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競技も普及も、フレスコボールは女子がカギ――初代女子チャンピオン・有沙さんインタビュー

フレスコボール協会のトレーナーとして活動しながら、ジャパンオープン2016にて初代女子チャンピオンとなった有沙選手。私(落合真彩)の大学のソフトボール部の後輩であり、昨年5月までペアを組んでいた相手でもあります。

女子選手として初めて海外の大会に出場するなど、女子のトップランナーとして普及活動に力を入れてきました。妊娠・出産を経て2018年2月に選手復帰。いきなり3位入賞という、どこまでもパワフルな存在ですが、この2年間どんな思いで過ごしてきたのでしょうか。

部活の後輩かつ元ペアということで、インタビューは非常にやりづらかったのですが(笑)、“女子目線のフレスコボール”をすごく感じられるお話になりました。女子にはもちろん、男性陣にもぜひ読んでほしいインタビューです。

「お前ら見とけよ。」反骨心から競技の道へ

— そもそも有沙は何でトレーナーになったんですか?

有沙 高校の部活でアスリートとしての限界を感じて、選手の近くで支える仕事がしたいと思いました。目指すなら日本代表のトレーナーにと思い筑波大に入って、ソフト部に入って。2年生ぐらいの時に、試合前の真彩さんの足にテーピングしたんですよ。テーピングの授業を受けた直後で、自信満々に「できますよ」とか言って(笑)。

その試合後に、「有沙のおかげで助かったよ」って言われたときに「私、絶対トレーナーになる!」って思いました。本気でトレーナーになろうと思ったのは真彩さんのその一言がきっかけです。

— 私はまったく覚えてないけど(笑)。フレスコボールと出会ったきっかけは何ですか?

有沙 たまたま大学の友達が長田さん(現フレスコボール協会事務局長、当時はイベントアンバサダー)を知ってて。私がトレーナーとしてフリーになった時に、長田さんが書いた「フレスコボール協会のインターン募集」の記事を見て、2016年の4月に話を聞きに行きました。

実際は、「フレスコボールって何?」という感じで、当時はプレーヤーも少なかったので、「今は普及の部分を頑張ってるんだ」と言われて。やっぱりトレーナーとしては、協会とコネを持ってた方が将来的にいいので、「それでも全然いいです!お願いします!」みたいな(笑)。そこから始まりました。

— そこからはどんな活動を?

有沙 まずはフレスコボールを知るために実際に打ってみたんですが、長田さんとかに「センスねーな」と言われたくらいの出来で。でもむしろ、「私はトレーナーだから競技はやらなくていいや」くらいに思ってました。

— どこで方向転換したんですか。

有沙 ジャパンオープン2016のミーティングに参加した時に、今回から女子カテゴリーができますということになって。私は初めての大会だったので、倉茂選手(初代日本代表)に「プレーヤーの雰囲気とか、選手として出る緊張感を知っておいたほうがいいよ」と言われて、「確かにそうだな」と。

そしたら周りのメンバーが、「いや、お前下手くそだから絶対無理だよ」って言ってきたんですよ!(笑) 「お前がチャンピオンなんてないない。」みたいな、散々な言われようで。それで逆に「お前ら、マジで見とけよ。」と思いました(笑)。

今すぐは無理でも、3年後なら追いつける

有沙 「絶対初代チャンピオンになる!」と思ってペアを探してたときに、たまたま出会ったのが真彩さんでした。大学の後輩の試合を見に行ったら、会場に真彩さんがいて、「おもしろいスポーツがあるんですけどやってみませんか」って。

一生懸命「“初代”チャンピオンになりたいんです!!!」って言ってましたね。それでペアを組んで練習して、結果優勝できた。結局、あのときボロクソに言われなかったらハマらなかったんじゃないかな(笑)。

— なるほど(笑)。でも、大会に出て、これで選手は終わりとは思わなかった?

有沙 思ってました。競技としては楽しいけど、私にとっては「日本代表の帯同トレーナーになる」という夢の方が大事で。もう少しメジャーなスポーツのトレーナーをイメージしていたので、離れようと思った矢先…イタリア大会があるって聞いて。

ジャパンオープンの優勝・準優勝ペアはそれに行くことになっていたので、「じゃあ、私日本代表の帯同トレーナーという肩書きで行きたいです」って言ったら、「いいよ」と軽く言われたんです(笑)。それで、イタリアに行きました。

— そういうことだったんですね!

有沙 はい。トレーナーする気持ちで行ったのに、向こうで今度は「出ちゃいなよ」って言われて、大会にも出ることになっちゃった(笑)。

— 「You 出ちゃいなよ」みたいな(笑)。

有沙 でも出たら出たであっちの人がすごくいろいろ教えてくれました。日本人の女子プレーヤーとしては初めて海外に行ったので、ここで得たものを日本の女子に伝えなきゃいけない、それができるのは自分しかいないなと、帰るときにすごく思いましたね。

同時に、自分の夢を追うのも大事だけど、フレスコボールが普及して、女子がもっと増えたら絶対楽しいだろうなと感じて。だからとりあえず既存の女子に、私が教わったことを全部教えようと。

半年間離れて感じた女子のレベルアップ

有沙 フレスコボールって日本の場合、女子がカギだと思うんですよ。

— それは競技として?

有沙 競技も普及もです。普及に関しては、ビーチで女子が水着でやってたら、絶対男子は「何あれ?」って興味を持つじゃないですか。だから女子が普及には絶対欠かせないというのがひとつ。

競技に関しては、イタリアに来てた女子のレベルを見て「いける」と感じたんですよ。男子のプレーを見た時に、身体能力とか体格からして、日本人があのレベルに行くのはきついかもと思いましたけど、女子はそんなにポテンシャル的な差はない。今すぐは無理だけど、3年後くらいだったらって。だから私は特に「女子」に焦点を当てて活動していました。

— たしかに、Facebook のグループを作ったり、結構女子に向けた発信をしてましたね。

有沙 「女子」っていうのが、私のいろんな動機になってたんです。トレーナーやってても、男子なら「ひょい」ってできるのに、女子じゃうまくできない事がいっぱいある。なんでその「ひょい」ができないのか、それは男子ではわからない。だからこそ女子にもっと広まってほしいと思いました。

— それが秋から冬ですね。その後、子どもができましたってなったけど、その辺りでの心境は?

有沙 正直あの時は、生活とか今後のことを考えるので精一杯。フレスコボールのことを考える余裕はなくて、これをきっかけにフレスコから離れようかなって本気で思ってました。

でも、真彩さんに最初に「妊娠しました」って報告した時に、真彩さんが「ありさが帰って来るなら私は続けるよ」って言ったんですよ。それで「続けよう」って。本当に、フレスコボールは離れようと思っても離れられないというか。

— 約半年間、一線から離れましたが、産休から戻ってきて感じた違いはありましたか。

有沙 すごくいい雰囲気になったなと感じました。フレスコボール全体で見たらわからないですけど、女子はこの半年でかなり変わったと思います。みんなレベルアップして、つながりも強くなって。私がいなくなったのも、ある意味では良かったのかもしれません。

— というのは?

有沙 私がいたときは、私が「この日練習どうですか?」って一人一人に聞いていく感じで。アプローチはほとんどが私発信でした。やっぱり私は女子で1人イタリアに行ってきたから、得てるものは違いますよね。だから私を筆頭に、みたいなのがちょっとあった。それが今、引っ張ってる人たちが同じレベルで横に広がって、選手層が三角形だったのが、台形みたいになっています。プレーヤーとして今いる女子の層がすごく好きで。

— 層っていうのは。

有沙 ……何て言ったらいいんだろう。すごく活気があると言うか。これから盛り上がっていくんだろうな、みたいな雰囲気をすごい感じるんです。お互いが相乗効果で出し合ってる感じがしてますね。なんとなく。

— それは何だろうね。

有沙 女子を引っ張ろうと思って頑張ってきて、でもその私がいなくなってしまった。そのときに代わりになったのが真彩さんだったと思います。でも真彩さんに負けじと、あやっぺさんと千賀子さんが食らいついてきて、さらにそれに負けじと彩未さんもついてきて、みたいな。それがよかったのかなって。

私たちが分かれることで、また相乗効果が生まれるはず

— 普及にしても、競技にしても「面が増えた」気はしますね。

有沙 そうですね。今女子の状況としては、上に行ける可能性が限りなく近い人がいっぱいいる。それがいい状態を生んでいると思います。

— 有沙は最初からプレーヤー目線ではないところが特殊ですよね。

有沙 ただやっぱり大会となると上を目指したい気持ちはありますよ。今ペアを組んでいるまいさんが本当に最後の心残りだったんです。まいさんがフレスコボール体験したときに「これ楽しいね、私もめっちゃ練習したい」って言ってくれてたんですけど、直後に妊娠しちゃって。練習どころじゃなくなって。

その後無事子どもも生まれて、ペアをどうする?ってなった時に、さっき言った女子の状況を見ました。それで、真彩さんとまた組むよりは、私たちがいい意味で分かれることで、さらに良い相乗効果が生まれるだろうと思ったんですね。

やっぱり女子が競技目線を持つのってすごく難しいんですよ。だから競技目線を持ってる人が、どんどん違う人とプレーして上を目指す。そうやって増えていったらいいなと。それでまいさんに連絡してみたら、「実は私もちょうどやりたかったんだよね」って言ってくれて。

— そこに関しては、いろいろ話はしましたね。いろんな人とペアを組んでみるのもいい、でも、ブラジル大会、日本代表を目指して勝ちにいきたいっていうところ。難しいじゃないですか。その辺はどう思ってますか?

有沙 そもそも私は半年ぐらいやってなかったので、すぐ上に戻れるかっていうと、そんなに甘いとはもちろん思ってないです。それに、ブラジルに行くためには、まいさんと組んで日本代表の基準である4位以内に入ることが大前提というか。

それぐらいできないと海緒(娘)を置いてブラジルに行っちゃいけないですよ。それと、まいさんと組んで、私が教えながらやった上で、どこまで上がれるかっていうのは自分の力試しでもあるかなと。

— それは今後の目標にもなるのかな。

有沙 最終的には4位に入れなくても夏で優勝したらいいです。今後の目標としては、女子の大会を開きたいですね。20ペアで!それぐらい女子が出た時の上に立ちたいなと思います。

◎文中に出てきた女子選手たちのインタビューも今後続々と上げていくので、お楽しみに!

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