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流れ星を拾ったら⑧

テルさんに促されてベンチに座ったものの、僕はしばし呆然としていた。ここにいるみんなが宇宙人でしかも罪人。それだけでも驚く話だ。さらにここは、猫専用のマンションを装った宇宙人の監獄。しかも僕は、身内の誰かの罪を身代わりに背負うだなんて。

これは、信じていい話なのか。

見回してみてもだれも宇宙人っぽくはない。そうだ、人間に寄生して魂と融合するって言っていたな。見た目は人間そのものなのか。そんなSF小説もあったような気がする。

考え込んでいると、風が吹いてふわりと、紅茶のいい香りがした。

「さぁさぁ、お茶の時間よ」

乳母車のようなティートローリーを押して現れたのは銀髪のミコさんだ。明るいオレンジ色のワンピースに紫色の靴。銀髪のお団子ヘアのおばあちゃん。後ろから黒猫のアルタイルが優雅に歩いてきた。

僕らはティーカップに紅茶を注いでもらって、アフタヌーンティーを楽しむことになった。

こんな優雅な時間を過ごすなんて。ここは本当に監獄?僕の顔を見て、銀髪のミコさんはにっこり笑って取り皿にショートブレッドを乗せてくれた。丸メガネの奥の目がとてもかわいい。

「私たちは、世の中の誘惑から心身を守る技術を身に着けるために服役しているのよ。」

ショートブレッドはサクッとしてほろっと崩れて口の中いっぱいにバターの香りが広がった。監獄で味わえる食べ物とはとても思えない。

「私のショートブレッドは絶品でしょ。私はお菓子作りで心身を整える技術を磨いているの。自らの手で粉をふるうなんて、地球でしか味わえない贅沢よね。」

若いテルさんは小さなサンドイッチに手を伸ばし、「美味い」と言って一口で食べてしまった。そしてにこやかに語り始めた。

「僕は手かざし速読防止用のシールドの作成をしている。二度と同じ過ちを犯す人がいないようにと願ってね。もうすぐ完成しそうなんだ。カズさんは手かざし速読をしても作者の思想や信条をガードする技術の開発をしている。僕らは好きなことや得意なことで世の中に貢献しながら服役するんだよ。」

そして、若いテルさんはポケットからブレスレットをひとつ取り出して、僕の右手につけてくれた。

「新発売の商品なんだけど、これは手かざし速読力をセーブするブレスレットだよ。あの快感は癖になるからね、これをプレゼントするよ。」

そういえば、オリエンテーションの時にカズさんの腕にもブレスレットがあった。中性的な人だと思ったから不思議だと思わなかったけれど。

「じゃあ、僕はどんな服役方法になるんだろう。」

僕が訪ねると、テル爺が立ち上がって空を見上げた。「それは君が自分で考えねばならん。それを導いてくれるのが看守猫というわけじゃ。」

僕はルネを見た。ルネはちょうど、後ろ足で耳を一生懸命搔いているところだった。ルネが僕をみちびいてくれるのか、どうやって?

続く

流れ星を拾ったら① 流れ星は青い卵
流れ星を拾ったら② 引っ越そうと決意
流れ星を拾ったら③ 猫と引っ越し
流れ星を拾ったら④ 猫専用マンションへようこそ
流れ星を拾ったら⑤ 猫の名前はルネ
流れ星を拾ったら⑥ 僕の特技は速読
流れ星を拾ったら⑦ 運命のいたずら
流れ星を拾ったら⑧ 中庭のティーパーティー

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