稲葉振一郎×竹下昌志×吉川浩満対談イベント関連資料

先日、8/15に本屋B&Bさんにて、稲葉振一郎×竹下昌志×吉川浩満対談イベントを実施した。

9/16までアーカイブ配信してるので、ご関心があればぜひ。

ここでは、当日使用したスライドを公開したことの報告と、当日に私が言及した文献を紹介する。

まず使用したスライドはSpeakerDeckにて公開した。

なお、稲葉さんのスライド内容は以下から見れる。


次に、覚えてる限りで、当日私が言及した動物倫理関連の文献は以下の通りである。簡単な紹介もつけた。


Johannsen, K. (2020). Wild animal ethics: The moral and political problem of wild animal suffering. Routledge.

稲葉さんが「野生動物の家畜化」で言及していた(と思われる)本。「家畜化」というと人間の飼育下に置くことを想起されるかもしれないが、議論としては、CRISPRなどの遺伝子編集技術と遺伝子ドライブによって、野生動物が苦しみを感じなくなるようにしたり、r戦略(多産多死:昆虫など)からK戦略(少産少死:哺乳類など)に生活戦略を変更させたりすることを提案してる。もちろん、その背景には、r戦略の野生動物の生涯福祉が正味でマイナスだという仮定がある。もちろん本書ではそれを単なる仮定ではなく議論によって擁護している。

Browning, H., & Veit, W. (2023). Positive wild animal welfare. Biology & Philosophy, 38(2), 14.

既存の議論は野生動物福祉は正味でマイナスになると議論しているが、それに対して正の可能性があることを指摘。オープンアクセス。

Fischer, B. (2020). In defense of neural disenhancement to promote animal welfare. Neuroethics and Nonhuman Animals, 135-150.

動物福祉の改善のために、非ヒト動物のディスエンハンスメント(能力を低下させること)によって福祉改善することが場合によって許容されることを議論。

Müller, N. D. (2022). Kantianism for Animals: A radical Kantian animal ethic. Springer Nature.

典型的なカント的議論では、非ヒト動物は理性的主体ではないので、道徳的配慮の対象外であった。それに対してMüllerは、カントの議論の些末な不整合性を修正するだけで、ヒトと非ヒト動物の両方に対する同じ種類の義務(徳の義務)が要求されると議論する。オープンアクセス。
本書の書評を日本語で書いてるので、ご関心があればぜひ。

スナウラ・テイラー (2020, 原著2017)『荷を引く獣たち――動物の解放と障害者の解放』今津有梨訳. 洛北出版

近年の批判的障害学をベースに、著者自身も当事者として活動する中で、障害者差別と種差別の関連を明らかにしようとする本。

ローリー・グルーエン (2015, 原著2011)『動物倫理入門』河島基弘訳. 大月書店(原著は第二版が2021年に出版)

エコフェミニスト、ケアの倫理の研究者として動物倫理研究を牽引する著者による動物倫理の入門書。日本ではあまり読まれてない気がするが、読みやすさと内容の充実さのバランスがよく、動物倫理の入門書として優れていると思う。原著第二版の翻訳もされてほしい。

田上孝一(2021)『はじめての動物倫理学』集英社

手軽に読める新書サイズの動物倫理入門書。稲葉さんと田上さんの過去の対談も参照。


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