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足立区生物園ですよ

渋谷区ふれあい植物センター閉園の記事の閲覧数とスキの数がすごく伸びてしまって、以前に閉園間際の京急油壺マリンパークの記事も伸びてしまっていたので閉園だという話題性で伸ばしているような気がしてちょっと後ろめたい感じがしています。

もっと前向きなこと書かないと……というわけで、実はセンターの後に25日に行っていた足立区生物園のことを書いておこうと思います。

Q.動物園や植物園は分かるんですが生物園ってなんですか?
A.生物園は生物園ですよ

確認してみると足立区生物園以外で生物園と付いている施設は「海洋生物園」などの形を除くとスペインのフエンヒローラ生物園だけのようなんですが、これも「Bioparc」を生物園と訳しているので長崎バイオパークと同じく実態は水族館成分多めの動物園のようです。

足立区生物園も動物園の特徴と水族館の特徴を兼ね備えているのですがそれだけではなく、昆虫館でもあり植物園でもあり自然観察公園でもあり、それらのどれがメインとも言い切れない、生体の展示ならなんでもする施設なのです。これは生物園としか言い表せません。

すでに何度か行ったことがあり(なぜか毎回冬か初春なのですが)、ざっくり何でも(「哺乳類」みたいな本当にざっくりしたくくりの「何でも」ですが)見れるので何でも見たい気分の今ちょうどいいな……ということで今年最後の見学にここを選びました。

生物園は元渕江公園という公園の中にあります。この公園自体も緑が多く、また植物以外も(放流されたであろうフナだとかだったりはしますが)生き物の気配が強めです。

メタセコイアの真新しい球果です。いくつか拾っていきました。

春と秋の2回咲く品種の桜「アーコレード」の花が少しだけ残っていました。

そんな公園の中にいきなり大きなケージがあり、図書館かなにかのような建物があります。これが生物園です。

エントランスホール~特別展

さっき「なんでもする施設」と書きましたがエントランスホールからそれは始まっていて、いきなり立派なオオサンショウウオが出迎えたかと思ったら、

あえてネコをゆっくり観察できるようにもなっています。凛々しい小型肉食動物であることだなあ。

リニューアル前にはこの水槽はレイアウトが見事な水草と熱帯魚の水槽でした。金魚の水槽になってしまったときは残念だったのですが、金魚も地域に合っていていいのかなと思います。

隠ぺい擬態を行う生き物や物陰に隠れる生き物が中心の特別展「かくれんぼ展」が1月10日まで行われています。

隠れるのが上手いと先に言ってもらえれば何もいないといってスルーされたりしないのでいいですね。

こらあちょっと教わらなきゃ厳しすぎますが。(水底の泥の中からタイコウチの呼吸管が突き出ています。)

観察展示室

屋内のメインである観察展示室です。

正面からすぐ見える水槽はアロワナなどがいる熱帯雨林の水槽ですし、

立派なウツボやドチザメのいる海の水槽、

カクレクマノミもいる珊瑚礁の水槽が続きます。ならばここは魚達が中心の水族館かと思えば、

奥ではチョウの幼虫を育てている様子を見ることができます。

さらに進むと虹色に輝くベーレンニシキヘビら爬虫類が待ち構えていますし、

最後の壁にはヒメフチトリゲンゴロウをはじめ沖縄のものを中心とする昆虫がずらりと並んでいます。

おや、昆虫の並びの中に再び爬虫類のオキナワキノボリトカゲが。

生態系の表現なのでした。足立区生物園には「生き物の展示は表現物である」というのを意識した展示が多いように思います。

観察質の真ん中にはガラス張りの大きな部屋が2つあり、片方はチンチラの住む岩山です。夜行性なのでだいたい岩陰で丸まって寝ています。

もう片方の部屋はケヅメリクガメの住む荒野です。だいたい目を離してる間に歩いています。

「ここがどれだけ色んなものがいる施設か分かったかな?」と言っているわけではないミンダナオミズオオトカゲ。

庭園

いつも冬に来てしまうのであんまり緑や虫がいっぱいの状態を見ていないのですが、色々観察できる庭です。

植えられたものも勝手に生えたものものびのび育ってるなあ~、おや?噛んだ後のガムみたいな質感の塊が散らばっている。

センダンの実でした。ヒヨドリやムクドリが食べに来ています。

池ではガマの穂が綿毛を飛ばしています。

ハンノキやハナズオウ(かな?)も実を付けています。ハンノキは池のすぐそばに植えられていて、湿ったところを好む生態に合致しています。

昆虫ドームというビニールハウスがあるのですが冬はやはり静かです。しかし静かなりにどうやって越冬しているかということを中心に展示を行っています。これはハラビロカマキリの卵。

小さいほうの池の中からササが生えているんですが、岸辺にササが見当たりません。どうやって生えたんだろう。

茂みの中をキジバトとドバトが、それぞれの種類でゆるく集まりながらも一緒に餌を探しています。

ふれあいコーナー~オーストラリアドーム

庭園の端のほうに進むとヒツジやヤギ、モルモットといった他の動物園でもふれあいコーナーにいそうな哺乳類がいます。

パフォーマンス中のヤギが蹄を開いて平均台をつかむ様子。

しかしなぜだかヒメハリテンレックもいます。

外から見えていた大きなバードケージがオーストラリアドームです。オーストラリアのベルモント市と足立区が姉妹都市であることにちなんでオーストラリアの動物を展示しているようです。
ケージの中にさらにケージがあってワライカワセミがいました。二重のケージで一見狭そうに見えますが、元気に飛べるくらい大きいようです。

大きなケージの中をオカメインコやセキセイインコが飛び回っています。ペットとしてかごに収まっているイメージがとても強いのですが、野生では大きな群れを作ってオーストラリアの広い森や荒れ地を飛び回っているのです。そんな姿を少しだけ彷彿とさせる飛びっぷりです。
この写真でオカメインコが立っている橋を渡ればケージの中をよく見ることができるのですが、鳥インフルエンザ対策で橋が閉鎖されていました。

ドームの地表にはパルマワラビーとオオカンガルーがいます。ここの中では動物園っぽい動物といえるでしょう。これらがいるにしては小規模な施設に見えますが、行動自体はなかなか活発です。
それにしてもカンガルーの手足の使いかたって不思議な感じがしますよね。飛び跳ねるのに適した小さな動物がその動きかたのまま大きくなったところバネの利いた連続ジャンプで効率よく走れるようになったみたいな。手で餌を掴むのも小動物っぽいですし、オスがパンチやキックで争うのに至っては、シカと同じような暮らしをしている割に角も生やさなければ普通の4足歩行もしない「シカの別解」みたいに思えます。

大温室

建物の半分は温室になっています。入るとすぐに、やけに深く見えて迫力のある水槽が現れます。

ここには大きなピラルクー2尾、

閉館した東京タワー水族館からやってきた大型ナマズのジャウー、

シルバーアロワナが、薄暗い水中でうごめいています。

空中は一転して陽光に照らされた植物とチョウの世界です。このリュウキュウアサギマダラや、

あつ森でもおなじみオオゴマダラはバタフライファームではおなじみの種類です。

しかしキチョウ(キタキチョウ)や、

アゲハチョウやモンシロチョウなど、むしろ身近でおなじみの種類も見られます。

オオベニゴウカンというネムノキに近い種類の花です。

花が咲いていないので注目されづらいものの、バショウ属のなにかも存在感があります。……温室の大半の植物には樹名板がないので名前が分からないのですが、この前の渋谷区ふれあい植物センター以来植物の見えかたが変わっているので私にとってはすっかり主役級に思えています。

1階部分と2階部分の間の崖にはススキの馴染み深い姿も。

岩壁の賑わい。

不意の動きが多くてチョウのいいシーンを撮るのが大変なのであんまり載せていませんが、逃げないようにそっと間近まで近付いたり、頭上を通り過ぎるのを眺めたり、オオゴマダラがそよ風を立てながらすぐ近くを通って「大きな動物とすれ違った」という感覚がよぎったりと、チョウの動きも存分に楽しめます。この写真では交尾前なのか争いなのか2匹が空中で激しくぶつかっています。

2階部分

1階から温室を進むと2階に出るのですが、

また別の特別展が。とはいえ私が平気だからといって展示されているゴキブリの写真を何種類も執拗に掲載していくのもあんまり意義はないですよね。皆さんをビビらせたいわけじゃないですし、観察室でイモムシの写真載せませんでしたし。

大半のゴキブリの野外における役割を示すこの展示だけでいいか。

屋内に現れるのはゴキブリ全体のほんの一部であって、ほとんどのゴキブリはこうして枯死した植物を分解するなどの働きをしているんですよね~。これ前あつ森でやったな。

2階にはあとはグッズショップ(日常の中でも生き物のことを体験させようという気概にあふれたとても面白い品揃えです)だけで、元々あった休憩用テーブルも今は撤去されています。しかしテラスに出れば持ち込んだお弁当やショップで売っているパンを食べることもでき、テラスには野外のチョウを呼び込む植栽が施されたバタフライガーデンがあります。

まあやはり冬にはおとなしい風景になってしまいますが。

クチナシの実です。クチナシはオオスカシバという黄緑色の体と透明な羽でガらしからぬすっきりした姿をしたガが、幼虫の食べ物として卵を産み付けに来るので植えてあるんですね。

実はエントランスの天井には大きなチョウのステンドグラスがあったんですね。2階からもよく見えます。


この他に「冬のホタル観賞会」というイベントがあり、他の季節には水生昆虫全般を展示している部屋に整理券を見せて入ると真っ暗になっていて、園内で特別に冬に羽化させたヘイケボタルが光るところを見られるというものでした。

「生物園」という他にない自由な施設

当日にはすでに何回か行った小さめの施設だからとゆるい気持ちで見に行ってゆるく楽しんだのですが、それから改めて振り返ってみると、展示手法は型にとらわれず自由で、なおかつ飼育にはベストを尽くしているので気分よく見られる、非常に独特かつ魅力的な施設であるといえます。

あまりにも身近すぎて動水博的な興味の対象としてなかなか見てもらえないネコやゴキブリから、いかにも動物園らしいカンガルーやチンチラ、温室らしい植物までカバーしています。また、ペットとしておなじみのオカメインコが広い空間を飛び回る姿を見せたかと思えば、周りの住宅街に潜んでいる鳥や昆虫を呼び込んでみせたりと、生き物の様々な魅力を引き出しています。その展示を支えるのは、一つひとつの生き物に対してこの小さな施設で可能な限りの環境を整える姿勢にあるようです。

「生物園」という他のなにものでもない名前が上手く働いているのかもしれません。やはり注目すべき施設なので、また夏に訪ねてみたいところです。

ところで、拾ってきたメタセコイアの球果に種子がはさまっているのが見えたので、ピンセットで全部引っ張り出してみました。薄い羽状の突起で風に乗る、いわゆる翼果です。樹脂が付きすぎているのでちょっとうまく飛べなさそうな状態ですが、ヒノキに似た香りがします。

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