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ライブドア時代の海外企業の買収・整理【Scentan Ventures Limited・大久保氏】|Vol.321-323

今回のゲストは、過去に100億規模の買収も担当したという大久保氏。ライブドア時代の桁違いな規模の海外企業の買収、そして事件後の売却経験についてお話しいただきました。

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■大久保 紀章 氏 Scentan Ventures Limited マネージングディレクター
大学卒業後商社に就職。香港駐在中にオン・ザ・エッヂ堀江貴文氏に出会い、参画後は国際事業部の責任者・執行役員として、事業開発と投資を担当。ライブドア事件後は国際事業の整理を行う。その後イノベーションインタラクティブ社の日本事業立ち上げに携わる他、2014年からはScentan Venturesを立ち上げ、約20社にハンズオンの投資を行う。他にも、Aburi Sushi TORA(カナダ)COO、インターステラテクノロジズ、Tradeshift社、Simpleshow社の取締役も務める。(2020年7月現在)



【元ライブドア】発展と波乱を支えた元執行役員が登場!〈No.321〉

シンガポール在住、ライブドアの元海外投資担当、大久保氏のキャリア

商社から、まだ無名だったオン・ザ・エッヂへ
新卒で就職したのは商社、海外に行きたいと伝え、香港駐在に
駐在中、たまたま当時のオン・ザ・エッヂ堀江氏に出会う
アピールして声をかけてもらい、海外事業の責任者として加わる

駐在中は条件も良く、成績も伸びていたそうですが、聞いたこともなかったオン・ザ・エッヂで平均25~26際の若い人が走り回る姿を見て危機感を抱き、転職を決意されたとのこと。

堀江氏の慧眼は当時から
ITバブルどん底の当時から回復を見据えていた堀江氏
安いうちに優秀な会社を買う方針だった
当時は今よりも静かでシャイな印象だったものの、頭がよくて強いのは今と同じ

事件後の対応、次のキャリア
2006年1月の事件で一転して売却側に。2007年まで海外事業の整理を担当
2007年からはNYのデジタルマーケティング会社(イノベーションインタラクティブ社)に転籍
2011年にシンガポールへ引っ越し

投資などのベンチャー支援のほか、多数の企業で取締役も務める
2014年からScentan Venturesを立ち上げ
20社ほど投資をしながらハンズオンで成長を手伝う
カナダの和食大手の幹部も務める他、インターステラテクノロジズの取締役も


ライブドアでの海外投資・事業開発

当時の方針は
ライブドアの株価を上げるために、利益の出ているネット系の会社が必要だった
特にシナジーがあり、組むことでさらに伸ばせる会社を狙っていた

アメリカの会社を買う「タイムマシン経営」が主
スカイプを日本に持ってきたのもライブドア、「livedoorスカイプ」の名前で始めた
当初は立ち上げるとブラジルから突然電話がかかってくることもあったとか

2005年には100億円でイノベーションインタラクティブ社を買収
グーグル検索最適化、ソーシャルメディアの大手代理店、テクノロジーを持つ会社
検索エンジンをまたがった広告予算の最適化
リスティングとディスプレイ広告を合わせた予算配分最適化も可能

問い合わせ窓口への営業メールからM&Aにつながったことも
マイアミのマーケティング会社の買収は、営業メールで興味を持って連絡したのが始まり
話を聞くと、やる気のある人たちが会社を売りたがっていることがわかった
そのM&Aでバンカーや企業との人脈が広がり、リサーチの助けになった

“開発力と投資能力に優れた日本企業”として評価された
当時は中国の存在感もまだ大きくなく、日本進出は一つのセールスポイントになった
ライブドア自体も技術者と開発力・投資資金を抱えた会社として評価された

支払いは最高で“1000億円”あったキャッシュから
クロスボーダーM&Aの場合、株式交換は手続きが複雑なので、買収は基本現金で
フジテレビの1件のあとは多額の現金が戻り、多いときで1000億円以上あった

買えなかったのが結果オーライになったことも
Myspaceを買おうと120億円で交渉していたが、別会社に580億円で買収された
DDの結果あまり数字がよくなく、買収を見送った形
しかし、Facebookが出てきて最後は30億で売却された



【ライブドア時代】海外事業責任者としてのM&A経験〈No.321〉

事件後の売却

NYの会社に夢を語って買収した半年後、事件が起こった
投資銀行が入っているので現金が必要になり、すべて売却することに
しかし売る側であるライブドアの経営陣が全て入れ替わったため、売りにくい
結果、他企業への売却ではなく、MBOがメインに

グアテマラの会社は利益を出せた少ない例
ラテン語のトップレベルドメインとメディアを持っていた会社は売却できた
ドメインのポートフォリオ、アドネットワークやアドテクは分社化してそれぞれを欲しがっている会社へ


クロスボーダーならではのエピソード

初めてリードした案件で裏切り⁈上場企業バリュークリック社の買収
アメリカの親会社と並行して日本の社長とも話し、一緒に頑張ろうと言っていた
TOBを仕掛けたところ、約束していた社長も売ってしまっていた
その後株価はTOB価格の50倍近くになったので、売った社長は結果的に相当損した形

クロスボーダーでもDDはライブドア社内で
法務DDだけは弁護士に依頼したが、ビジネスDDや財務DD、技術面のDDも自社で対応した
それがライブドアの強さの一つだった
当時は年間EBITDAの10倍ほどが相場。赤字でも売上の何倍もつくこともある最近に比べれば低かったとの見方をされているそうです。



【クロスボーダーM&A】ライブドア時代のエピソード〈No.321〉

ライブドア時代の思い出

ライブドアの採用、最後は堀江氏が判断
新卒採用はしておらず、友達の紹介などいろんなルートでエントリーがあった
最後は必ず堀江さんの5分ほどの面接があった

最後は辛い思い出が1年半近く続いてしまった…
取締役が全員刑事事件になり、外部からも弁護士が入ってきて辛かった
巻き込んでしまった会社を責任もって売却していかないといけなかった
グアテマラの会社にはヨックモックを持って行き、不安がる社員と一人ずつ面談した


クロスボーダーM&Aを振り返って

国によるキャラクターの違い
南米の人は温かい。優しくてゆっくりした人たち
「ドンパチ」なNYの会社とは水と油だった
西海岸はブラフ(はったり)が多い

華僑はやっぱりすごかった
ナスダックに上場しているシンガポールのISPを買うときは華僑が相手
交渉の際は英語、仲間との相談は中国語を話し、日本語がわかる人を同席させるやり方

交渉が長引く中で情報がリークされ、株価が上がったタイミングで株主だったシンガポールの航空会社が売却してしまう事態が発生。結局ディールは破談になったそうです。

ライブドアのPMIは「統治」するスタイルではない
まずは関係構築が大事
基本的に相手にリードさせ、ライブドアの強み(開発能力・ブランド)でうまく橋渡しする

ストックオプションやアーンアウト等を活用した条件面でのグリップも重要
それでも最初の段階で逃げられたことがあったとか。その経営者は「どうしてもやりたいことがある」と言って追加の対価を得ずに対象会社を離れ、3年ほどだって100億円の会社を作って売却したとか…。しかし関係性はよかったようで、さらに成功した後も引き続きつながっているそうです。






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