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非行・犯罪に関する諸理論

理論がとても多いです。古いものから順に紹介していきます。

生来性犯罪者説
Lombroso(1876)は、犯罪者は生まれつき犯罪を犯すように運命づけられていて、身体的・精神的に特異な特徴があると言いました。

犯罪素質説
Kretschmerは、犯罪と気質との関連を指摘しました。分裂気質の人は窃盗、詐欺が多く若いうちから罪を犯す、躁鬱気質の人は中年期以降の詐欺が多いといったものです。
また、Moffittは、個人の素因の影響が大きい生涯持続型の犯罪者と、社会的要因の影響が大きく若い頃だけ罪を犯す青年期持続型の犯罪者に2分しました。

精神病質説
Schneiderは、性格が異常で社会に悪影響を与える人を精神病質者(サイコパス)と呼んで、性格が犯罪の原因だとしました。

アノミー/緊張理論
Merton(1938)は、人生目標が合法的な手段で達成できない人が犯罪を犯すとしました。

分化的接触理論・分化的同一化理論
Sutherlandは、犯罪は友人や家族など親しい人との交流を通じて学習されたものだと提唱しました。人間は元々は罪を犯そうとは思っていませんが、人生の早期に長期にわたって身近な人の犯罪を見聞きしていると罪を犯すようになるということです。分化的接触理論といいます。似たようなことをGlaserも言っていて、犯罪の学習は犯罪者との心理的な同一化が重要な役割を果たしている、この理論を分化的同一化理論といいます。

サブカルチャー理論
Cohenは、非行サブカルチャー理論を提唱しました。帰属欲求や承認欲求を満たされない人たちがサブカルチャーを形成し、そこでなんとか地位や尊敬を得ようとして犯罪を犯すようになるという理論です。

中和の技術
Sykes&Matzaは、中和の技術といって、犯罪者が「法を犯してもいい」と正当化する方法が存在することを示しました。社会が悪い、誰も傷ついていない、誰からも非難されていない、誰かに教唆されたからやった、などと犯罪を合理化します。

文化葛藤理論
Sellinは、犯罪は文化間の違いや格差によって生じると唱えました。質の異なる文化と接触した時(移民など)や文化的な格差が生じた時(経済的格差など)に犯罪が起こるといいます。

ラベリング理論
Beckerらは、社会がある軽微な逸脱行動に悪のラベルを貼ることによって、その人の社会的地位や評判が下がって、より重大な逸脱・犯罪につながると主張しました。

社会的絆理論
Hirschiは、そもそも人間は悪いことをする存在なのだが、犯罪を抑制するための要因があることで多くの人は罪を犯していないと言いました。その要因とは、アタッチメント(家族や友人などとの信頼関係)、関与(ポジティブな人生目標を設定してそれに向かって行動すること)、没頭(社会的に承認されている活動に時間と労力を使うこと)、規範観念(社会的ルールを尊重していること)の4つです。

情動障害理論
Healyは、非行は情動障害によって生じると説明しました。情動障害とは、心的エネルギーを統制する自我が機能不全を起こしていることを指します。現実からの逃避、親や社会への復讐として非行が生じているのです。

さまざまな理論がありますが、どの立場に依拠するとしても、非行少年の成育過程で生じた心理学的問題は見逃せません。反社会的行動の背景には、それを支える反社会的な思考があります。例えば「大人が好き勝手なことをしているから自分も勝手にしていい」などです。そのような思考は、養育者に大切にされた経験の乏しさや虐待、家庭の機能不全、貧困、惨めさ、無力感、発達障害などから来ている場合が少なくありません。

非行に介入する時には、そういった心理社会的背景をアセスメントし、家庭裁判所や児童福祉施設などと連携して、教育や環境調整を行なっていきます。

今回はここまで。理論がとても多くて細かいのですが、公認心理師試験の選択肢にちょこちょこ出てくるので注意です。
参考↓


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