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環境に適応しようとする選手、適応しようとしない大人

 自然科学者チャールズ・ダーウィンが、生物の進化についてこのような考えを提唱していました。

 「環境に適さないものが淘汰されていく」

 これは、生物の進化における考えの一つですが、この概念は私自身とても大切にしているものです。

 サッカーの世界だけに限らないですが、どの世界も日々進歩し発展していく中で、変化していく環境に適応する努力をせず、自分が考えていること、経験してきたことだけが正しいと思いながら生きていく人ほど、いわゆる「時代遅れ」となってしまいます。

 今回は、選手たちの未来のために大人が邪魔になってはいけない、というお話をさせていただきたいと思います。


 子供と接するうえで、「置かれた環境に対して自らを適応させていかなければならない」ということを伝えられるかどうかは、子供と関わる人にとって大切な仕事の一つです。

 これは、スポーツの指導者だけでなく、学校の先生、親など、日頃子供に関わる全ての大人が考えなければならないことだと感じています。

 上記でもお話ししましたが、サッカーの世界も日々進化しており、またそのスピードはとても速く、その年のトレンドが次の年には昔の情報として扱われ、新しいものが次々と出てくるサイクルにあります。

 そして、今の選手たちは日々のトレーニングで学ぶだけでなく、SNSや動画配信サービスなどを通して、いくらでも「最先端」を見て学習することができる環境にあります。

 このように、色々な形で学び、新しい環境を理解しようとしている選手に対して、果たして関わる大人はどうでしょうか。

 時代が変化してきているにもかかわらず、「そのやり方は型にはめて自由を奪っている」「前にどんどん蹴らないと勝てない」など、未だにそういった言葉を耳にすることがあります。

 現代のサッカーは、ただシンプルに前へボールを蹴り、ドリブルをしてゴールを決められるほど簡単なものではありません。

 また、判断するうえでの基準を設けているだけなのに、それが型にはめているとなってしまう。

 このような「時代遅れ」な考えは、選手の適応能力を退化させ、足を引っ張る結果になってしまいます。

 私たちは、選手が環境に適応し、そこに結果が付いてくるまでには時間が必要だ、と認識しています。

 選手たちも、サッカーは複雑で、簡単にはうまくいかないんだということを肌で感じているはずです。

 しかし、いくら選手たちが感じていても、思考がストップしている大人のアプローチを受け続ければ、選手は環境に適応することなく置いて行かれることになるでしょう。


 育成年代でも、選手は「ゲームに勝つ」ということから逃げてはいけません。

 もちろん、指導者もそこを目指しながら選手にアプローチするべきです。

 「ゲームに勝つことを目指す」ことに今も昔もありません。

 しかし、現代のサッカーにおいて「ゲームに勝つ」には、フィジカル、テクニック、インテリジェンス、メンタルと、複数の能力が求められます。

 まだ体が小さく、能力が未熟な中学生が、いくら良いポジションを取ってプレッシャーをかけようとしても、近くまで寄せることはできません。

 テクニックやインテリジェンスが未熟な選手に、「絶対にボールを奪われるな」といっても難しい話です。 

 このように、大人が結果だけを求め、選手の能力を無視して感情を押し付けるだけでは、選手が環境に適応できないどころか、選手を潰す結果になってしまうと思います。

 高い基準を設定することは、チームにとって必要なことですが、そこには必ず時間を与えること、うまくいかないことが続いても決して諦めずにアプローチすることで、選手は最終的にその環境に適応できるようになり、「良い結果」が生まれてくるのではないでしょうか。


 現代の選手は、今の環境で生きていけるように必死になって努力しています。

 しかし、アップデートされていない思考で選手にアプローチすれば、選手がその環境で生きていくことは難しくなります。

 少しでも勉強をして、情報を集めたり、知識を得れば、そういったことが無くなるはずです。

 選手が環境に適応するまで時間を与え、そして大人が少しでも理解することができれば、選手は必ず成長していくと信じています。

 

 

 

 

 

 

 

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