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autumn autumn postman





壁に並んだアブストラクトなんて嫌いだと
君は言い放ち笑い


黒板のチョークが叩き出した規則的な音と共に

1+1がきれいに2になる様子を見て
これ以上に美しいものはないのだと
うっとりする


不確定なものじゃなくて
目に見えないものじゃなくて

例えば法
例えば書面
例えば、言葉

違う、それら一切を無くしたとしても残るもので


わたしたちは
愛をなんらかのかたちにして
示し続けなければ
生きている意味などないのだから、
と言って
唇をしずかに結んだ


「このところずっと
伏し目がちな彼に伝えてよ」


カーテンが風に揺れたといっても9月

君の話がそう簡単にあの街まで届くとも思えないのだけど

過去の気まぐれが
ほんとうの果実として実るのも9月

秋が完全に深まってしまう前になら、或いは、

それを信じてみる価値もあるのかもしれない


僕の役割はあくまで伝達、それだけだ

引き受けたのはそれが僕の生きる意味と直結しているから、
それだけだ



けれどさ、9月
否応なしに、知っているよ


気持ちを伝えることで変わるものが
この世にはいくつもあるってこと


だからさ、今だけは
色をつけてゆく君らの未来を
少しだけ祝わせてよ








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