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次世代モビリティビジネスを彩る"ソーシャルグッド"とは?

こんにちは。MaaSHack編集部の髙倉です。
読者の皆様は"ソーシャルグッド"という概念はご存知でしょうか?
まだ日本では浸透しきっていないため、初見だと言う方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、私はこのソーシャルグッドこそが、次世代のモビリティビジネスを成功させる鍵になると考えています。
今回はソーシャルグッドが秘める、今後のモビリティビジネスの展望についてお話ししたいと思います。

1. ソーシャルグッドとは

まず初めにソーシャルグッドとは何かを説明させていただきます。
ソーシャルグッドとは、地球環境や地域コミュニティ等の社会全般に対して良い影響を与える活動や製品、サービスを指す言葉です。
近年では、企業のCSR(社会的責任)活動や、SDGs(持続可能な開発目標)を実現するための活動全般を指す言葉として多用されています。

注目されたきっかけは、遡ること6年前。
2015年9月に開催された国連際サミットにてSDGsが採択されたことがきっかけです。
これによって、環境問題や貧困問題などの社会問題の解決に向けたサステイナブルな取り組みが地球全体で広まり始めました。
特に海外では、既に広く浸透しています。

とは言え、日本でも徐々にソーシャルグッドに対する意識は浸透し始めています。
実際に、ソーシャルグッドを取り入れた事業を展開する国内企業も増え始めています(後述)。
では、ソーシャルグッドな取り組みを行う企業側のメリットとは何なのでしょうか?

2. ソーシャルグッドを取り入れるメリット

ソーシャルグッドな事業や商品・サービス等の取り組みは、企業側にとってもメリットがあり、積極的に行うべきであると言えます。
そのメリットとは、企業ブランディングの促進です。

ソーシャルグッドに対する意識が世界的に浸透し始めている昨今、ソーシャルグッドな取り組みを行っている企業のブランドイメージは向上します。
結果として、マーケティング効果に加え、優秀な人材の確保や資金調達面にも良い効果をもたらすのです。

つまり、ソーシャルグッドな取り組みは、単に社会貢献に繋がるだけでなく、今後の企業のさらなる成長を大きく加速させる効果があるのです。
ところで、ソーシャルグッドな事業や商品・サービス等は、消費者にとって需要があるのでしょうか?
今後、本当に消費者のニーズを刺すことは出来るのでしょうか?

3. ソーシャルグッドは今後、日本の消費者に浸透するのか

博報堂が打ち出した「生活者のサステイナブル購買行動調査2021」によると、環境・社会に配慮した商品・企業が、これからの購買の判断基準になると結論付けています。

本調査では、全国20~60代の男女計6,000名を対象に、環境・社会を意識した消費行動に対する取り組みを聴収しています。

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出典:博報堂「生活者のサステイナブル購買行動調査2021」レポート/博報堂/2021年8月27日

本調査から、環境・社会に良い影響を及ぼす商品に対する購入意向が高いことが分かったのです。
一方で、そのような商品の現在の購買実態は、購買意向に比べて低いことも分かっています。
つまり、ソーシャルグッドな商品を購入したいとは思っているものの、行動に繋がっていない人が多いのです。
では、その理由は何なのか。

私は以下の2点が原因ではないかと考えています。
①ソーシャルグッドな商品がまだまだ少ないから
②消費者が良質なソーシャルグッド商品・サービスに対する認知度が低いから

①に関しては、先述の通りソーシャルグッドを取り入れた事業を展開する国内企業が増え始めているので、今後解消されるでしょう。

問題点は②です。
当然、購買に繋げるにはソーシャルグッドを取り入れているだけでは不十分で、機能性等のスペックも重要になります。
そのような商品・サービスを幾つか挙げろと言われても、すぐに頭に浮かぶ人は少ないのではないでしょうか?
もし、機能性も申し分のない良質なソーシャルグッド商品・サービスが増えて、それに対する人々の認知度が上がれば購買行動に繋がるでしょう。

実際に、私は先日、マネージャーにTOMSというブランドの靴をおススメされ、気に入って購入しました。
TOMSは、靴が1足売れたら、発展途上国の恵まれない人々に靴が1足寄付されるソーシャルグッドな取り組みを行っています。
デザインも非常に洗練されており、機能性も素晴らしい靴です。
機能性やデザイン性も優れたソーシャルグッドな靴の存在を知れば、購買に繋がるんだなと実感しました。

では、この先沢山の人のソーシャルグッドな商品・サービスに対する認知度は向上するのでしょうか?
電通と電通総研が共同で実施した「ソーシャルグッド意識調査」によると、
「SNSを週1回以上投稿する人」はソーシャルグッド意識が高いという結果を報告しています。

本調査は、2020年に日本・イギリス・アメリカ・中国・インドの5か国において、ソーシャルメディアの利用者を対象にソーシャルグッド意識を調査したものです。

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出典: 「『ソーシャルグッド』と『ソーシャルメディア』のいい関係」/電通法/2021年3月10日

本調査より、ソーシャルグッドの考え方や商品・サービスが日本で浸透するに伴い、SNS投稿者のソーシャルグッドに関する投稿も増えていくと考えられます。

今後もSNSユーザーが増加していくことを踏まえると、それに伴って人々のソーシャルグッド意識や商品・サービス認知度も当然向上していくと考えられます。
よって、ソーシャルグッドは今後、日本の消費者にも浸透していくでしょう。

では、実際にソーシャルグッドを取り入れた事業事例はどのようなものがあるのでしょうか。
次章より、実際の事業事例をご紹介させていただきます。

4. ソーシャルグッドを取り入れた海外の事業事例

先述の通り、ソーシャルグッドは海外では広く浸透しています。
ここでは、ソーシャルグッドな取り組みを行っている海外の事業例をご紹介します。

《Airbnb》
大手民泊プラットフォームであるAirbnbはソーシャルグッドな取り組みを行っています。
Airbnbは2012年、「Open Homes Program」という取り組みを開始しました。
これは、難民や被害者など、安定した住居を得られない人々に対して、緊急避難先や一時滞在先として住居を無償で提供するというものです。
またそれに付随して、ホストが得る収益の一部をNPOに寄付出来る「Airbnb Donations」を発表。
これによって、ホストはAirbnbで得られた収益から毎回自動的に何%を寄付するかを設定するだけで、NPOに寄付することが出来るようになったのです。

そして、その寄付金が何に役立てられているかの通知を受け取ることも出来ます。
そのため、寄付するハードルが低く、社会貢献の実感が得られることにより寄付を促進する仕組みとなっているのです。

このように、海外では既にソーシャルグッドな取り組みが行われているのです。
とは言え、国内でもソーシャルグッドを取り入れた事例は存在します。
次章よりご紹介しましょう。

5. ソーシャルグッドを取り入れた国内の事業事例

ここでは、ソーシャルグッドな取り組みを行っている国内の事業例をご紹介します。

《株式会社良品計画》
無印良品の商品開発や販売を手掛ける株式会社良品計画がその例です。
(株)良品計画は、2018年2月に地域活性化へ向けた新規事業を展開をするソーシャルグッド事業部を立ち上げました。
そしてソーシャルグッド事業部は、千葉県鴨川市に「里のMUJI みんなみの里」を2018年4月にオープンさせました。
「里のMUJI みんなみの里」では、無印商品の販売に加え、地元の農産物直販所を併設し、地域の魅力を紹介。
訪れるお客様と地元住民や生産者との繋がりの場として地域活性化に貢献しているのです。

ところで、ソーシャルグッドを取り入れたモビリティ事業はないのかという疑問を抱かれている方も多いのではないでしょうか?

実は、モビリティ業界でもソーシャルグッドは浸透し始めているのです。
次章にて、ソーシャルグッドを取り入れたモビリティ事業例をご紹介しましょう。

6. ソーシャルグッドを取り入れたモビリティの事業例

ここまで、ソーシャルグッドな取り組みを行っている事例を2つほどご紹介してきましたが、実はモビリティ業界にも既に浸透し始めています。
ここで、ソーシャルグッドを取り入れたモビリティ事業の例を挙げさせていただきます。

《Miles Japan》
Milesとは、移動距離に応じて商品や割引券がもらえるアプリです。
2016年にアメリカでローンチし、2021年1月に日本法人Miles Japanが設立されました。
今年中に日本でもローンチされる予定です。

Milesの仕組みは至ってにシンプルです。
スマホにMilesのアプリをダウンロードしておけば、ユーザーの移動手段をAIが自動で判別し提案してくれるというものです。

そして、各々の移動手段の移動距離に応じてマイルが付与され、移動するだけで勝手にマイルが溜まっていくのです。
そのマイルは、映画館やレンタカーの割引チケットやネット通販でのギフトカードへの交換が可能となります。

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※ Miles Japan株式会社 HP 参照

さて、ここで浮かび上がる疑問としては、Milesとソーシャルグッドとの間に、どのような繋がりがあるのかという点です。

その答えは、"ユーザーが環境に優しい移動手段を使用すると、より多くのマイルが付与される"という点です。
つまり、ユーザーの移動手段を、より環境に優しい方向へ促すのです。
それに加えて、Milesは自分の環境への貢献度をマイルという形で可視化されるのです。

ここから、Milesユーザーは人々のソーシャルグッドへの意識が高まるにつれて、増えていくと言えるでしょう。

7. ソーシャルグッドが秘める、今後のモビリティビジネスの展望

先述の通り、私は今後Milesは国内でも普及していくと予想しています。

ところで、ここ数年の日本では、カーシェアリングやオンデマンド交通などのモビリティサービスがローンチし始めていますね。
これらのサービスは、消費者の交通における"利便性"が行動変容のトリガーとなっています。

つまり、人々の"より効率的に移動したい"という利便性のニーズに合致していることから、サービスの革新が進んでいるというわけです。
しかし、今後モビリティにおける人々の行動変容のトリガーとなるのは、果たして"利便性"だけでしょうか?

私は、モビリティにおいてもソーシャルグッドは大きな可能性を秘めていると睨んでいます。
そもそもソーシャルグッドな取り組みは、消費者の"社会貢献"というニーズに合致するものです。

そうすると、人々の"社会貢献"というニーズに刺さるソーシャルグッドが取り入れられたモビリティ事業が誕生すれば、いかがでしょうか?
大きな成長を遂げるということは、想像に難しくないでしょう。
つまり、ソーシャルグッドこそが次世代モビリティビジネスを彩るのです。

8. まとめ

いかがだったでしょうか?
今回はソーシャルグッドについてお話しさせて頂きました。

ソーシャルグッドという考え方は、世界では既に広く浸透しています。
そして、今後国内でも広く浸透していくことが予想されています。
そうなると、消費者の行動変容のトリガーは"利便性"という切り口だけでなく、ソーシャルグッドがもたらす"社会貢献"という切り口でも様々なサービスが展開されることになります。

そして、それは当然モビリティ業界も例外ではありません。
今後、モビリティ業界にもソーシャルグッドの波がやってくるでしょう。
この波に乗り遅れないことがビジネスを成功させるうえで非常に重要なのです。

これを機に、ソーシャルグッドの観点で今後の経営方針を検討されてみてはいかがでしょうか。
本記事が少しでも読者の皆様のお役に立てば幸いです。
以上、最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

<参考>
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<作成者プロフィール>
株式会社リブ・コンサルティング
コンサルタント
髙倉 秀介

同志社大学文化情報学部卒業。
大学在学中、データサイエンスを専攻し、研究に従事。
学会発表にて、優秀賞を受賞。
大学卒業後、2021年リブ・コンサルティングに入社。
入社後は、医療メーカー、建設業界、モビリティ業界にてコンサルティングに従事し活動中。

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