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編集長の推薦図書「シュードッグ:靴にすべてを。」 #今週のマーケ本

皆さんいかがお過ごしでしょうか。靴磨くマーケターの小東です。

突然ですが「こんなことが人の役に立つのか~」て経験ありませんか?

先日ギタリストをやっている高校時代の友人と再会しました。彼は大手音楽スクールに勤めていて、ギターの講師とスタジオミュージシャンをやって生計を立てています。

そんな彼に、ウェブでビジネスをするには何が必要なのか、そもそも向いているのか。TwitterやYouTubeを活用した場合、どういう行動が必要なのか色々聞かれました。

私は解決課題の特定と、自分の複業におけるソーシャルの活用方法(このnote含め)を提示して上げました。たった1時間の話し合いだったのですがとても喜んでもらえて嬉しかった。

・・・

そんな彼は今年から契約形態を変え、フリーランスとしてギター1本で食っていく覚悟を決めているそうです。私は彼を恥ずかしながら「かっこいいな」と思ってしまいました。

私は「革靴伝道師」としての複業もありますが、まだまだ腹を決めて自分のビジネスができていない。また、そもそも本業もかなり好きなので両立させて活動できないか、もがいています。

そんななか読んでいたのが、世界最大のスポーツブランドのひとつナイキ創始者であるフィル・ナイトの著書「シュードッグ」です。

24歳で創業した彼の苦悩と成長の20年間に密着します。


■本の要点

本の趣旨を私なりにまとめると、こうなります。

・1962~1980年の約20年間、フィル・ナイトがナイキの前身であるブルーリボン社からナイキ社を興して上場させるまでの回顧録 

・アディダスやプーマといったビッグブランドが存在するなかで会社を興すという著者の生き様から、生きるとは、ビジネスとは、挑戦するとは何か、経営者の苦悩と成功を追体験できる

この本からは起業やベンチャースピリットが学べますが、ポイントを経営やマーケティングにフォーカスします。


■ポイント①:事業に合った人材を確実に集める

フィル・ナイト自身も元ランナーで、スポーツが大好き。

名門のオレゴン大学を卒業し公認会計士の資格を持つものの、彼は大学時代に経営の授業課題でプレゼンした「日本国内の靴をアメリカ市場で売る」という事業アイディアを捨てられませんでした。

そこで大学時代に交流のあった、アスリートの育成や人体のスペシャリストであるバウワーマンや同じくランナーで走りが好きなジョンソンなど、まず地元で仲間集めをして事業をスタートさせます。

もちろん本書に書かれていない細かい失敗はあったかもしれませんが、初期メンバーの靴の開発や販売に対する熱量が高く、経営者のフィル・ナイトにとって経営的にも精神的にも相当助けられていると分かります。


■ポイント②:プロダクト改善へのあくなき探求

上記のバウワーマンは共同経営者ですが、日本の靴会社オニツカから製造してもらうスポーツシューズに対して、アメリカ人に合った独自の改良を提案します。

何度も打診しても無視される。それでもメールし続けます。

気落ちすることのないバウワーマンは、自分が指導するランナーの成績とシューズの性能を記録しつづけ、その詳細なデータを粘り強くオニツカに共有し続けます。

結果、甲や土踏まず、アキレス腱への負荷が減ったアメリカ人向けの高品質なシューズを開発できたのです。

その他にも、自分で素材を合成してポリウレタンを開発したりなど(言葉は悪いけど異常w)、ランナーや一般人の足の健康のために、彼は奔走します。


■ポイント③:ヒト・モノ・カネ、重大事項を即断

フィル・ナイトは色白で細身で、弱弱しい、みたいな記述が本書前半に書いていました。

しかし、その熱量の高さと決断力、思いっきりの良さは相当にパワフルです。

下記はオニツカの担当者「キタミ」に対して、架空のオフィスの存在をでっち上げて何とか契約更新をもぎ取った場面。

オニツカはアメリカでの流通業者として、ブルーリボンより大手で一流で、大量の仕事をこなせる企業を望んでいた。しかも東海岸にオフィスがある会社だ。

「ですが」と私は慌てて言った。「ブルーリボンは東海岸にオフィスがあります。」

(中略)

私は努めて冷静に書類にサインして、5000足を追加注文した。しめて2万ドルだが、私は持っていなかった。キタミは東海岸のオフィス宛てにシューズを送ると言ったが、そのオフィスもまだ用意できていない。

読んでてハラハラしますよね?

それ以外にも、キャッシュフローを改善し銀行の融資を引くために「フューチャーズ・プログラム」という前払い制度(販売店はその分割引を受ける)を設けて必死に売り込んだり、

通貨の変動、人件費の高騰、政情不安のなか、日本や台湾、韓国、そして中国をまわり、現地のスタッフを観察して確実に生産数を積み上げたり(時に銀行からリスクを取り過ぎと怒られながら)。


■まとめ

この本はビジネス書ではないので、簡単にまとめるのが難しいですが、私なりに解釈するとこんな感じです。

・経営者は一本筋を通して事業に向き合い、仲間を奮い立たせて、生産数と売上を確実に伸ばすことに全力を出せ 

・そのための競合企業との戦い、国を超えた裁判、ビジネスパートナーの突然死など、困難に立ち向かう覚悟が必要である 

・ビジネスとは儲けること以上に、自社の商品サービスによって、誰のどんな幸せを向上させられたかに身をささげることだと認識しろ

実に「滾る(たぎる)」本でした。25歳の自分も、背筋が伸びる気分で感動しながら読みました。

・・・

今週の靴磨きはRENDOのプレーントゥです。

直近2週間でだいぶダメージを負いました。鏡面は剥げて、ヒビ割れしていて最悪です。これからじっくり手入れしたいと思います。


■ゆるく、ランチ・お茶できれば


■私が過去に書いたnote



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