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非常時のマネジメント

 コロナウイルス感染拡大の影響で日本のみならず、アメリカの株式市場も混乱しています。この混乱は一過性のものと信じたいですが、この先何が起きるかわかりません。一方、この数十年で大きな経済的混乱と言えば、リーマンショックでしょう。2008年9月に始まり、2009年は経済の落ち込みが激しく、私含め当時のビジネスパーソンは皆しんどい経験をしたのではないでしょうか。当時30代後半で20名ほどのメンバーを預かっていたマネージャーだった私の身に何が起こったのかを、これから書こうと思います。初めにお伝えしておきますが、マネジメントに正解はないと思います。ただ、これを読んで、今後もし経済が落ち込み、ご自身の会社や組織が苦境に立たされたときの心構えとして読んでいただければ幸いです。

平時の成功が非常時に通じない 

 私が初めてマネージャーを経験したのは30歳の時。メンバーと1on1を毎週行いながら、いかにその人らしさを発揮させるかがマネジメントの要点だと信じていました。37歳の時にそれまで不振の事業領域で他のマネージャーが達成させることができなかった領域・チームを立て直し、業績を達成したときは、自分のマネジメント手法は確信になっていました。しかし、リーマンショックで外部環境が大きく変化し、その人らしさをいくら発揮させても業績があがらない状態に陥りました。メンバーの業績は落ち込み、チーム業績も落ち込む、そして会社も大きく業績が落ち込む中、会社方針としてマイクロマネジメントに舵を切り始めました。成果をあげるためには、これだけのプロセス数値が必要であり、その数値を達成させることが大事だということです。その数値は相当無理なもの(に思えた)で、顧客のことを考えずにとにかく行動しなければ達成できないような数値。この時、私は顧客にとって意味のない数値を達成しても無意味と考え、メンバーに無理させることはしませんでした。かといって成果をあげる対案もなく、結果的にメンバーは業績の不振のまま。最終的には一部のメンバーは雇用契約の延長がなくなり、会社を去ることになっていきました。

とにかくやらせるマネジメントの効用

 一方で隣のマネージャーは強い口調でメンバーを指導し、半ば無理やり数値を達成させていました。そのやり方に違和感は覚えていたものの、リーマンショックのような混乱期にも関わらず、そのマネージャーのもとでメンバーの中には達成までいかないまでも、そこそこの成果をあげるものもいました。結果そのマネージャーのチームから解雇になったメンバーは少なかったように覚えています。

マネジメントにおける「真摯さ」の重要性

 ドラッカーは「マネジメント 基本と原則」の中で、マネジメントにおける「真摯さ」の重要性を述べています。ドラッカーのマネジメントにおける「真摯さ」ですが、原文では「integrity」とあり、意味は正直さの実践と共に、高い道徳・倫理的な原則と価値観を持って一貫し、妥協なくそれらを遵守する振る舞いを指す、とあります。つまり、ひたむきなだけではなく、

・高い道徳や倫理観を持つ
・妥協なく成果に責任を持つ

ということになります。その点で、私は妥協なく成果に責任を持っていなかったのか、いや、持っていたつもりでした。しかし、徹底という部分で足りなかったのかもしれないと、今は思っています。ただし、自分の個性(自分の個性を客観的に知るにはこちら)から、とにかくやらせるマネジメントはできないだろうと思うので、もし、今、同じような状況におかれたなら、メンバーらしさをより高い次元で発揮させることを考えるだろうと思います。具体的には数値目標を同じぐらい効果のあると思われる代替案をメンバーと共に考え、それを実行するなど、なんらかの形で踏ん張ると思います。結果的にメンバーは何人かは会社を去る結果は変わらないかもしれませんが、メンバーや私たちの後悔の度合いは低いように思います。

苦しい時こそ一人で抱えずチーム全員で戦う

 苦境時、マネージャーは会社の方針とメンバーのコンディションの悪さの板挟みにあうことが多々あると思います。これまでの私の経験から、平時上手くいっていた方法はリーマンショック級の非常時には通じません。平時から非常時にモードを変えて、妥協なく成果に責任を持つために、自身、そしてメンバーの個性を踏まえて、どうしたらよいかを徹底的に考え、行動するしかないです。マネージャーの個性・タイプによっては、メンバーに悩みを打ち明け、一緒に考え、実行するというシンプルな行動が好回転に繋がることもあるでしょう。あらためて、今回のコロナウイルスの影響が一過性のものであることを祈りつつ、みなさん、そして私含め、これから苦しい時期に遭遇するかもしれませんが、仲間を信じて、そして妥協なく成果に責任を持ちましょう!

参考)ご自身の個性を客観的に理解したい方には我々が開催している1on1キャリア相談があります。ご活用ください。

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