見出し画像

2024年6月に読んだ小説についてつらつらと

あつい…7月さん…始まりから飛ばしすぎな気がする…またこの季節が巡ってきたなあと感じる7月初旬。
物語の中の夏はこんなに青春味をきらきらわくわくと強く感じるところですが、現実はなかなかにしんどい部分も多いのが…。
7月はライブや個展など、ちょくちょく外に出る予定、出たい予定や機会がありますが、まずは体調優先…このあつさに気を付けながら一つ一つ楽しんでいきたいと思っています、楽しみにしてる新刊も多いですねー。
そんなこんなで今回も6月の読んだ小説を振り返っていきましょう。


宮澤伊織「裏世界ピクニック9 第四種たちの夏休み」(ハヤカワ文庫JA)
シリーズとして前巻で一つ大きく動いたあとの新刊、とても楽しみにしていた。るなががっつりとストーリーにからんできて面白かったなあ…そしてそんなに抱えているものがあったんだな…と思ったり。空魚と鳥子の関係が一つのところにとりあえず(?)落ち着きをみせるなかで、相変わらずその後も裏世界の探検と研究は続いていき…。今巻はわりと穏やかな雰囲気のお話が多かった印象でしたね。とにかく空魚と鳥子の二人のあいだに、るなと辻さんが加わった会話劇が楽しくてたまらなかったです。辻さんの読めない性格がおもしろい。空魚の恋愛に対する姿勢や感覚、空魚の天然な振る舞いにやきもきする鳥子の姿も可愛いかったりで今巻も読み所満載で大満足の新刊でした、続き……。

阿部暁子「カフネ」(講談社)
いまかいまかと刊行日を心待ちにしていた本、読んでよかったなあ…阿部暁子さんのお話好き…。他人が何を考えているのか…何を胸の内に秘めているのか…言葉を重ねれば分かりあえるのか…もしかしたらそれは身勝手な気持ちかもしれない…それでも一緒に生きていこうと温かで真摯な気持ちを伝えようとする薫子さんに胸がいっぱいでした…。せつなさんが特に好きな登場人物だったなあ……だんだんと気力が戻ってきた薫子さんの生き生きとした力強さと、せつなさんの淡々としていながら食材を前にした時の強い眼差しがとても好きでしたね。ある日の二人の食事風景…みたいな掌編が読みたいなと思ったりしました。


野村美月「“文学少女”と死にたがりの道化」(ファミ通文庫)
ついに再読を始めました、いやもう何年ぶりに文学少女シリーズの世界に帰ってきたのか…あれから様々な本を通り過ぎてきた私が「今」読んでも楽しいと感じることが素直に嬉しい気持ち。終盤で必死に語りかける遠子さんの姿がとても印象に残りました。道化を演じ続けるような日々でも歩き続けたその先にきっと少なからず変わっていくものがあると信じたいなあと思う。
もう本を開いて口絵部分からとてもいいんですよね…遠子さん…心葉くん…琴吹さん…ああ…なんだか当時読んだ時よりもスルスル読める感覚があったなあ、それとシリアスな部分が思いのほかたっぷりあって当時はこれを読んでいたのかあ…と思いを巡らせながら読んでいましたね。遠子さんが美味しそうに楽しそうに物語を語る時のあの感じは「ものがたり洋菓子店」と同じ作家さんなんだよなあとしみじみ実感してしまった…好きですねー。そして私は遠子さんと心葉くんが三題噺のやり取りしているのが好きで好きで……。ゆっくりじっくりシリーズの再読を続けていきたいです。今年のちょっとした目標のような…。


高島雄哉「はじまりの青 シンデュアリティ:ルーツ」(創元SF文庫)
これはとてもおもしろかったなあ…私の好きポイントをつく要素が詰め込まれた面白いSFでした…。大きなSFプロジェクトの一部を担う前日譚とのことみたいですが、これ単体でSFとしてとても面白い物語でしたね。この世界のお話をもっと読みたいなと思ってしまうほどでした。近未来、人類をおびやかす青い雨が突如降りそそぎ、世の中を一変させてしまった世界で新しく文明を築き生きていこうとする人々の姿が四世代にもわたって綴られていくSF。アニメのほうも少しずつ楽しんでいきたい。


古宮九時「Unnamed Memory -after the end- Ⅳ」(電撃の新文芸)
ateもいつの間にやら4巻目です、はてさて今巻はどんな事態がティナーシャとオスカーを待っているのかドキドキでした…。序盤はきっちりスローライフで笑ってしまいましたね、偽りではなかったです…(笑) まあそのあとはきっちり古宮九時さんの本だなあと実感する展開が待っているのですが…(でも面白いのですよねー)あらためてアンメモateおもしろい…!と唸る巻だった気がしますね、ateで一番好きな巻だった気がします。アカーシア以外のものを扱っているオスカー珍しい!…と笑っていたら、ティナーシャがしっかり細工していて抜かりないなあと苦笑いに変わっていましたね。続巻では何が待っているのか…少しずつ終わりに近づいているのも感じますね…。この逸脱者のお話を見逃すわけにはいきません。


村上雅郁「きみの話を聞かせてくれよ」 (フレーベル館)
これ以上なく私の好きな青春ものだったなあ…。7つのお話、7人のそれぞれの気持ちがきらめく、心揺らされる連作短編集。冒頭の『シロクマを描いて』からもう涙腺ゆるゆるになってしまうぐらい心に響くものがあってとてもよかったです…。時間が経ったから伝えられること、伝えたいと思うこと、その時に浮かんだ気持ちを素直に伝えればきっと相手に響くものがあると…伝わるものがあるといいなあ…と思う。杉谷夏帆さんことニカちゃんが特にお気に入りでしたね。村上雅郁さんの本を他にも読んでみたくなりました。


あさのあつこ「アレグロ・ラガッツァ」(朝日文庫)
あらすじに惹かれて手に取ってみた本、青春な音楽ものはやはり気になってしまいます。中学時代のとある出来事により音楽から離れていたヒロインの相野さんが、高校進学をきっかけに少しずつ周りの新しく出会ったクラスメイトに影響を受けながら自分の気持ちや音楽に…吹奏楽に再び向き合っていく姿がとてもいい青春小説でした。日々移り変わる相野さんの心の動きをじっくりと楽しみました。志村貴子さんのカバーイラストが良きですー、素敵ですー。


宮田眞砂「セント・アグネスの純心 花姉妹の事件簿」(星海社FICTIONS)
透きとおるような…眩しい想いを抱くお話だったなあ、思っていた以上に学園ミステリでしたね……よかったです…。中等部、高等部生がルームメイトとなり花姉妹となって学園生活を過ごす寄宿舎セント・アグネスの物語。『この寄宿舎では誰もひとりのままではいられない』という温かさに泣きそうになっていたなあ…。登場人物の中では浅雛凛さんが特に好きでしたね、お話としては『花の繭』がとても良く、読み終わってしばらく余韻に浸ってしまったなあ……。そして花が印象に残るお話でもありましたね…景色としての花、花姉妹、花だより、心くすぐる花のイメージがとても素敵で…。


砥上裕將「一線の湖」(講談社)
ほんとに素晴らしい続編でした…まさに感動の一言、心の澄んだ部分にじーんと届く物語だったなと思う。読後の余韻はただもうひたすらに胸がいっぱいで温かい気持ちになったなあ……。青山くんの目を通し覗き見る水墨画の世界の温かさや繋がり、そして教えることで教えられるものがあるということ…受け継がれていくもの…胸に刻んでおきたい言葉がたくさんありました…。その一つの線を描くことにどれほどの想いが込められているのか途方もない気持ちにもなったなあ…。一つ一つ自分の過去や未来と向き合っていく青山くんの姿にずっと心揺らされていた気がする……。


野村美月「”文学少女”と飢え渇く幽霊」(ファミ通文庫)
再読、軽やかな読みやすさを持ちながらずっしりと読み応えある文学少女シリーズ第二弾。長い時のなかで変わることのないくるおしいほどの彼女の気持ちと、彼女が彼に見せた一瞬の表情が印象強く残る物語でした……。
そうでした…流人くんもいましたね、遠子さんとのやり取り懐かしい。『恋の相談ポスト』から始まる夏の季節の遠子さんと心葉くんのゆるい日常もしっかり楽しみました。琴吹さんがあの頃から変わらずに好きすぎてチラッと登場する度にとても嬉しくなってしまう…睨んでいる姿さえ可愛い……。遠子さんが『探偵』ではなく、あくまでも『文学少女』であると主張するのが好きなんですよね。


山尾悠子「初夏ものがたり」(ちくま文庫)
初読み作家さん。夏の空気感がとても良き…一気読みしてしまった…。スーツを着た謎めいた雰囲気を漂わす日本人のタキ氏…彼の導きによって様々なかたちで邂逅を果たす人々にとても心動かされる短編集でした…。冒頭の『オリーブ・トーマス』がたまらなく好きだったなあ…。『夏への1日』というタイトルの響きもとても好きで……。今の夏の季節に読むには最適な本だったんじゃないかなー。酒井駒子さんのカラー挿絵がとても嬉しい本でもありました、うっとり…。


荻原規子「エチュード春一番 第二曲 三日月のボレロ」(角川文庫)
シリーズ第二弾、はらはらした終盤だったなあ…美綾がそう思って行動にまでうつさせるって相当な変わり者なのでは……極端な人でしたね…。今巻も美綾とモノクロを中心としたやり取りや騒動(?)を面白く読みました。愛里とじっくり時間を重ねて再び友人としての仲を深めていく美綾の姿も好きだったなあ…。近いうちに続刊も読みたいところです。



いよいよ小市民シリーズの初回放送が迫ってきて、ここ数日は就寝前にしっかり予約録画されているか確認しに行く人になっていました…(笑)きびしいあつさが続きそうな夏ですが、とりあえず楽しみな事を支えにして7月を乗り越えていきましょう。今月も素敵な本との出会いがありますように…。