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『かかわり方の学び方』 伊勢達郎さんたちの「とえっくラジオ」で…その3:「おもしろい」ってなに?

写真左から
伊勢達郎さん …セルフエスティームのかたまり
プーさん …慈愛と自愛の湧き水
私・西村佳哲
フナ …素敵なしっかり者

<その2:学力の話

「とえっくラジオ」は、トエックのウェブサイト(最近の)をつくった「ものさす」が勢い余って提案。一緒に運営を始めた、教育・子育て界のキラーコンテンツ(予定)。現在の登録者は200名ほど。目指せ1,000名!


その3:「おもしろい」ってなに?

ふな 前回につづき、西村佳哲さんをゲストにお迎えしています。書き込みを紹介。先日来ていただいた西村仁志さん(広島修道大学人間環境学部教授)から、「楽しく拝聴させていただいてます。仕事のことも学びのことも、よい問いと、みなさんのよい答えですね」。木下さん「お金をメディアにたとえる話はおもしろかったです」。では、西村さんの質問があと2つ残ってるので、それをやりましょうか。

西村 「おもしろい」っていう表現、あるじゃない。「おもしろいやつだな」とか、「おもしろい、おもしろい!」(と盛り上がる)みたいな。3人の「おもしろい」ってどういう感じだろうって、きいてみたいの。

 なんでかって言うと、私はここ数年神山町で、まちづくりというか行政さんと一緒に、これからまちになにが必要?とか、考えて実装していく仕事を去年の夏ぐらいまで一所懸命やっていた。するとね、なんか「正しい」こととか「間違ってない」ことの方に結構振れていて。そっちのほうにいっちゃったんですよ。

 「おもしろい」のはすごい大事だよなって思ってる。正しさとか間違いは概念的だけど、「おもしろい」ってもっと感覚的なことだし。3人が考える「おもしろい」って一体どんなだろう、どういうもの?

ぷー その質問自体がおもしろい。

西村 いやいや、教えてください。(笑)

達郎 おもしろい返しやん。

ぷー いやいや。そんなこと考えてないんですよ、普段。なので特別な質問に思えて、まず「おもしろい」と思った。そんなこと考えてるんや、と。

西村 どういうもので、どういうことだろう?

ぷー 自分の発想にないことを投げられたり、思いついてひらめいてるところに、意外性とか「ユニークだな」って愛情を持って反応する自分が、おもしろがってるんだろうなあ。

西村 それは、ぷーさんの周りで起こる出来事全般に?

ぷー そうです。

達郎 ぷーさんはおもしろがりやで、おもしろがる達人だよね。子どもたちも言う。

ふな うん。なんか気持ちが純粋というか、新鮮というか。いつも気持ちで生きてるっていうか。

達郎 料理もおもしろかったしな。遊び始めるよね。

ふな そんな感じはする。(ぷーさんへ)どうぞ、ご自身のわかるところを。

ぷー 意外性。自分でないものが「おもしろい」よね。本当に私には思いつかないことをするとか、こんな考え方をするんだとか、こんなはまり具合とか。自分の枠(枠組の中)にないものは「おもしろい」って思うな。
 後は、自分の「好き」も問われるよね。好きなことを楽しむところってあるよね。こんな絵とかね(壁にかかってる絵を指しながら)。やっぱいいものっていうか、やっぱりこれすごい。おもしろいって「すごさ」であり、すごいやん。

西村 「自分にはないなぁ」みたいなものが割と…。

ぷー おもしろい。「おもしろい」と思うな。さっきから駄洒落で「白い犬は尾も白い(おもしろい)」っていうのが浮かんでしょうがない。

ふな どうしたんですか、ぷーさん。この話でいいんですか?(笑)

ぷー 以上以上(笑)。でも子どもと近くにいると多分すごい「おもしろい」ことをもらってるから。子どもはおもしろい。そういう環境にいるんだろうなと思いますね。

西村 想像を超える感じ。

達郎 それがぴったりやね。「想像を超える」というか、おもしろいの反対は「つまんない」だから。「つまんない」は初めからわかってるとか、いつも同じとか、退屈とか、安全とかね。おもしろいはその反対だから。危険とか、想像出来ないとか、予想外とか。

西村 結果がわからない。うまくいくかどうかわかんない。

達郎 そうそう。ワークショップがおもしろいっていうのは、結果が分からないから。構成的でない場がおもしろいのは、どうなるかわかんないから。そのスリリングさかな。わかってたらつまんない、だからもうやらない。
 おもしろくなくても、評価されるとか、意味があるっていうのもあるけど、そっちに出来るだけ引っ張られないように、「おもしろい」軸でいきたいなというのはあるよね。

西村 あるよね。

ふな 聞いていて自分の中でヒットしちゃうのは、それこそ「正しさ」とか「間違ってない」とかに最近いきがちっていうか。守りたいものがあったり、なんて言うんだろう。

西村 好きな人ができた?

ぷー それはおもしろい。(笑)

ふな (笑)いやいや、なんかそう、守りたいものがあったり、なんか自分の身可愛さとか。そんなのになると、どうしてもなんか「正しさ」にいっちゃうなって、話を聞いてて思った。
 「最近自分がおもしろがってるかな?」というのは、ここ数ヶ月、1年なのかわかんないけど「あんまりおもしろがってないような気がするな」っていうのは、聞いてて響いたところかな。

西村 「合理的判断」っていう言葉があるじゃない。「合理的に判断すると」みたいな言い方。例えばみなさんには見えない形で、カメラの手前側には、「丁寧に仕事をするチーム」だっけ?

ふな 多大な遊び心。

西村 多大な遊び心のチーム(「とえっくラジオ」の配信チーム・3人、ものさすの林社長とスタッフ・本橋&香川さん)は、見る人が見たら、めっちゃ非合理的なことやってると思うんです(この中継支援は一銭にもなっていないはず)。「合理的な判断じゃないよね」って言われると思うの。

 でも最近ね、なんかその「合理的な判断」って本当につまんないなと思ってて。結局、損得の話しかしていない感じがあるんだわ。損得っていうところで物事を判断していく人、親もそうだし、ひいては子どもだよね。そこまで(影響して)来るじゃない。それが本当に、おもしろくないなと思ってるんですよ。

 「おもしろい」っていう感覚は、「いつかこうなる」とか幸せを先送りにするものじゃないじゃん。学力ってわりと幸せを先送りにするものだけど、「おもしろい」って、いまこの瞬間のものだからさ。本当に手放しちゃいけないと思うんだよね。
 だけど、子どもたちの物事の価値観っていうか捉え方まで、おもしろいかどうかじゃなくて、損か得かとか。いつか役に立つかどうかとか。合理的な判断みたいな。そっちになんかこう流れやすい昨今があるなと思うんだよね。自分の話だけじゃなくて。

達郎 ヘンテコな言葉だけど、僕がよく使うのは「気前のいい子になってほしい」っていう。

西村 もうちょっと詳しく聞かせてください。

達郎 さすがはインタビューの達人(笑)。

西村 簡単なんです。「もう少し詳しく」って言うだけ。
 

〝すこやかさ〟とは、計算しないこと

達郎 いや、先ほどの話と同じで。損得、勝ち負け、いずれ役に立つっていう、そういう「計算する」っていうかな。企てがある。見積もりがあることが、実はつまんないじゃないですか。
 〝すこやかさ〟っていうのは、計算しないことだと僕思うんですよね。興味・快楽的なおもしろさだけじゃなくて、それよりもどっちかっていうと、なにかくすぐられたり、もうちょっと言うと「おもしろいの手前」というか。おもしろいの、もっともっとはるか、もとの感覚みたいなもん。なんか「くすぐられて」みたいな、なんか「気になる」みたいな。こんなのに応えて言ってほしいんですよね。

 これいまの真逆なんですよ。いまの教育は早く目標設定して、それこそ合理性ですよね。合理性をいかにセットするか、それにちゃんと向かわせていくことが指導だし、そのようにやっていくのが教育効果みたいな、がますます強くなってるんですよ。
 僕はその180度反対だと思ってる。そっちはもう健康じゃない、と思ってる。とくに伸びしろばっかりの、まぁ60歳を超えても伸びしろばっかりと自分のことも思ってるけど(笑)ましてや子どもたちなんか、幼稚園、小学生や中学生はみんなそんなね、やりたいこととか、気になることっていう探求心や、おもしろがる気持ち。それを育てるというより、元からめちゃくちゃ持ってるからとにかく大事にしたい。

 だからトエックでは朝のミーティングで「今日なにがしたい?」ってきく。「なにがしたい?」って、本当にすっごい大きい質問なんですよ。

西村 そうだよね。

達郎 「やりたいこと」「やるべきこと」って(それとは)真逆のように見えるけど、一方では、やりたいことをやり尽くすと、どんどんやるべきことに近づいていったりもするんですよ。
 なにか貢献するとか、役に立つとか、人に喜んでもらうことなんかから解放されて、自分のやりたいことをやりなさい、っていうところが始まってるのにまたそっちに。すごくこう利己が利他的なところに繋がるんですよ。ややこしいかな?この話。

西村 わかるわかる。

達郎 決して快楽的なところに行かない。ここを感じるのがすごく大事で、僕らも、それをしときたいんやな。

ぷー ちょっと言いたい。〝知る〟ことは、やっぱりおもしろいと思う。

西村 わかる、ってことね。

ぷー 知らないことを知ることは、とってもおもしろいんですよ。あの本当に最近のことなんやけど、このお家ね、梁がすごいでしょう。立派だし。これが「梁」っていうのは知ってたよ。で(90度向きをかえて渡っている材)ここ、なんていうか知ってる? 「桁」っていうのを知ったんよ。桁に出会って。

達郎 「桁外れ」の桁やね。

ぷー それで家が建つという。この梁と桁の違いはなに?って聞いたら、向きが違ってる。でもどっちも大事でしょう、家建てるとき。

達郎 「わかる」のがおもしろくない状況ってのは、おかしいんですよ。学びとしては。わかるって嬉しいはずですよ。おもしろいはずなんですよ。出来ないことが出来るって、すごくおもしろいはずなんですよ。
 ところが知的なことでも、「これはこうだよ」って教えられても、わからないことをわかってるはずなのに、そこに「おもしろい」はあんまりついてきてないじゃないですか。一般の学びは。構成的になっちゃうと。

ふな 自分が取りにいってないから。自分が発見してないから。

西村 桁の話はどうすれば…)

ぷー 欲してないし。

達郎 そもそも、それ食べにいってないからね。

西村 与えられた問題を一所懸命解いてる子どもだって、解けなかったものが解けるようになっていくこと自体を「おもしろい」と思ってると思うよ。

ぷー そう、おもしろがってる子もいます。でもそれが本当はもう全然欲してないのに、だんだん力つけてやってくる。本心もかけ離れてる。もううんざり。止めたいのに止めれずに与えられつづけて…っていうのはあるよね。それはおもしろがってないよね、もう全然。

達郎 あれやね。「わかる」ってことがおもしろい。嬉しいってことは大事にしたいな、ってことを言いたかった。
 

ほっといてくれ(笑)

西村 はい。面白主義でいきたいんですけどね、私は。

ふな (いまいろんなひとから)聞かれるかもしれないけど、この先なんか考えてるんですか? そのおもしろい方向に。

西村 この先は、休む。

ふな それおもしろいですね。なんかワクワクする。

ぷー 十分仕事したってことよね。

西村 そうね、ちょっとやりすぎたぐらいだね。なんか、早いって思われるかもしんないけど「もう俺十分働いた」っていう気もするんですよ。ちょっと1回休みます。

達郎 絶対また意欲湧くよ。

西村 呼吸と同じだからね。吐いて吸って吐いて吸って、だから。

達郎 (ニシと)出会った頃にね、「今日屋久島から来た」みたいなときがあったんだよ。何回目か忘れちゃったけど。屋久島でCDかなんかつくったよね?

西村 サウンドバムかな。

達郎 そうそう。「屋久島に行って、カヌー乗ってね」っていうから、「へー、1週間ぐらい?」って聞いたら「1泊」とか言ってて(笑)。びっくりしたんだよね。1泊でどうやってカヌー乗ってどうやってそんな水の音取ってるねん、って思ったのを思い出した。よく働いたんだなと。

西村 はい。ほっといてくれ。(笑)

ふな そう思うと、私たち(トエック)のキャンプの長さとかって贅沢。

達郎 いや。ちょっと休むと、すぐまた意欲わくんじゃないかなと。

> その4:民主主義、どうよ? につづく


動画リンク 2022年4月12日の「とえっくラジオ」
・導入:ゲスト紹介、伊勢達郎・トエックとのつながりなど、なごやかな語らい
・その1:お金の話
・その2:学力の話
・その3:「おもしろい」ってなに?
・その4:民主主義、どうよ?

>「とえっくラジオ」
子育て・人間関係・教育現場の悩み事に、伊勢達郎・プー・ふな、トエックの3人が、楽しく真面目にこたえるネットラジオ。

*伊勢達郎さんのインタビューが収録されています