見出し画像

土台ゼロから2クラブ設立。「フレスコ王国・四国」への第一歩――藤田然吏さんインタビュー

2019年7月、高知県と香川県で「黒潮フレスコボールクラブ(KFC)」「瀬戸内フレスコボールクラブ(SFC)」が同時設立されました。その代表を務める藤田然吏さんは、経験者のいなかった四国にクラブをつくり、愛好者を増やしています。

徹底した役割分担や組織化、スポンサー約50社獲得など、他クラブとは違った方面から運営を行う四国。今後、競技人口や競技レベルは急上昇していくはずです。今回は、その1年間の歩みを語っていただきました。

マイナースポーツクラブの運営に携わる方には注目のインタビューです。

経験者ゼロから高知・香川でフレスコボールクラブ設立

画像1

― 去年(2019年)の7月、四国で2つのクラブが同時設立されて、とても驚きました。クラブ設立にいたった経緯を教えてください。

僕がフレスコボールと出会ったのは去年の3月。日本フレスコボール協会会長の窪島さんが、四国でフレスコボールを広められる人を探していたときに、仕事上のお付き合いがあった職場の上司が、「適任がおりますよ」と僕を紹介してくれたのがきっかけで。

僕は上司に呼ばれて、当時仕事で行っていた高知県宿毛市のイカのおつまみと、名刺入れを持って、窪島さんに挨拶に行きました。

― 何で然吏さんが選ばれたんでしょう?

僕は20代後半くらいから、イベントサークルを持っているんです。「素人がするすべらない話」とか「無人島キャンプ」とか。イベントをつくったり、人を集めて盛り上げたりすることが得意で、ライフワークみたいになっています。その活動が社内報にも載るくらいやったので、職場の上司も僕がそういうのが得意なことを知っていたんですよね。

― 急に任されることになって、最初は何をしたんですか?

1週間くらいして、突然、ラケットとボールが送られてきました。初めは何やったらいいかわからなくて、友だちを集めてやってみたけど、全くできなかった。だから面白くなかったっていうのが最初の感想です(笑)。

四国の場合、経験者も全くいないから、握り方もわからんし、動画を見て学ぶにしてもそんな難しいやんって。でもせっかく送ってきてくれたから、面白くなるくらいまでやろうと、会社にいた元プロのソフトテニスプレーヤーに声をかけて、アドバイスを受けながらやっていきました。

最初って10回続くだけでもめちゃくちゃ嬉しいし、見知らぬ人と一緒に喜べる達成感みたいなのが気持ちいいスポーツやなと思いました。

初観戦・ジャパンオープン2019で受けた衝撃

画像2

― ジャパンオープン2019には、四国から1ペア出場し、然吏さん自身も観に来られていましたね。

観ていて、「俺らがやってるのとは違う競技や」と思いました。ラリーはめちゃくちゃ速いし、服もバッチリ揃えて、音楽も流れてて、会場の盛り上がりもすごくて。本当にすごいなと思ったのは、みんなが打っているときに、周りの人がものすごい声援を送るし、罵声が一言もない。「なんやこのスポーツ…!」と思って、感動しました。

中でも一番覚えているのは、優勝した倉茂くんの涙。プレッシャーを味わいながら頑張ってきて、やっと優勝して出てきた涙。これやな、と。その時は、四国から誰かがあそこに立って、一緒にもらい泣きしたいと思いました。

でも、トップ選手と気軽に打てるところもすごいですよね。まあやさんと打ったときも衝撃的やったし、芝さんとかは迫力があってフレスコを背負っているオーラがある。あと僕はサッカーをやってきたので、新城さんの悩んできた過程とかを聞いて、すごく近いものを感じました。影響を受けた選手はたくさんいますね。

― 然吏さんは、選手としてのモチベーションはどうなんですか?

上手くなりたいけど、プレーヤーというよりは、今はクラブとして盛り上げたいという気持ちの方が強いですね。まだまだいけるなとは思ってるけど(笑)。外山さんとか、年上の選手を見ていると自信になりますよ。クラブとして安定してきたら、プレーヤーとしてもやっていきたいなと思っています。

クラブの組織化・スポンサー獲得の秘訣

画像3

― 四国のクラブは、今ある地域クラブの中でも特に、組織化されているような感じがします。

協会の地域クラブの指針を見ながら、めちゃくちゃ勉強したんですよ。それこそ起業の本とか、「アメリカ海軍のチームのつくり方」の本とかを読んで、体制づくりは気を遣ってやってきました。Jリーグの組織図も参考にしましたね。

資料もいろいろつくっています。クラブ運営マニュアルや事務処理マニュアルをつくって、会員の管理もかなりしっかりやります。

組織としては、代表・副代表はもちろん、事務局長という何でも屋と、スキルアップを担うコーチ。それと、マイナースポーツをするにあたっては、「広報」、イベントづくりやグランドの予約を取る「企画運営」も大事だと考えて、それぞれ部長をつくり分担しています。

― そうなんですか。それはすごい。。

ここまでするのはなぜかというと、四国4県に広げたいからです。最初は僕が代表をやるにしても、ゆくゆくは自走できる組織にしたいと思っていて。だから、1つの会社みたいな感じにしているんですよ。

― 機能的ですね。

逆に言うと、他のクラブの空気感を知らなかったから、どうしよう…と考えてこうなった感じですね。

― スポンサーもたくさんついていますよね。

個人と企業合わせて50社くらい集まりました。年に何回も大会があると、四国から出るには旅費がかかります。それを全部個人負担にすると、ジャブみたいに効いてきてしまう。

だから、安定した財政基盤をつくらないといけないと思って、メンバーからの会費のほかに、スポンサーを取ろうと考えたわけです。

― スポンサーを取ってくるコツってあるんですか?

「夢を語ること」ですね。四国であれば、フレスコボールというマイナースポーツクラブをやっていて、2年以内に日本代表を輩出したいですと。だけど四国というロケーション上、大会出場には旅費もかかるし、スキルアップするにも関西などに遠征に行かなければいけない。だから少しでもいいのでご援助お願いできませんか、というような話をしています。

画像4

― どういう会社さんが多いんでしょう?

ほとんど僕やメンバーの知り合いつながりです。人からお金をもらうことになれば、よりクラブに対してしっかり向き合うようになりますよね。そういうねらいもあって、メンバーにも動いてもらいました。スポンサーの取り組みだけでなく、本業の仕事をしながらも、フレスコボールの運営に取り組んでくれている幹部メンバーには感謝ですね。

KFCがいつも練習しているビーチが高知の芸西村にあるので、芸西村と、村内の個人や企業さんからはたくさん応援いただいています。地域に貢献していこうと、気が引き締まる思いです。

― なるほど。スポンサーってどうやって取るの?というクラブや個人は多いと思うので、今のお話すごく良かったです。

これは必要があればどんどん他のクラブに伝えたいと思うし、マニュアルもトークスクリプトも渡しますよ。

― 然吏さん、めちゃくちゃ営業マンですね(笑)。

ずっと法人営業をやってきてるから(笑)。人の気持ちを動かさないといけないので、いろいろ考えてきましたよ。

フレスコボールは人生の楽しみを8倍にする

画像5

― クラブとしての課題はありますか?

短期的な目線で言うと、会員数を増やすこと。今は黒潮と瀬戸内合わせて20人くらいいますが、練習参加率が高い人を増やしていきたいです。でも面白いのが、設立当初は20~30代が多かったのが、だんだん40~50代が増えてきているんです。

その人たちの熱量が高くて、真面目に練習も来るし、高知から香川に遠征に行きますって言っても来るし。急に「ドローン買いました!」って言って、ドローンで撮影してくれたり。

フレスコボールは何歳でもできるというのもあって、彼らにとってもここが1つの居場所になってるんやなと思います。年齢層が広がってきたことで、いい意味でクラブの遺伝子も変わってきていて、面白いですね。

― 経験者なしで、完全にゼロから始めたクラブは四国だけですよね。本当にすごいと思います。

最初は大変でしたけど、芝さんが来て芝塾を開いてくれたり、関西の存在も大きいですよ。全然まだ知らないときに、まっちゃん(関西GVK代表)がTwitterでメッセージしてきたんです。

いきなり「四国と関西の架け橋になるわ!」みたいな感じで来たから、「こいつに絡んだらあかん」と最初思いましたけど(笑)。会ってみたらおもろいやつで、いろんなイベントに呼んでくれるし、四国の状況もわかってくれて。

他にもやましょー(GVK副代表)は、ハートに響くフレスコボールチラシをつくってくれて、僕はそれを使ってスポンサー候補に話をしに行ったりしているし、きっしー(GVKヘッドコーチ)は、動画を見たり実際に来てくれたりして、経験のない僕らに技術的なアドバイスを丁寧にくれます。

そうやって周りの人に助けられながらなんとかやってますね。

― 突然任された四国のフレスコボール普及を続けてこられている理由は何ですかね?

目標をつくっているからですかね。目標はいくつかありますが、1つは、幹部やメンバーと最高の感動を味わいたいということ。ジャパンオープンに行ったときに、誰かが「第2の青春」って言ってて、まさにそれやなと。それを味わいたいと真に思いました。

フレスコボールは、人生の楽しみを8倍にすると思っているんですよ。自分を2倍楽しくしてくれて、周りの仲間の喜びも2倍にしてくれて、さらに地域も2倍幸せにしてくれる。2×2×2で8倍。それだけの魅力があると思います。

あとは、せっかく海に囲まれた環境なので、四国4県にフレスコボールクラブをつくり、それぞれが地域にとって誇りに思えるクラブにして、「フレスコ王国・四国」と呼ばれるようにしたい。活動を通して、自分の能力がどこまで社会に貢献できるかチャレンジしたいとも思っているので、1年後、3年後、5年後を見据えて動いていくつもりです。

― 今回は貴重なお話、ありがとうございました!

次回のインタビューもお楽しみに!




「アスリート×ビジネス活動を応援したい」「活動理念に共感できた」「創作物に価値を感じた」という方は、よろしければサポートをお願いします!いただいたサポートは取材・執筆・アスリート活動の資金にさせていただきます。