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入社1年目で知りたかった、市場価値が高まるBtoBマーケターのスキルとマインドセット5選

こんにちは、小東(@gxsoc_kohigashi)です。突然ですが、皆さんは「良いマーケティング担当者」をどのように定義するでしょうか。私は「組織内外を見渡し、行動によって売上を生み出す人」を良いマーケターだと思っています。市場と向き合いながら社内のリソースを上手く調達し、理論と実践知を駆使して実際に成果を出す。言うは易く行うは難し。私自身、理想の姿からはまだまだほど遠いです。

そんな私ですが、現職ではいち事業部のマーケティング責任者を約2年間務め、苦しくも楽しい経験を積ませてもらいました。「20代のうちにPL責任を持つマーケターになり、結果を残す」と息まいていた私が希望どおりの役職につかせてもらい、事業づくりに向き合い、チームを巻き込み、コロナ禍でも右肩上がりで粗利を積み、予算達成できたことは本当に有難い機会でした。

新卒入社当時は何も持たなかった私ですが、なんとか腕を磨き、現職の経験や実績を社外の方々から評価いただく機会に恵まれました。環境に支えられながら、自ら考えて努力してきた結果だと思います。今回はタイトルどおり、「新卒1年目に教わりたかった!!」と強く思うBtoBマーケターのスキルやマインドセットについて、独断と偏見で語ります。

「これだけやれば、市場価値や年収向上は間違いなし!」とは言いませんが、この技術や視点を抜きに成果を出せて、市場から評価されるBtoBマーケターはこの世にいないと思います。


①自社商材をユニークかつ、思い出してもらいやすいポジションに置く

「多くの人がマーケティングとは商品の戦いであると考えている。(中略)ベストの商品などありっこないのだ。マーケティングの世界に存在するのは、ただ、顧客や見込客の心の中にある知覚だけである。知覚こそ現実であり、その他のものはすべて幻である。」(アル・ライズ、ジャック・トラウト『売れるもマーケ、当たるもマーケ』)

Perception is everything. これは過去のマーケティング業務を振り返っても、揺るぎない本質でした。

ここで少し、昔話を。私がSNSマーケティング支援の業界に入ったのは2015年。当時はInstagramが日本で使われ始めたばかりで、月間アクティブ利用者数は2022年現在の約1/5。市況としてはSNSの広告運用に特化している企業やアカウント運用の効率を上げるツールのみを提供する企業がいるなかで、弊社はずっと運用代行・コンサルティングに振り切った支援会社でした。

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▲インターン生時代から7年以上関わった「ソーシャルメディアラボ」

国内企業のSNS活用を活発化させるにはまずは需要喚起から。金山のふもとでツルハシを売る商人のごとく、自社オウンドメディアでSNSマーケティングの基本情報や国内外の事例、先進企業へのインタビュー記事コンテンツを当時は月10~15本、積極的に発信して読者(潜在顧客)を集めていました。

「SNSマーケティング」という大口なテーマとはいえ、当時敵はほとんどおらず。結果として、「SNSマーケティングといえば、ガイアックス(弊社)」などと、困りごとがあれば真っ先に声をかけていただける認知が築けていました。

しかし3年もすると、SNSのコンサルティング支援を取り入れる競合企業が増え、似たようなオウンドメディアも現れました。マーケティングの都合上、記事本数を以前ほど供給できなくなった弊社はマーケティングコンセプトの見直しを強いられました。

「市場や顧客から見てどう思われているのか?」 常にこの視点に立ち、入力フォームやお客様アンケート、記事やウェビナーからの反響をもとに自社のポジショニングを整理することは極めて大切でした。

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▲定番のウェビナーを5種類ほど用意して回していた

「SNSの運用代行やコンサルティングは正直誰でもできるし、違いがなかなか伝わりづらい。しかし顧客の会社組織の意思決定を支える効果検証や、企業統治まで一貫して担える支援会社は少ない」という強みにフォーカスしました。

実際にデータ分析や内製化支援まで踏み込める支援の深さは企業の担当者に刺さりました。私は炎上対策を主目的とする商材の販促を起案し、記事やウェビナーコンテンツを仕込み、毎月数本の新規発注を頂けるほど「大当たり」させることができました。

誰の、どんな課題を解決したいのか。自分たちの強みをどう打ち出せば競合企業(ブランド)と埋もれず、相手に覚えてもらえるのか。この本質と向き合えるのがマーケティング担当の腕の見せ所だと思います。


②スペックやケイパビリティの追求だけでなく、顧客が抱える本質的な課題を解決する

「顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この「進歩」のことを、顧客が片付けるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。」
「あなたが売るのはプログレス(進歩)であって、プロダクトではない。顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片付けるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければならない。」(クレイトン・M・クリステンセン『ジョブ理論』)

自社のサービスが誰の何に役立つから買ってもらえるのか。より買ってもらうには、どんな位置付けであるべきなのか。私はマーケティング担当者として何度も考えました。

恥ずかしいことに入社当初の私は、SEOやメールマーケティングなど個別施策の改善に目がいきがちでした。組織のパフォーマンスを高める上で重要な過程でしたが、単発の施策改善だけでは頭打ちがすぐに見えてきました。前述どおり競合企業の数も増えており、「コンサルティング」という無形商材のなかで独自性を出すのに苦労していた時でもありました。

「潜在顧客の接点は十分取れていたが、思うように商談まで転換しない……」
「既存の面ではもうダメなのか? オンラインの次は手紙施策か? ドブ板営業か?」
「間口の問題ではなく、サービス自体に限界がきているのか?」

困っていた時に、営業のメンバーから面白い提案が。「インサイドセールスが商談前に集めたデータをもとに、初回商談から積極的に『疑似提案』するのはどうか?」というものでした。

一見すると提案工数がかさむため、従来の案件数が対応できなくなりハイリスク。しかし、知見の深さや伴走力を売りにする私たちにとって、初速がついて競合他社を出し抜けるかもしれない。試しにやってみることにすると、これがたくさんの学びをもたらしました。

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▲内勤営業には顧客のBANT情報以外に、定性情報もメモしてもらっていた

まず顧客は、私たちのケイパビリティや実績と同じくらい、ビジネスパートナーとしての協働しやすさを求めている点に気づけました。初回から提案を持っていくたびに「こんなに情報が整理され、実践的な話まで聞けるなんて思ってなかった」という声をいただけました。

次に、初回商談で提案しておくことにより、先方担当者が社内メンバーへ説明する手間が減って、信頼度を先んじて高めておけました。BtoBビジネスでは現場担当と意思決定者が異なったり複数いたりすることが多く、これは非常にアドバンテージでした。

「担当者はマーケティングの改善提案を社内で行う時に、孤独な意思決定や周囲への説得作業を助けて欲しがっていたのか……!」 

原稿作成が早いとか、バズるコンテンツが作れることよりも、はるかに本質的な悩みがあるのだと気付けたのです。

こうした発見から組織体制を組み直し、初回営業後のお客様をマーケティング部が主催する無料のウェビナーや個別の相談会にお繋ぎし、お客様の上司やチームメンバーを呼んでもらって、弊社コンサルタントとディスカッションできる場を提供。結果的にこうした施策が奏功し、年間の受注率を5%以上アップさせられました。


③会社の資産を自分なりに定義し、ヒトやノウハウを最大限活用する

「組織を構成する最小単位である『人間の本質』とは何か?(中略)人間の本質は 『自己保存』だと考えています。自己保存とは、自分の生存確率を最優先することです。」
「一般的に人間の行動パターンの原点は『個人>組織』であるという理解は大切です。全ての個人がそれぞれ取れるリスクの範囲において、『自己保存』と『組織の利益』の間でバランスを取っている」(森岡毅『マーケティングとは「組織革命」である。』)

IT、Webマーケティング業界にはさまざまな支援領域や職種があり、キャリアを積んでいく上で選択が強いられます。例えば、自分の好きな専門性をひたすら伸ばしたり、ビジネスパーソンとして事業責任を負って出世したり。

ただいずれの道にせよ、自社や支援先の資産をきっちり把握し、成果を出すために活用できる推進力は大きな強みになります。組織内の人員を動かす能力も、広義では立派なマーケティングスキルです。

さかのぼること大学3年生の夏。私はWebメディアのライターとして、キャリアを始めました。正社員になってからは、メディアの編集業務からリード獲得業務全般。法人マーケティング全般から事業部のPL管理と、業務のレイヤーを毎年少しずつ上げていきました。

「営業やマーケティング部門だけでなく、サービスを提供しているコンサルタント部門、エンジニアや経理などバックオフィスのメンバー。もっと視野を広げて皆と関わり、部署運営に協力してもらいなさい。」

コンテンツマーケティングの専任から、部署の売上管理全般を任された入社4年目のある日、事業部長である上司にこう言われました。当時の私は、この意図をすぐに掴めなかったのですが、今なら分かります。

上司は、マーケティング担当として市場や顧客と日々向き合っているなら、自社の強みを発揮できるようにリソースを手配して成果を出そう。従来行っていた私個人の業務に追われて部分最適化ばかりを目指すんじゃない、と指摘していたはずです。

正直これらはマーケターのスキルセットとして語られることは少なく、各社で暗黙知化されているのかもしれません。それでも仕事をする上で、単なる作業者に留まるか、事業をけん引するリーダーになれるかを分ける重要な視点だと思います。

私の場合は自分の四半期評価の項目のなかに、「組織の売上(定量目標)」と一緒に、「多くの部署メンバーを巻き込み、協業すること(定性目標)」を追加しました(*私の会社では評価項目を自分で設定する必要があった)。いわゆる「縦割り組織」化していた私の部署では珍しい役割でした。また、前例のない分、その仕事はいっそう大変でした。

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▲事業部長への説明と、プロジェクト部屋を行き来する日々だった

例えば私はマーケティング業務の一環で、自社サイト経由のお問い合わせ数を増やすためにコンサルタント部門から人員を当ててもらい、集客用コンテンツの研究や発信、イベント登壇を行う部隊を立ち上げました。

ただ、コンサルタントとしては担当するクライアント様の満足度を高めて、発注金額を増やすことが主な職務ですので、「余計な仕事」が声の大きいマーケティング担当から降ってきたわけです(苦笑)。当然、いきなり快く引き受けてくれる人は多くありません。

そこで事業部長と話す時には、直近の問い合わせ数、粗利や営利の予実差異をもとに会話を行い、そのプロジェクトが事業のどれくらい役に立つかを説明しました。また、コンサルタント部門のマネージャと話す時には、同部隊によって社内の学習が促され、情報共有や勉強コストが下がり、全体の効率が上がるとも力説していました。

また極めつけは、各コンサルメンバーと話す時です。「このイベントに出れば外部に名前を宣伝でき、将来は名指しで仕事をもらえるかもしれない」「案件で学んだ知識を外に発信できる最も効率的な学習機会である」と、やりがいを持ってもらえる言い方に努めました。一方的な依頼はほとんどしたことがありません。

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▲「人に任せる前に自分もやらねば」と、最低3か月に1度は登壇していた

なぜこんなことを大切に思って、精を出していたのか。それは無形商材を販売するマーケティング担当として、コンサルタントのノウハウや経験こそ独自性を生む原資であり、サービスの質でも集客の面でも競争優位になると確信していたからです。

成果のためなら一見突飛な企画でも周囲を説得して押し通すべきで、多少面倒くさがられても人員を巻き込むべきです。私の在籍する営業マーケティング部門の人員は4人でしたが、年間500社以上の問い合わせを呼び込むことができたのはこうした施策のためでした。


④現場と経営の間に立ち自社課題を特定する。起案と実行に責任を持つ

「組織が大きくなっていくと、「知力」「筋力」に加えて、大きくなった図体を適切かつ機敏に動かすため、組織分業を全体最適化させる的確な情報の流れをつくり、部署ごとの自律性が機能する「神経系統」の発達が必要。」
「経営目線での企画、管理、そして判断義務だけでなく、必要に応じて自らその課題の推進を行うことさえ求められます。これらについて、指示を受けて動くだけではなく、自らの意思で自律的に考え、トップ目線の課題を担うことができるのが企業における「参謀」の役割です。」(稲田将人『戦略参謀の仕事:プロフェッショナル人材になる79のアドバイス』)

社内の人員を適切に動かす上で、マーケティング担当として心がけていたことがあります。それは経営者や事業部長の目線で情報を整備し、発信していくことです。

私は事業部のマーケティング責任者になってから、いわゆる「管理会計」業務を担当しました。管理会計とは自社の売上や利益を確保するために、社内向けの指標を作りながら改善を行う仕事です。私の場合は自ら作成したPLを見ながら毎月、各クォーター、予算の進捗を追い、リード件数や商談率の指標を見ながら各メンバーにアクションを促していました。

具体的には、将来の売上金額に紐づく商談数や提案数の向上を外勤営業と議論したり、受注増に供給が追い付くようコンサルタントのマネージャや事業部長へ人員の採用を相談したり、部署メンバーの士気を上げるために経理担当と一緒に売上や粗利の伝え方を工夫したり。

コンテンツマーケティングやCRMを専任していた時も楽しかったのですが、そうした過去の現場経験や市況観をもとに、事業部のリソースをより大きく動かせるこの仕事は大変スリリングで、やりがいがありました。

前述したように「縦割り組織」化が進んでいた私の部署でしたが、この横断的な職務によって部門間の連携が自然と強まりました。少なくとも、それまでタコツボ化して見えなかった課題や悩みごとが「部署横断型のややこしい課題はマーケの小東に投げよう」という状態に。

企業組織の運営を行うマーケターにとって、必要な情報が定期的に流れてきて、必要に応じて人を招集してシステマチックに意思決定ができるのはとても有益でした。

2021年の終わりごろ、翌年2022年のPLを作成した時のことです。それまで、コンサルタントを統括している事業部長、前年度の売上や原価を熟知している経理担当、マーケティング担当の私、この三人で部署のPLを用意していました。前年の成績を基に売上が増えていくシミュレーションを算出し、売上原価や販管費を調整しながら営利を見積もる、一面的なものでした。

しかし2022年のPL会議からは、前述の共有体制や意見交換の文化ができあがっていたので、各チームのステークホルダーに参加してもらい組織内外の未来を踏まえた、非常に奥深く、建設的な議論を行えました。

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▲社内会議でも、必要に応じてスライドを用意していた

具体的には受注したい案件規模の視点や組織体制や能力、投資すべき領域や部署のミッションなど、貴重な情報が発散され、マーケティング担当個人としても視野が広がる素晴らしい機会でした。

「2021年は月額●●万かつ年間売上■■万の大型案件が、2020年の★★件に比べて、▼▼件に増えている」
「大手広告代理店の動きや、事業会社に関する報道から見るとデジタルシフトはもっと進むだろう」
「弊社としては、●●と■■に当てはまる案件は増やしていきたい、が、そのためには★★できる人材が必要になりそうだ」
「案件数は低く見積もると~~まで増えそうだが、人員補強は▼ヶ月に●人はいけるだろう」…

思い返すと、こうしたファシリテーションやコミュニケーション、場づくりのスキルは重要視されることは少なく、目立つこともない。それでも、事業成長を目指すマーケターは身に着けるべき能力ではないかと強く信じています。 


⑤課題の解決策を説明可能にし、聞き手が明日から行動できる粒度で共有する

「良い戦略は、十分な根拠に立脚したしっかりした基本構造を持っており、一貫した行動に直結する。(中略)次の三つの要素から構成される。1-診断(中略)2-基本方針(中略)3-行動」
「医師にとって解決すべき問題は、病気の兆候あるいは症状を示し、既往症を持つ患者そのものである。医師は診断を行い、病名をつける。次に治療法を決める。これは基本方針に相当する。そして、治療法に基づいて食餌療法、投薬など一連の行動を調整し、治療をめざす。」(リチャード・P・ルメルト『良い戦略、悪い戦略』)

「自分としては明確な目標と行動指針を伝えているはずなのに、メンバーがついてきてくれない……」

マネジメントを経験する人にはこうした悩みが頻出するのではないでしょうか。私個人もプレイングマネージャー気質で、同僚に意図が伝わってないことが多くて苦労しました(無論、相手を苦労させました)……!

私の営業マーケティングチームは4名であったとはいえ、経営企画の役割から他部門と折衝することも多く、各種KPIをもとに議論や説明が求められました。

その時、組織の目指す未来を自ら定義・解釈する力と、施策に上手く落とし込む力が役に立ちました。巷では「問題解決力」と言われるでしょうか。最初の頃と比べれば多少改善したと思うので、ケーススタディを紹介します。

2020年の年末にさかのぼります。マーケティング責任者になりたての私の目標は、簡単に言うと「営業活動で新規の粗利額を●●億円積むこと」でした。その時はこの「目標」だけを漠然と見つめており、何を、どう手を付けるのかサッパリ分かっていませんでした。

当時はリード件数や受注件数などの定量情報、営業活動を行った顧客の定性情報がそれぞれ欠けていて事業課題の解像度が低いという問題もありましたが、大本となる課題の仮説や定義が甘く、課題の分解や体系化が当初できていませんでした。これでは自分はもちろん、周囲のメンバーに協力を依頼するのも、納得して仕事してもらうのも難しいはず。

そこで上司に相談しながら、下記のように課題を噛み砕き行動に移せるように工夫しました。

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「営業活動で新規の粗利額を●●億円積むこと」

(単価×受注率×商談件数×年内計上確度 < 粗利●●億円)のパフォーマンス最大化させること

このなかでも改善することで最も影響の特に大きい要素は何か?

・受注率 → 中長期案件の提案コンペに勝てるように、外勤営業(FS)の提案工数を空けられるよう内勤営業(IS)が情報収集や共有の後方支援を行う
・年内計上確度 → 単発案件で毎月■■万が入りやすい、★★商材の開発と販促を行う

具体的には? 

いつまでにAとBとCを行い、●●数と■■率をそれぞれ~~まで向上させる
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このように明確になったおかげで、普段のコミュニケーションが変わりました。

「今月と来月でこの商材を2件受注したいです。だから再来週にウェビナー1件、見込みの商談5件に行ってほしいです!」

「受注率が前年キープのままなら今月は●件達成見込みで、1件足りません。粗利■■万を埋めるために、過去接触顧客への架電やメールをしてもらませんか?」

その意味では、「100億円市場に飛び込め!」や「顧客満足度ファーストなサービスを提供しよう!」といった希望的観測や標語に満ちた、ただ抽象的な「戦略」は、行動を促す力に乏しく、無意味なんだと痛感しました(企業のミッション、ビジョン、バリューを語るうえで文化的・精神的な意義を考えること重要だと思いますが)。

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▲パフォーマンスの共有には数字を用いるよう(偉そうに)注意していた

またどのステークホルダーでも理解可能で、重要性が明らかな共通指標があると極めてコミュニケーションが楽でした。

私の場合は粗利額や売上金額でした。マーケティングや経営企画といった職種は特に抽象度の高い、答えが見つかりづらい課題に取り組む機会も多いはずなので、このような言語化や明確化のセンスも訓練できると良いですね。


最後に

実は社会人5年目がもうすぐ終わるこのタイミングで、株式会社ガイアックスを退職します。今回筆を執った理由は、現職での学びを棚卸しすることで、私のような20代のマーケターにとってキャリアやスキルセットの指針になればと思ったからです。

私は昔から業種へのこだわりほとんど無く、「せめて職種だけは突き詰めたい」と思いながら自分なりに努力してきました。その甲斐あって、複数社から「マーケター」として内定をいただけたのは本当に光栄です。

今思えば、プロマーケターへの道のりは答えの見えない洞窟探検のようでした。法人相手にマーケティングのコンサルを行う業務だったので、それらを販促する自分にとっては理想論と実務を往復する毎日。「先にこれを学んだ方が良かったな」「書籍でいうほど簡単じゃないぞ」とつまづく場面が山ほどありました。基本的にいつも不安でした。

そんな暗闇には松明や蝋燭があると心強いはず。「良いマーケティング担当者」の定義は人それぞれですが、私のように「組織内外を見渡し、行動によって売上を生み出す人」に興味があり、プロとして他社に入社を望まれる人材になりたい人には、できるだけ道標を残したかったのです。

大変な拙文ではあるものの、在籍時に読んだおすすめの書籍とともに、現職での学びを言語化できたと思っています。また私個人としては、これらの知識や経験を武器に次の会社で成果を速やかに出し、業界を盛り上げ、結果的に「ガイアックスの卒業生」として同社を世に広められたらと考えています。

●今回取り上げた、おすすめの参考書籍:

アル・ライズ、ジャック・トラウト『売れるもマーケ、当たるもマーケ』
クレイトン・M・クリステンセン『ジョブ理論』
森岡毅『マーケティングとは「組織革命」である。』
稲田将人『戦略参謀の仕事:プロフェッショナル人材になる79のアドバイス』
リチャード・P・ルメルト『良い戦略、悪い戦略』

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