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プレミアリーグ/マネーボール

2019/2020シーズンのプレミアリーグは南野拓実選手が所属しているリヴァプールFCの優勝で幕を閉じました。

映画「マネー・ボール」では、レッドソックスがセイバーメトリクスと呼ばれる統計的手法を用いてMLBで優勝したことが取り上げられています。そのレッドソックスのオーナー企業であるFenway Sports Groupが2010年にリヴァプールFCを買収し、レッドソックスと同じくセイバーメトリクスを用いてプレミアリーグ優勝を目指してきました。そして今シーズン、念願のプレミアリーグ初優勝を果たしました。
今回は今シーズンのプレミアリーグの結果とマネーの関係を見ていきます。結果のデータはプレミアリーグ公式ページ、マネーについてはspotracのデータを利用しました。

順位表

まずは順位表を見てみましょう。

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GF,GA,GDはそれぞれ総得点、総失点、得失点差です。優勝したリヴァプールは失点が最も少ないことが分かります。また、2位のマンチェスターCは得点数が最も多く、1位リヴァプールとの差が17点あります。

クラブ別平均年俸ランキング

次に、クラブ別の総年俸、ポジション別の総年俸、移籍金を示す表を見てみましょう。

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上記表はEST.TOTAL SALARY(総年俸)をACTIVE PLAYERS(選手数)で割ったaverage_salary(選手一人あたりの平均年俸)の降順に並び替えしています。平均年俸の上位はBIG6と呼ばれるクラブが独占しています。

平均年俸と勝ち点

2つの表を見ると、順位表で上のクラブが年俸ランキングでも上位に来ていることが分かります。関係を分かりやすくするため、勝ち点と平均年俸の散布図を描いてみます。

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散布図から判断すると、勝ち点と平均年俸の間に正の相関があるようです。スピアマンの順位相関係数は0.657、p値0.002で、有意水準5%で有意であることが分かりました。お金を持っているクラブが強いという当然の結果となりました。

個人の年俸ランキング

spotracからクラブ、選手名、年俸、ポジションのデータを入手しました。

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annual_salary(年俸)の単位はユーロで、上記の表はリヴァプールの上位5人のデータを示しています。ミルナーはMF登録ですが、サイドバックでも安定したプレーを見せてくれましたね。

上位8クラブの年俸の箱ひげ図を見てみましょう。

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得点王であるヴァーディ擁するレスター、ラグビー選手のような身体を持ったトラオレやエースストライカーのヒメネスを中心にプレミアリーグに旋風を巻き起こしたウルヴァーハンプトン以外は、資金力のあるBIG6が占めています。
1位のリヴァプールと4位チェルシー以外のチームは外れ値、極端に年俸の高い選手がいることが分かります。外れ値の選手はそれぞれ、マンチェスターCではデブルイネとスターリング、マンチェスターUではデヘア、レスターは得点王のヴァーディとキーパーのシュマイケル、トッテナムはハリー・ケイン、ウルヴァーハンプトンはキーパーのルイ・パトリシオ、アーセナルはエジルとなっています。今挙げた8選手のうち、29試合出場のハリー・ケイン、18試合出場のエジル以外は33試合以上出場しており、スター選手の怪我が結果に影響していると考えられます。

最後に、上位8クラブのポジション別(FW、MF、DF)年俸を箱ひげ図で示します。

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箱ひげ図からそれぞれのチームの特徴を掴むことが出来ます。リヴァプールやチェルシーのようなバランス型、中盤に力を入れているマンチェスターC、攻撃重視のマンチェスターU、トッテナム、ウルヴァーパンプトン、アーセナルなど、何となくイメージと合致していて面白い結果となりました。

おわりに

今回はプレミアリーグの結果とお金の関係について見ていきました。今シーズンは年俸の異常に高い選手のいない、ポジションごとにバランスの取れているリヴァプールが優勝しました。来年はどんなタイプのチームがプレミアのタイトルを取るのか楽しみです。

サッカーに統計を応用することの難しさは、Fenway Sports Groupがリヴァプールを買収してプレミア優勝に導くまでに10年かかったことが物語っています。なかなかセイバーメトリクスで結果が出せない中、クロップ監督が就任した頃にデータをスカウト達の主観的な手法の補助として利用し始め、結果が出るようになりました。複雑な要素が絡み合い、数値化されないプレーが多いサッカーだからこそ、様々な手法、指標を用いて更なる検討をする楽しさがあると思っています。

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