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こんなときだからお粥を食べよう 前編

執筆/青江覚峰 (浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職)

新型コロナウィルスにより、世の中の様子がいっきに変わりました。いくつかの自治体では非常事態宣言が出され、外出や営業の自粛も広がっています。また、学校の休校やテレワークの導入により、家族全員が終日家の中で過ごすご家庭も少なくないようです。
そんな中、あれができない、これができないとネガティブなことばかり考えても仕方がないと、今だからこその楽しみを見つけようと料理を始めた方も多いという記事を見ました。

さて、この機会にと料理を始めたばかりの方にぜひおすすめしたい料理は、ズバリお粥です。お粥というと、風邪を引いたときや胃腸が弱っているときに食べるものというイメージがあります。わたしからしたら、大変もったいないことです。身体が弱っているときに良いとされているものは、もちろん健やかなときにも良いのです。
お粥の歴史は非常に古く、正確な起源すらわからないと言われています。一節によれば、今から6000年ほど前の中国で、既にお粥が食べられていたともいわれています。お粥と言っても、土器に水と穀類を入れてゆっくりと煮たものだっと思われますが、おそらくお粥の原型と言っていいものだったのではないでしょうか。
日本では、鎌倉時代の僧侶で永平寺を建てた道元禅師による『赴粥飯法』という本のタイトルに、まさゆ「粥」の字が用いられています。

このお粥について興味深いことが書かれた、摩訶僧祇律という仏典があります。
「お粥を食べると10のいいことがありますよ」と記した粥有十利(しゅうゆうじり)です。

具体的には
1 色 体の血や艶が良くなる
2 力 気力が増す
3 寿 長命になる
4 楽 食べすぎにならず体が安楽になる
5 詞清辯 言葉が清くさわやかになる
6 宿食除 前に食べた物が残らず胸やけもしない
7 風除 風邪をひかない
8 飢消 消化よく栄養となって飢えを消す
9 渇消 のどのかわきを止める
10 大小便調適 便通がよくなる

というものです。

さっと読んでみるだけでも、なるほどなと納得できるものがほとんどです。「言葉が清くさわやかになる」あたりはどうなんだろうという気もしますが、心身が健康になれば、出てくる言葉も清らかに明瞭になるということなのかもしれません。

古くから身体に良いとされていたお粥。このような効能があるのなら、具合の悪いときだけでなく、日頃の食卓にも積極的に取り入れていきたいものです。

次回は実際に美味しいお粥をつくるレシピをお送りします。

青江覚峰 (浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職)
1977年東京生まれ。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。ユニット「料理僧三人衆」の一人として講演会「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。

青江覚峰プロフィール1


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