新しい家族の形?

しばしばLGBTQの話題の、比較的理解しやすいものとして、同性婚が取り上げられるが、どうも理解が浅いなと感じるケースが多い。家族、家庭、家…。婚姻関係だけでなく、それに付随する家族の在り方を問うのは、切り口としては結構なことだが、前提をどこに置いているか、本当にLGBTQに寄り添っているのか、読み解かねばならない時がある。

以下、ある新聞記事を読んでの感想。

日本の家制度は信仰のレベルだということをまず我々は認識せねばならない。

大半の日本人は自分のことを無宗教だと信じていることだろうけど、そんなことはない。何かの宗教に帰依していない限り、日本語を話していれば一人残らず「日本教」の信者だ。

「日本教」は取り立ててドグマ(教義)や教典がない古代宗教であり、日常の所作に浸透しているため、それと認識している人は少ないと思うが、信者は全人類の2%程度はいる。

古代宗教であるため、他の宗教に帰依していたとしても背信等には当たらない。クリスマスをチキンで楽しみ、お正月には初詣でおみくじを引き、お盆には墓前で線香を焚いても大丈夫。これら所作は「日本教」の目的の前では単なるツールだから。

で、この「日本教」の数ある教えの一つに家制度がある。祖霊を祀る「家督」を相続し、弥栄を祈る。このベクトルを千代に八千代に続けるのが家制度の根幹で、家族像も所詮このレール上にある。

まずここを踏まえてほしい。

その上で、現在日本の世帯の中で多いのは弥栄を実現した大家族や複合家族でもなければ、現代的な核家族でもない。一人暮らし世帯だということも知っておきたい。そのせいで家督、つまり祖霊の祭祀の継承、継続が困難なケースが増えている。よしんば相続できたとして、相続税や親族トラブルが重すぎて「お家断絶」となるケースも多い。LGBTQは関係ない。

さらに、家族の基本単位を「夫婦」としている民法もある。婚姻は「両性の合意のみ」で成立するとしている憲法は、それまで家柄や親族の合意等で結婚相手を決められていたものを、当事者の合意だけにして日本社会の封建的要素を排除しようとしたものであり、男女間以外の結婚は想定していない(解釈に頼るなら9条解釈改憲も容認していることになるのでご注意を)。これも家族を形成する上でのハードルになっている。日本民法のお手本となったフランスでは、今や家族の基本単位は夫婦ではなく、母子である。人は一人残らず母から生まれる。これから試験管ベビーが増えるかもしれないが…。

そして少子化問題。戦後、国民が経済的利潤ばかり追求し、バブル期の一子豪華主義から、一転バブル崩壊後、特に構造改革後の「効率化」の風潮の中で結婚や出産のリスク回避が進んだ。それだけでなく、発ガン性物質の蔓延や不妊の増加を「やればできる」等という完全なセクハラ発言で茶化して黙殺してきたツケが少子化だろう。

結婚しなければ家族にならず、子供が何とかできたとしても、諸々のトラブルで家督相続が容易でない。現代日本では家制度の維持自体、がんじがらめで無理ゲーなのである。

だから前提を変えるべきなのだ。

家柄やそれを維持できる財力や資産があれば「家督相続法人」となって家制度維持に尽力したらいい。定款に相当する家法を提出し、相続に際しては国が多少の補助金でも出せばいい。国の信仰心を満たしてくれてるんだから、相続税を取るなんてもってのほかだ。

けれど無理なのであれば、「家計共同法人」を形成し、形が新しくても古くても家族を作ったらいい。この法人に血縁は基本不要だ。年齢も性別も基本関係ない。ただ母子は何としても保護されなければならない。本当の親子であっても殺し合うことはある。そこは回避できるようにしたい。勿論一人暮らし世帯もこちらに含まれる。

性の秩序を前提にし、なおかつ信仰心を無視して、「新しい家族の形」は見えてこない。ゼロベースで思い直してほしい。

そんな中で「LGBTQを認めたら国が滅びる」なんてトンチンカンなことを言っている輩の信仰心って、とんでもなく強いよな…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?