見出し画像

2024年7月に読んだ小説についてつらつらと

どこまでも続いていきそうな夏のあつさ……毎日仕事終わりに宇治金時なかき氷たべたい…抹茶パフェたべたい…と、心のなかで呟いている気がする…。冷房かけて就寝するのが当たり前の世界になってしまったんだなあ…5年ぐらい前は夏のあつさを感じながらも扇風機の風に当たりながら「まあ…夏だしなあ…」でしのげていたのだけれど、昨年あたりから扇風機だけだとほんとにからだが持たない…。あつさとほどほどに付き合いつつ今夏もなんとか楽しみなことを思い浮かべながら日々を乗り切っていきたいところです。
そんなこんなで今回も先月に読んだ小説をつらつらと振り返っていきましょう。


岩井圭也「横浜ネイバーズ3 凪の海」(ハルキ文庫)
シリーズ第三弾、前巻読んでから少し時間が経ってしまったなあ…。しかし読み始めたらそんなことは気にならないほど今巻ものめりこんで読んでいましたね。サブタイトルにもなっている『凪の海』のお話がとてもよかったです、一度手を貸そうと決めたらとことんまでやり遂げようと駆け抜けるロンの姿は今巻もほんとに胸が熱くなりましたね…。
凪さんのお話はそれが特に顕著でした。グッド・ネイバーズのクルー、樹さんのとある場面の言葉にグッと込み上げてくるものが多かったなあ…あれはほんとに…。
転売屋のお話など、現実に今起こっていることも興味深く読みました。続刊はどんなお話が待っているのか楽しみです…。


加納朋子「1(ONE)」(創元クライム・クラブ)
文芸誌でいくつかのお話は既読済みなのもありながら、こうして本としてまとめて読むと強く感じるものが多かったなあ…どんなに年月が経っても登場人物たちはその世界で優しく温かく生き続けているということを強く感じるシリーズ最新刊でした。
私は加納朋子さんの本を読み始めたのがわりと最近ではあったけれど、リアルタイムで追ってきた方にはより一層響く内容であったんじゃないかと想像してしまいましたね。
前書きと後書きの、加納朋子さんの言葉が素敵だったなあ、じっくり読んでしまった…。


夏海公司「セピア×セパレート 復活停止」(電撃文庫)
とても面白かった…!一気読みしてしまった。がっつりとSFを堪能したあとの満足感がたまらなかったです。バックアップデータから生命を再生出来るようになった近未来でのSFサスペンス。
最後の最後までどう着地するのかページをめくる手が止まらなかった…一人の少女に憧れめいた気持ちを抱いた少年のお話がこういうところに辿り着くとは…そういう存在でありながら人が人らしくあれと願ったその想いにとても心動かされるものがありましたね。
夏海公司さんは「ガーリー・エアフォース」以来でした…夏海公司さんのSFは良きです。


河邉徹「ヒカリノオト」(ポプラ社)
初読み作家さん、心の底からじーんとしたものが胸の内に広がっていくお話だったなあ、好きなお話でした…。
とあるミュージシャンが歌った一つの曲が様々な人の人生の岐路に寄り添っていく姿が綴られた連作短編集。
読んでいた時の気持ちを今振り返っても涙ぐみものがありますね…音楽というのはそうして時と共にカタチを変え、人の心に伝わり広がってそれぞれの人生という道に寄り添い温かく彩っていくんだろうなあと思う…。
私にもそういう大切にしている音楽があるので、とても伝わってくるものが多いお話でした。
合唱コンの伴奏とアレンジをお願いされた女子高校生のお話である『マホウノオト』が特にお気に入り。『オモイデノオト』はほんとに涙なしには読めず……。他の著作も読んでみたい作家さんですねー。


二月公「声優ラジオのウラオモテ #11 夕陽とやすみは一緒にいられない? 」(電撃文庫)
今巻もおもしろく読みましたね。区切りということで、もしかしたらという気持ちがあって終盤読み進めていくのがちょっとこわい部分もあったなあ…。同じ時間を積み重ねてきたこそ語ることが出来る由美子の夕暮夕陽への言葉は心に染みるものがあったなあ…お互いにそう思える相手がいるという二人の関係にちょっと羨ましい気持ちにもなりました。
由美子と千佳がああいったカタチに落ち着いたということは、これ続刊あるということでいのかしら…(笑)


門田充宏「ウィンズテイル・テイルズ 封印の繭と運命の標」(集英社文庫)
シリーズ第二弾、今巻もがっつり楽しんだ…リンディとメイリーンが新たな脅威と対峙し、ニーモティカやロブなど見守ってくれる人たちの手を借りながらその都度決断して立ち向かっていく姿に今巻も夢中になって読みました…。エピローグは思ってもみなかった方法で、一体この世界はどう変わっていくのか、リンディとメイリーンの進む先には何が待っているのか、興味が尽きることはないなあ…気になる部分がまだまだたくさんある。続きー。


野村美月「“文学少女”と繋がれた愚者」(ファミ通文庫)
再読本です、いやはや…愚者とてもよかった…心揺さぶられた…。
文化祭の劇の場面ってこんなによかったっけなあ…高らかに凛とした姿で語る『文学少女』としての想像が…言葉が深く心に届くようで…。
誰もが抱える愚かなもの…でもだからこそおそれず一歩踏み出していくことできっと繋がっていくものがある世界であってほしいという願い…。
誠実であらんとしたために傷つけ傷つけられた彼が『文学少女』の言葉を受けてその言葉は確かに届いたんだと…深く感じさせるその後の晴れやかな表情や芯のある立ち居振る舞いに震えるような感動がありましたね。
あとはあれですねー、なんて優しげな声で遠子さんは心葉くんに呼びかけるのかなあ…と、改めてしみじみとしてしまった。劇の練習中の遠子先輩のオーバーアクションな演技も好きです…(笑) そして琴吹さんの可愛い部分は今巻もあげたら切りがないほどでたまりませんー、クッキー作ってくる琴吹さん〜。


道草家守「青薔薇アンティークの小公女4」(富士見L文庫)
おもしろかった…ハラハラドキドキでした…アルヴィンに何があったのか何が起こったのか目が離せない終盤でしたね…彼の幼少期の謎が紐解かれるシリーズ第四弾。
ローザとアルヴィン…お互いが相手に対して共に歩んでいきたいという真っすぐで強い想いが伝わってくる巻でもあったなあ…よかった…。
ニーアムの隠された気持ちにも切なく心揺らされましたね…。
このシリーズはコリスさんによるコミカライズもとても良きなのでそちらから読んで楽しかったら原作読むのもいい感じだと思います。
原作もコミカライズもとても楽しい、好き。


望公太「小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている」(MF文庫J)
SNSでたびたび見掛けて気になっていた本、私自身も漫画をそれなりに読む人なのでどんな内容なのかなあ…と。
小鳥さんの漫画に対する強い想いに笑ってしまった、ヒヤヒヤするような部分に飛びこむ月見先輩との雑談も楽しく読みましたね。
そこまで一貫して好きでいることが出来たら終わってしまうさびしさも感じずに済むのかなあ…とか色々と考えこんでしまいましたね。
それに序盤から小説についてそんなに勢いのある意見を飛ばしていてちょっと心配してしまうようでした…(笑)
しかし…ほんとに最後の最後に愛する漫画への真っすぐな気持ちを聞いて、願うのはそれだけなんだよなあ…としみじみとしてしまいましたね…祈り…。


白川紺子「海神の娘 黄金の花嫁と滅びの曲」(講談社タイガ)
ああ…このシリーズしみじみと好きですね…穏やかなお話ばかりではないのですが、だからこそ登場人物たちがお互いに向ける温かな気持ちにしみじみと胸に響くものがあるんですよね…。
それぞれの運命と懸命に向き合っていく若き領主とその伴侶である神の娘の婚姻譚に今巻もとても心揺さぶられたなあ…よかったです。沙来と沙文の行く末は……。
お互いを花に例え、静かに微笑みあうあの場面が特に好きで何度も同じ箇所を読み返してしまったなあ…領主として海神の娘としてこうあるべきなのかと日々思い悩むかたわらでお互いの人となりを少しずつ知り、想いを寄せていく二人の姿がとても好きでしたね。まだまだ続きが読みたいシリーズです。


高島雄哉「エンタングル:ガール」 (創元SF文庫)
ゼーガペイン、新作映画が公開されるとあってようやく手に取りました…。
やはりもっと早くに読めばよかったと思うスピンオフでしたね…守凪了子の目線から見たこの世界の景色は……。
TVシリーズがもう何年前なのかという思いですねー、これはなんというか…ゼーガペインの世界を知らずとも入学早々に映画研究部への扉を叩いたヒロインが締め切りへの時間に追われながら幼なじみ同級生たちと作品を完成させようと奔走する一夏の青春ものとしてもとても楽しいものでしたね。
天音先輩が特に好きだったなあ…。
「ホロニック:ガール」はどんな物語が待っているのかドキドキです、楽しみです。



毎月、今月はあまり小説読めなかったなあ…という感覚があるんですが、この振り返りをしていると意外としっかり読めているし楽しんでいるし、たくさんの素敵な小説と出会っているというのが確認出来るので、今後も引き続きこれは続けていきたいですね。
今月も素敵な小説との出会いがありますように……。