見出し画像

『自分の仕事をつくる』 Sweetpea Bicycles

部屋を片付けていたら、昔のパタゴニア(Patagonia)のカタログの切り抜きが出てきた。この判型はいつ頃かな。アメリカの地方都市で自転車をつくっている女性の小さな紹介記事。

ポートランド在住のナタリー・ラムズランドは自転車を組み立てることで生計を立てていますが、通勤は徒歩。小さな作業場は家の裏にあり、オーストラリアンシェパードとラブラドールの雑種の子犬が、上司と同僚を兼務しています。

古い切り抜きを読み返すと、自分が同じことに関心を抱きつづけているのがわかったり、あるいはもうその気持ちがないことがわかって面白い。今回は前者。
あとそれがお店であれ活動であれ、年月を経ていまどうなっているか、時間に洗われた存在の様子を確かめられるのもいい。

「Sweetpea Bicycles」と検索すると、シンプルなサイトが出てきた。トップページは車種のカタログ。「TROUBLE MAKER」「FARMERS MARKET」「LITTLE BLACK DRESS」とか、かわいらしい名前の自転車が並んでいる。

あとInstagramとFacebookへのリンクがあり、極めて簡素なFAQでおしまい。「Our bikes start at $3500」とあるのでまあまあのお値段。でもそれぐらいする方がいい。自転車に限らず量産品は安すぎる。その安さや手に入れやすさは、結果的にゴミを増やしてもいると思うんですよ。

値付け(プライシング)はクリエイティブな行為だ。それは、手にする人と物事の関係を変えるし、つくり手自身にとっては「どんな人々を相手にこの仕事をつづけるか」をイメージする大事な手がかりになる。

ときおり「富裕層を対象にした商品づくり」という言葉を耳にするけど、その考えでつくられた商品、たとえば粒ごとに包まれた苺や梅や高額加工品、あるいは高級宿を手掛けている人たちは、その仕事で会うことになるお客さんたちが好きで、その人たちといると幸せで、満たされるものがあるのかな?

まあ余計な話か。Sweetpea Bicyclesに戻ると、検索で出て来た動画には十数年前のものが多くFacebookも2014で止まっていたので一瞬閉業を思い浮かべたが、Instagramでいまも彼女が仕事を重ねている様子を垣間見ることが出来た。
完成した納品前の自転車(おそらく)が並んでいる。ベースは同じだけど色やパーツが違うのでとても多様。1台1台の向こう側に、一人づつ違う誰かがいるのが感じられる。

何年前かわからないが、記事を切り抜いたのは、彼女の仕事の成り立ち方に共感をおぼえたからだろう。
〝自分のペースで頑張れる〟
〝相手が見える〟
〝手を使う〟
〝仕事の単位がはっきりしている(受注&納品)〟
〝乗っている姿を目にすることがあるかも〟

あと、女性たちのバイクを女性がつくっているのもいいな。最後の方の、彼女の「すごい満足感」という言葉がカッコイイ。