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青春真っ只中の狩人

一狩行こうぜ!

当時、このキャッチコピーに突き動かされ、青春を捧げたハンターは、どれほどいたのだろうか。

当然、その疑問を掲げたからには、私はその一部を担っているのだが、この思い出は色褪せることなく、私は今でもPSPを手に取れば、俗に言う「モンハン持ち」を再現することが出来る。


身の丈を優に越える種々様々なモンスターに、人類の叡智を凝らした武器を持ってして立ち向かう。

オトモアイルーが丹精込めて作ってくれたご飯をいただき、時に狩り、時に採集のために広大なフィールドを駆け回る。

苦労して作製した武器には、文字通り魂が宿り、素材を集めて拵えた防具には、全幅の信頼を預ける。

大切にしまっていた郷愁は、一度咆哮をあげると、怒濤の勢いで私に襲い掛かる。
猛然と迫り来るそれらを、私は優しく包み込むように咀嚼することはできない。

何故なら、私はG級クエストに揉まれに揉まれた生粋のハンターである。
それらを正面から、不敵に笑いながら叩き潰してこそ、私の思い出は報われる。

それは過去を振り返らないことと同義ではない。
それは即ち、当時、戦いに明け暮れた日々を、その戦場を、再びこの手で闊歩し、思い出から会いに来てもらうのではなく、こちらから思い出のある場所へと歩を進めることである。

机の引き出しの奥から、懐かしの相棒を取り出す。
見慣れてたはずの起動画面は、私に笑顔を作るには十分過ぎた。
ディスクを読み込む音が部屋を満たし、それと同時に、あの頃と同じ風が吹いたような気がした。

セーブデータには、あの日の自分がこちらを覗いている。

所持金はこんなに多かったか。
武器はこんなに揃っていたか。
オトモアイルーの名前はこんな感じだったか。

クエストに出てみると、ブランク故に、不甲斐ない動きを晒してしまう。
オトモアイルーは、仕方のない人だと、私を助ける。モンスターは、あの日の苛烈さはどこにいったのだと、私を攻め立てる。

減額された報酬金学に、されど胸を張りながら、昔と変わらない言葉を並べるはずのNPCに、初対面かのように話し掛ける。

人生で最も時間を費やしたゲームタイトル。

MONSTER HUNTER PORTABLE 2nd G

当時、初めてPSPを手にしたと同時に購入したゲームが、これであった。
少しタイトルに不釣り合いな、薄い青色がポップに輝くPSPに、新モンスターであるナルガクルガが踊るゲームパッケージ。
その時の高揚は、ゲームのプレイ時間にそのまま焼き付いている。

壮大なBGMを、友達と何度も聞いた。


放課後、誰々君の家で、部活終わり、どこどこの公園で。時には、若気の至りの免罪符なとでは許されない、授業中にもプレイしたのを覚えている。

ノートを書き取るペンの音に合わせて、スティックをカタカタと揺らす雑音を、先生は「リオレウスを授業中に狩るんじゃない」と、ハンター知識を持って、私達を窘めた。

反省と、ゲームの没収と、先生とのハンターライフの会話。クエストを途中で中断せざるを得ないことに文句を垂れる不良少年と、生徒に寄り添う恩師がそこにはあった。

モンスターと戦って喜怒哀楽を繰り返す友達の表情を、何度も見た。

強大な敵の待つ緊急クエストで、撃退した古龍の数で、何度やっても手にいれることのできない素材で。はしゃぎながら、煽り合いながら。

難しいクエストのモンスターとなると、一瞬の油断が命取りとなる。しかし、リスクを取った行動をしなければ、制限時間以内に目的は達成することができない。

役割を分担して、声を掛け合いながら目標に向かっていく。チームワークや友情を育む大切なツールであったことは、言うまでもない。

この「モンハン2ndG」を通して、友達と共に見て、聞いて、たくさん感じた。
ゲームのプレイする時間、不幸だったことは一時もない。すべてが笑顔へと導いてくれていた。

プレイ時間すべてを、確かに私は、心から楽しんでいた。それに比例して、友達と時を共にすることも増えた。

青春だった。
このゲームが、あの時代の一部を作ったのだ。

巷で騒がれたゲーム脳なんてない。
私はこのタイトルに、様々な事を学び、そしてそれは今もなお、受け継がれている。

時の経った今、当時のアイツらは、クエストボードに貼られた思い出の場所に、再び集ってくれるだろうか。

ふと、ギルドカードに記されていた、アイツらのハンター名を、私たちのLINEグループに並べてみる。

どこからか、歴戦のハンター達の角笛が、聞こえた気がした。

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