??」そう思うでしょう。私も思いました。
財源の確保でやったことは、徹底した選択と集中。部門の無駄遣いを細かく切っていったとのこと。また、人件費の削減ということで、残業しないで早く帰ろう!と、残業の少ない部長の給料を上げるなどの施策も。
下水道/補修だけで150億、市営住宅も売って、道路も緊急性高い道路はやるが、それ以外は半減したということでした。

首長がもつ権限として、大きく4つあると泉市長はおっしゃられました。
1つ目は、政策決定権。2つ目は政策決定に合わせた予算編成権。(可決は議会だが)。大義があれば、予算は通る。新規事業を作るということも出来るし、補助金をカットして税金の無駄遣いを削減するという権限もある。3つ目は人事。そして4つ目は広報コミュニケーションができる点。

政策に合わせた大胆な予算編成を出来ていること、これを行使しているんだよと。(といっても、95%は既存業務に予算があてられるから、大胆に変えられるって言っても5%程度なんだよね。だから、行政の人たちもそんなに恐れる必要はないと以前、世田谷の保坂区長がおっしゃっていたとそえられていた。)

例えば、2019年4月から始まった児童相談所も、職員を70名つけて(国基準の3倍)いらっしゃって、しかもエース級の職員を配置しているとのこと。それでもまだまだ足りないくらいなので、国基準では到底足りないとおっしゃられていました。

明石の一時保護所にいる子どもたちは全員学校に通っています。
送り迎えを職員がやっていて、元いた小・中学校に通っていて、
だから親たちから、児相に子どもをとられないとはいわれないんですと。
いきなり子どもをうばって、学校にも通わせなくするから、親はどなりこんでくるですよ。
明石市では、子どもたちがちゃんと学校に通って、家庭よりもより快適に過ごしているから、ご家庭も安心しますから。

保護している子どもは30人。
全員個室、職員がマンツーマンでついていらっしゃって、まさに子どもファースト。一時保護所だって、ここにありますよ!と胸張っていえますし、親が怒鳴り込んできて、殴ってきたら、逮捕すればよいだけ。そこは毅然と対応すればよいのです。お金をしっかりかけているから、出来る体制ですとおっしゃられていました。

戦略④適時・適材・適所の人事

首長権限の大きな柱の一つ、人事。
予算とセットで、政策実現へ向けての組織編成や人事が行われているからこその実行力ですが、ポイントは3つだそうです。

①内部人材をいかに活用するか?
適時・適材・適所にこだわっていらっしゃるとのこと。
就任当初は、年功序列の人事だったそうで、定年間近で部長、40代後半で課長といったラインが決まっていたです。
そこを10年くらいはやめて、適切に配置していったそうです。部長で女性50歳という方や、課長職も30代が30名くらいはいるとのこと。
通常、首長は人事に口を出さないケースが多いようなのですが、泉市長は目指すビジョンや組織編成に合わせ、人材要件をしっかり出して、人事部に編成をしてもらっているということでした。4月に移動という人事ではなく、3か月に1回くらい異動があるとのこと。
例えば、最終局面を迎えている道路整備事業に関しても、つい最近、部長・次長級のエースを3人入れました。プロジェクトが終わったら、解散して、また次の仕事を頑張ってもらえばいいと。

②外部人材をいかに活用するか?
中央省庁から6名派遣(厚労、法務、防衛、文科、国交)してもらっているということで、国とのパイプができること、国へ還元して「明石から始まる」を体現されているのだなと感じました。
例えば、厚労省は一人は児相担当。明石市での児相立ち上げを経験してもらって、全国に戻ってやってほしいと思っていますとのこと。もう一人は学童保育担当で、学童保育に関する新しい資格をつくろうとしていると。

明石市が先進的にやるので、国は認めてくださいというスタンス。市民のニーズを知っているのは明石市、お金はいらないので、規制はしないでくださいねという気概でやっているということでした。

③専門人材の確保と活用
現在、専門職採用が51名。(弁護士10名、福祉職38名、文化分野3名)
例えば、弁護士10名で法務関連部署にいるのは1名。後は現場へ、教育委員会スクールロイヤー2名、児相2名(次年度更に+2名)、市民相談2名、高齢者部門、生活保護、保健所(引きこもり担当)など。
民間から電通も来てもらって、シティセールス担当してもらっているということでした。

総人件費20億円/200人減らしながらも、必要人材をしっかり確保して、実行されていました。


泉市長、本当に熱い方でした。一言一言から魂を感じて、胸を揺さぶられました。暴言報道でバッシングが起きた時も、もうやめようと思っていた矢先、子育て世帯のお母さんたちが集めた5,000名の署名を手渡され、駅の街頭で高校生が「自分たちのことを考えてくれる市長は、泉さんしかいない」と署名を集めてくれたり。選挙に出るだけで、「本当にありがとう!」と街中で言われたという言葉に、泉市長がやってこられた9年間を市民の皆さんが肌で感じて、子どもが明石市というワンチームの中で育っているんだという実感をしているからこその、署名だったんだと思います。

そして、児相のお話をされていたときも「子どもの命も守れなくて、何が政治家か!」とおっしゃられていて、本当にそう。未来を創る子どもたちを守れない社会には先がないんだと、大人がちゃんと腹をくくらないといけない。そう感じた熱い熱い1時間でした。 

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