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アムリタの雨に花開く

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CB4959269。
CB6227696。
分かり易い記号。
それはまるで私達の秘密のコードネームの様だと思った。
コードネームを、使うべきだったのだ、きっと本当に。
そうしたらもう少し、時間を引き延ばすことが叶ったのかも知れなかった。

ー僕から溢れ出たものが、混ざるんだ、君に。

彼がそう言ったあの夜、既に奪われていた?
それとも奪っていた?
もうどちらだっていいじゃないの、と私は思う。
どっちみち。私たちは。共犯者、なのだから。

ベッドから抜け出して、私は彼にオムレツを作ってあげる。
夜の間中、沢山交わした二人だけの秘密。誰も知らない。二人の身体にはお互いが残っていて、熱くなった身体を冷ましながら、発酵したアロマに包まれている。我に返る為の珈琲と、幸福を引き延ばす為のバゲットを添える。

ー美味しいね。
ーふふふ。
ーハード系のパンは苦手だったのに、君のお陰で好きになったよ。
バターが溶ける。
ー蜂蜜もどうぞ。
ーありがとう。

そう言って見つめあった。
結局私たちは再び愛し合ってしまった。
言葉なんて要らない。
欲望は。
密やかに混ざり、交わり、溶け合った。
丁寧な激しさで、私たちは愛し合った。

だから固くなったバゲット。
大丈夫。
それはきっとフレンチトーストや、プディングに変身してくれる筈。

朝食の後片付けは彼がしてくれた。
彼は卵の殻を丁寧に洗い、午後、乾いたら、粉々にした。
あんなに優しく扱っていたくせに。乱暴に掌で握りつぶす。

いいんだ。
丁寧に愛されたり。
乱暴に愛されたり。
両方、味わえばいい。
彼の掌がそう言った。

彼が砕いて、パウダー状にした殻を、紫陽花の根元の土に撒いた。
白くさらさらと私の指の間を通して。
まるで散骨の様だと思った。

ー紫陽花?
ーそう、よく知ってたね。男の人なのに。
ー実家の庭にあったから。
ーここの紫陽花は青だけなの。私はラベンダーみたいな色が好きなんだけど。
ー紫の紫陽花にしてあげるよ
ー凄い、そんなこと、出来るの?

私は酸性で。彼は弱アルカリ性で。
そんなことを思い出す。
土の中で、混ざり、交わり、それは溶け合いアムリタの雨に花開く。

私は今一人で彼の魔法の結果に微笑む。
微笑みながら、少し泣いた。



<了>





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アムリタの雨に花開く

りりかる

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Healer / Novel Writer