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これからマスターデュエルで遊戯王を始めるキミへ - この門をくぐるものは一切の希望を捨てよ

全遊戯王プレイヤー待望の、OCG(国内版遊戯王のこと)完全準拠ルールのデジタルカードゲーム「マスターデュエル」がついにリリースされました。前から非公式でグレーゾーンな遊戯王ADSは存在していたものの、この手のOCG準拠ゲームたち(遊戯王オンライン、LOTDなど)はサービスが終わったり諸々問題があったりでメインストリームになる事がなく、今回のいい感じに他のデジタルカードゲームの良いところをパクったリスペクトした仕組みかつマルチプラットフォームで基本無料な登場はとても歓迎されています。

そんなわけで、プレイしやすくなった遊戯王を見て「いい機会だから始めて見るか!(あるいは再開してみるか)」と思った令和遊戯王に触れたことのない人たちも多いことでしょう。そう言う人間に向けた企業wikiは既に乱立して検索欄を汚染し、SNS上にも玉石混交の初心者向け情報が氾濫しています。それらはおそらく善意で書かれたものなのでしょうが、個々人のプレイヤーが自分の好きなようにやっているので、どうしても私自身には受け入れられない情報もあり、「こんな情報を初心者に伝えて良いのか?」と言う危惧があるわけです。ということで、この記事には私自身の偏見に則った真の(個人の感想)初心者向けガイドを書いていこうと思います。ちなみに私はどちらかと言うと緩めに遊戯王をやっており、経験年数は二十年ぐらいですが成果と言えるのは学園祭で行われた大学内サークル主催の大会で優勝した程度で、大規模大会で火花をちらしたりしていたりはしていません。広く浅く色々なカードゲームに触れており、遊戯王以外ではMtGのレガシー環境が一番好きです。本当は遊戯王だけでなくレガシーも勧めたいのですが、諸々の理由でカード一枚の値段が最安値で5桁6桁に達する異常な環境なので、諦めています。その点、紙の遊戯王はカードゲーム全体の中では意外と安い方なので(と言っても強めのデッキを組むと2万とかしますが)、マスターデュエルを機会にこちらも触れてもらえると嬉しいです。

ただし、先に前置きをします。この初心者向けガイドは、あえてハードルを上げて記述しています。何故ならば、遊戯王自体があえてハードルを上げたまま開発されているゲームであることは否定しようがないからです。そもそも、ほとんどのカードゲームはゲームが複雑化し過ぎないようにデザインが行われており、例えばMtGは「新世界秩序」と言うカードデザイン上の理念を提示し、初心者だけでなく既存プレイヤーに対しても必要以上の難しさ、というよりは面倒臭さを感じさせないようにしていると公式コラムに長々と書いてあります(https://mtg-jp.com/reading/translated/0004040/)これは決してMtGだけが例外ではなく、他の国内で人気カードゲームであるデュエルマスターズやポケモンカードでも、誕生から時間が経ってインフレした今もなお読みやすいテキストのカードが作られ続けています。そんな中で遊戯王は複雑さの解消を諦め、初心者の引き込みを派生ゲームである遊戯王ラッシュデュエルに丸投げすると言う非常に思い切った決断をしました。実際にマスターデュエルをプレイしてみれば、効果テキストが5行以上のカードが1ターン中に4枚5枚と使われ続け、それが手札やフィールドや墓地や除外ゾーンをひっきりなしに飛び交う様子を目にするでしょう。本当なら、初心者は遊戯王OCGなんかやらずラッシュデュエルかMtGかデュエマかポケモンカードをやれというのが最も真摯で妥当なアドバイスなのは間違いがありません。あるいは同程度の理解度の友人と一緒にプレイするなら複雑なゲームを理解しきれていなくても問題ないかもしれませんが、マスターデュエルは対戦型デジタルカードゲームであり、すぐに顔も知らない誰かの凶悪なデッキと戦わされるため、そんな悠長なことは言ってられません。それを承知した上であえて「知ったことか!俺は遊戯王がやりたいんだ!」という変わり者のみなさんを想定してこの記事は書かれています。



自分で調べる能力を付ける

いきなり丸投げするようなことを言いますが、カードゲームに限らず対戦ゲームで最も重要なことがこれです。カードやプレイングの流行り廃りは日進月歩であり、SNSでも動画サイトでも知人との会話でも何でも良いので情報を追っていかないと置いていかれます。そのうえで自分自身でも結論を出せなければならないのが難しいところです。この記事ではおすすめデッキを紹介していますが、そのデッキの使い方については特に説明しません。遊戯王wiki(https://yugioh-wiki.net/)を見るかnote記事や動画サイトで使っている人を探せばわかることであり、しかもその情報も刻一刻と古くなっていくので、最終的に自分なりに情報を精査した上で正解を模索していくしか無いからです。

プレイヤーの分類を理解しておく

MtGの開発者たちはカードゲームをプレイする人間を分類分けして、そのそれぞれに合わせたカードデザインをしていると言います。これは他のカードゲームにも当てはまるもので、あなたがどう言うスタイルで遊戯王を楽しむべきかの指針にもなります。もしあなたが初心者であれば自分がどれであるか今はピンと来ないと思いますが、今後自分の進路を見極める上で知っておいたほうが役に立つと私は思っています。

まずひとつ目の分類は、競技志向プレイヤー(スパイク)です。このタイプの人はお互いにデッキもプレイングも最高を目指し、徹底的に勝利を目指して対戦相手と切磋琢磨するのを好みます。マスターデュエルに限らずデジタルカードゲームのランクマッチを前提とした仕組みは、このタイプのプレイヤーとものすごく相性が良いです。最もマスターデュエルに向いたタイプの人種なので、何も気にせず好きなだけマッチングして楽しみましょう。

次の分類は、体験重視プレイヤー(ティミー)です。このタイプのプレイヤーはカードゲーム上で偶発的に興奮するような出来事が起こることや、友人と一緒に対戦して盛り上がることを好みます。これらの人は、勝率至上主義なランクマッチと相性があまり良くないことがあり、どちらかと言えばデジタルカードゲームもよりも紙のカードゲームで対戦相手と談笑しながら遊ぶほうが相性が良い傾向があります。

3つ目の分類は、独創型プレイヤー(ジョニー)です。このタイプの人はカードとカードの効果がおかしな相互作用をすることや、自分でコンボを考えてオリジナルのデッキを組むことを好んでおり、カードでの対戦そのものよりもデッキを組むことの方が楽しいなんて人も大勢います。遊戯王は開発陣が最初から想定して作ったコンボやデッキ、いわゆるデザイナーズコンボやテーマデッキが環境の大多数を締めており、このタイプのプレイヤーにとっては若干肩身が狭いところがあります。と言っても一切独創の余地が無いかと言えば決してそんなことはなく、最新弾の最新テーマが猛威を振るう中で古く特徴的な効果を持ったカードが頭角を現すことは決して少なくありません。

他にもゲーム性が好きなのか背景設定やアニメシリーズが好きなのかだとかいろいろな分類方法がありますが、今回重要なのは上記3つです。もし自分が競技志向プレイヤーだと思うのであれば、マスターデュエルは最高の環境をあなたに提供し続けてくれるでしょう。他の2つだとしてもこのゲームを楽しむことはできますが、地元のカード屋で仲間を見つけることで、さらに遊戯王や他のカードゲームを好きになれる可能性があります。どうかこのことだけでも覚えて帰ってください。また、上記の分類は決して不可分ではなく、ほとんどの人は大なり小なり各属性をすべて持っているものです。たとえば競技志向プレイヤーであったとしても、複数ある勝てるデッキからどれを選ぶかは他の趣味や愛着が少なからず影響してくるものです。

理不尽な先行展開との付き合い方

他の多くのカードゲームが「マナ」や「グレード」と言ったカードにコストや発動条件を加える仕組みによってゲーム序盤の動きを緩やかにしている一歩、遊戯王だけはその手の仕組みがほぼほぼ存在していません。「このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない」という書体のテキストがある程度ブレーキとして機能してはいますが、それでも他のゲームと比べれば尋常でない回転率がどのデッキでも当たり前のように1ターン目から発揮されています。

これは遊戯王の悪いところですが、同時に他のまともなゲームには絶対に真似のできない、唯一絶対の長所でもあります。他のゲームが7ターン掛けてやることを遊戯王は1ターン目からやっているわけで、つまりはカードゲームの一番美味しい所を下積みを全部スキップしてつまみ食いしているようなものであり、だからこそ遊戯王がカードゲームの中で一番好きだという人が大勢いるのです。これはカードゲームアニメを見るとより実感できるでしょう。ほとんどのカードゲームアニメでは序盤の数ターンは省略されがちなのですが、遊戯王だけは大抵ノーカットで演出されていて、なのに映像的な見栄えがずっと担保されたままデュエルが行われているのです。ほとんどのカードゲームの大会がマスターデュエルのような一本勝負であるのに対し、紙の遊戯王の大会が二本先取の三本勝負を採用できているのも、異様にハイスピードなゲーム性のおかげであることは間違いないでしょう。

というわけで遊戯王を続けたいと思うのであれば、否応なしに先行理不尽ゲーを当然のものであると受け入れる必要があります。そのうえでどんなカードを何枚採用すれば相手の展開を事前に止められるのか、あるいは後攻から絶望的な盤面を打開し逆転できるのかを常に考えていかなければなりません。そのための第一歩が相手ターンに手札から妨害を行えるモンスターの代表格である「灰流うらら」「増殖するG」を3枚ずつ集めることであり、2歩目、3歩目になって「原始生命態ニビル」や「無限泡影」のような追加の妨害、あるいは後手から盤面を捲くる「ライトニング・ストーム」や「拮抗勝負」、「禁じられた一滴」へと繋がっていくわけです。遊戯王をやっていて楽しい場面は多いですが、その中でも特に大きなものの一つが、相手の展開を最低限に留め、そこから逆転する場面です。ここまでたどり着くにはそれなりに経験値が必要ですが、あなたにあえてマスターデュエルをプレイしようとする覚悟があるなら、そう遠くないうちにこの感覚を味わえるだろうと信じています。

そして先行展開を対策すると同時に、あなた自身も先行展開で相手を圧倒する側にならなければなりません。そのためには相手の使う対策カードを掻い潜る必要があり、こちらの第一歩が「墓穴の指名者」「抹殺の指名者」によって相手の「灰流うらら」「増殖するG」を止めて理不尽を押し通すことになります。しかし指名者は都合よく毎回手札にくるわけではなく、どうしてもダイレクトにうららやGを食らってしまう場面が訪れます。展開に失敗した場合、返しの相手ターンで手痛い反撃を受け、今度は自分が打開する側に回ることになるでしょう。あるいは1ターンのうちに回しきられて負けてしまうこともありえます。そのような状況下でどうやって妨害の被害を最小限に押し止めるか、あるいは次のターンに負けないと割り切って展開を保留しターンを返してしまうか、難しい状況判断が必要になります。先行展開は単なるソリティアゲームでは決して無いのです。そもそも先行展開は成功すれば絶対勝てるなんてことはほぼほぼなく、本当に安定して1ターン目にゲームを終わらせるようなコンボは既に禁止制限で潰されきっています。先行展開を成功した上で、準備できた妨害カードを相手のどの行動にどう切っていくかの判断が真に勝負をわけることになります。相手の手札6枚は未知のカードであり、その内容を予測して適切に妨害カードを使用していくにはカードや環境に対する知識が求められてきます。

デッキの選び方

パックの買い方やカードの合成方法は詳しい記事に譲り、この項では初心者がどうやって自分のデッキを選んで使っていくかを説明しましょう。まず、前置きでさんざん書いたように遊戯王は現存する中でも特に複雑なゲームのひとつであり、初心者が自力でちゃんとしたデッキを組むのは残念ながら不可能と言っていいです。なので最初は結果を残している有力なデッキを真似し、足りないカードだけ他のレアリティが低いカードで置き換えて組むことになります。それを鑑みて、多くの親切な人達が初心者向けデッキの例を掲げています。が、中には「それを初心者に勧めるなんて正気!?」と感じさせられるような選出の記事が多く存在しています。それらを真に受けないための前提知識を、ここでは説明していきます。

遊戯王以外のカードゲームだと、たいていデッキは3種類に分類されます。敵を殴り倒す「アグロ」、場を支配して勝つ「コントロール」、特殊な方法で勝利を目指す「コンボ」です。遊戯王はその点で例外的なゲームで、「コンボ」「コントロール寄りのコンボ」「他の変なの」の3つで成り立っています。遊戯王のデッキは前提としてコンボデッキであり、その中で相性差が生まれているのです。「コンボ」は先述した理不尽な先行展開を行う中でも、初速に割り切って本当にゲームを終わらせに行くものです。「コントロール寄りのコンボ」はある程度強力な先行展開を行えるものの、その制圧力は100%勝てると言えるほど強固ではない代わりに、盤面を崩された後の2ターン目、3ターン目にもアドバンテージ(主に手札や場のカードの枚数差で計算される、ゲームの有利不利のこと)を活かしてゲームの主導権を握り返し勝ちに行けるものです。「コンボ」と「コントロール寄りのコンボ」の間は明確な閾値で隔たれているわけではなく、個々のデッキごとに制圧力や継戦能力に多様な差が存在します。これに加えて各々異なったメリットや弱点を有しており、他のカードゲームから見れば異常な「コンボしか存在しないカードゲーム」でありながら、絶妙な形でデッキ間の相性関係ができあがっているのは個々のコンボデッキが丁寧に個性付けされているためです。「他の変なの」は、端的に言えば自分が「遊戯王をしない」ことで相手に「遊戯王をさせない」で勝つデッキです。さきほど「灰流うらら」「増殖するG」を対策カードとして採用するべきだと書きましたが、相手の特殊召喚を抑制する増殖するGはほとんどのデッキに対し一定以上の効果を発揮する反面、一切特殊召喚をしないデッキに対しては一切発動機会が無く、ゴミにしかならないと言う欠点があります。「コンボ」も「コントロール寄りのコンボ」も回数の多寡はあっても特殊召喚を完全に避けることはほぼほぼありえないので、基本的に増殖するGが本当の意味で無価値になることは無いです。が、そういった遊戯王の基本を無視する思想で設計されたデッキは一切特殊召喚をせずに勝つ方法、あるいはGでドローしたカードを使う間もなくゲームを終わらせる方法を擁しています。この手のデッキは特殊召喚を捨てたことが原因で地のデッキパワーや柔軟性の低さという弱点を往々にして抱えていますが、相手が「遊戯王のデッキ」と戦うために採用したカードをまるまる無視することができ、無抵抗の相手を一方的に蹂躙することができるのです。こう書くと「他の変なの」が悪者のように見えてしまいますが、そういったデッキが存在できていることこそが遊戯王というゲームの自由度や多様性の証左であり、時にあえてそういう選択肢に手を出せるのも面白さの一部です。また、「コンボ」の中にも部分的に遊戯王的でない要素を兼ね備えたデッキは定期的に出てくるもので、例えば先行展開が可能ながら特殊召喚を一切しない「ふわんだりぃず」(マスターデュエルには未実装)は「部分的に遊戯王しない」ことを武器にしつつ「遊戯王している」と言えます。

もしあなたが初心者で、今後長く遊戯王と付き合っていきたいと考えているのならば、最初に使うデッキとして選ぶのは「コンボ」か「コントロール寄りのコンボ」のどちらかにするべきと言うのが持論です。遊戯王と他のゲームの違いがこのタイプのデッキに凝縮されており、また遊戯王の基本や定石を学んで楽しむならこれら以外ありえないと考えているからです。「他の変なの」もそれなりに楽しく、一部愛好家がいるのも間違いありませんが、「遊戯王をしない」ことで勝つこれらのデッキは上述の基本や定石を体感する上では全く役に立たたず、単に勝率が欲しい競技志向プレイヤーや変なデッキが好きな独創志向プレイヤーが使うならともかく、これから「遊戯王をしたい」人には全く適しません

以上を踏まえ、まずは私のおすすめするデッキから挙げていきましょう。

おすすめ1:プランキッズ

上記の分類の中では「コントロール寄りのコンボ」に位置するデッキで、「プランキッズ」と名のつくモンスター群を利用し、リンク召喚と融合召喚を使って盤面を作ったりアドバンテージを稼いで勝利を目指します。エクストラデッキからの召喚方法の中でも特に自由度の高いリンク召喚を使う関係上、とりえる選択肢が多いので初心者に混乱を招く部分はありますが、1ターン目に制圧用モンスター「プランキッズ・ハウスバトラー」を繰り出すための基本的な展開パターンさえ把握すればある程度使いこなせるようになります。
このデッキのいいところを箇条書すると、

  • リンク召喚はこのゲームにおいて極めて多用される召喚方法なので、それを体験できるだけでも特筆に値する

  • うまく回せば自分のターンで数えて2~3ターンで決着をつけられるので、ランクマッチをこなしていく上でストレスが少ない

  • 手札1枚から固定の展開パターンに入ることが可能なカードの枚数が非常に多く、手札事故を起こす可能性が極めて低い

  • デッキ内の主要ギミックが20枚未満に収まるので、環境に合わせて20枚以上好きな対策カードを投入でき、一本勝負のマスターデュエル環境と相性が良い

  • このデッキでしか使わないカードが低レアリティに偏っており、無課金のプレイヤーでも構築しやすい(特に、このデッキでしか使わないURは3枚で十分)

  • 紙のほうの環境で長く活躍してきた実績があり、また致命的な規制を食らわないことも内定しているので(マスターデュエルのカードプールや禁止制限レギュレーションは紙の一定期間前の状態になっている)長期間最前線で戦い続けることができる

というような具合になります。
逆に欠点を挙げると、

  • 多くのデッキに最大数まで採用される「灰流うらら」「増殖するG」をどちらもクリティカルに食らってしまうので、手札から飛んでくるカードの対策や、直撃した際の妥協が必要

  • 1ターンに1度の通常召喚にデッキの動きが依存しているので、場のモンスターを除去するカードをローリスクで繰り出してくるタイプのデッキ(ドランシア入り十二獣や、その他の罠が多いデッキ)と相性が悪い

  • テーマ内外のリンク召喚を多用する性質上、モンスターをどこに配置するかや何をいつ召喚するか、そしてプランキッズ以外の特殊召喚に対するデメリット制約のある「プランキッズの大暴走」の発動タイミングが初心者にとって難解になりうる(逆に言えば、今後遊戯王をプレイする上で絶対にぶつかる壁に挑める点で、メリットでもある)

  • イラストがデフォルメの効いたかわいらしいマスコット系のデザインなので、かっこいいドラゴンと戦士とか美少女とか使いたい人の好みに合いにくい

というような感じです。
私自身もマスターデュエルで主に使っているデッキであり、このデッキの強さと事故率の低さのお陰で数敗しかせずにプラチナに到達することができました。

多くの自由枠に手札誘発系妨害と誘発対策、そして後手から盤面を捲くる為の大量除去カードを投入したもの。

おすすめ2:鉄獣戦線トライブリゲード

マスターデュエルは紙の遊戯王のいくらか昔の環境であると前に書きましたが、ではその当時の紙の遊戯王で最強だったデッキは何か?と言えば、それは「電脳堺」と言う「(展開に傾倒したタイプの)コンボ」です。しかし電脳堺には「デッキの構築がほぼほぼ固定化しており、後からカードを足すような柔軟性が皆無」「1枚でコンボを始動できるカードがなく、比較的事故率が高い」と言う弱点があり、マスターデュエル環境に対する適正があまりないように感じています。そこで私が勧めたいのが、電脳堺に続いて二番手のポジションにいた鉄獣戦線です。こちらはLLリリカルルスキニア十二獣じゅうにししと言った他のテーマを混成させられるぐらいにデッキ内のスペース的な余裕があり、よりマスターデュエルと相性が良いです。
例によって良いところを箇条書きにすると、

  • 前述のようにデッキ内のフリー枠が多く、対策カードを投入しやすい

  • リンク召喚と、墓地除外による擬似的な墓地リンク召喚を扱えるので、行動の選択肢が多く様々な状況に対処できる

  • 初動カードが多く、事故りにくい

  • 自己特殊召喚能力を持つ「鉄獣戦線 ケラス」のおかげで、通常召喚したモンスターが除去されてもなお展開し続けることが可能で、単体除去による妨害に強い

  • 「鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ」、「戦華盟将-双龍」、「アクセスコード・トーカー」、「天霆號アーゼウス」と言った優秀な除去カードの他、「禁じられた一滴」のコストを捻出しやすい構成上、理不尽な先行展開に対する打開能力が高い

  • 相手に対策カードを使われた場合の「妥協プラン」が取りやすく、特に十二獣を採用した場合はドランシアを利用することで「灰流うらら」「増殖するG」どちらにも対処できる

  • 「鉄獣の抗戦」を擁しているため、展開後の盤面がモンスターゾーンと魔法・罠ゾーンの2段構えで構築でき、相手側に「対モンスターのカード」と「対魔法・罠のカード」両方を要求できるので、安心感が強い。しかも鉄獣の抗戦で復活し墓地に行くモンスターの効果によって後続まで確保できる

  • 例によって紙の環境で長らく致命的な規制を受けず使われ続けているので、長く楽しめることが内定している

  • 主要な背景ストーリーと密接に関わっており、今後のアップデートでソロモードのストーリーに星遺物関連テーマ相当の重要度で登場すると思われるので、それに興味があるプレイヤーなら二重に楽しめる

というように、元々環境上位であっただけあって多くのメリットがあります。
逆に欠点はと言うと、

  • プランキッズよりも更に選択肢が多い分プレイングミスしうる場所もより多い(特に相手の対策カードを予想して動かなければならない場合)

  • 始動パターンが開始するカードによって異なるので、固定の1パターンさえ覚えれば安心、とは行かない(ただ基本的にはベアブルムをリンク素材として墓地に送る等して鉄獣の抗戦を手札に確保さえできれば良い)

  • 形成する盤面はそこまで絶対的ではないので、ある程度巻き返さた上で返しにまた捲くる前提でプレイする必要がある

  • 鉄獣の抗戦1枚による除去とアドバンテージ獲得がデッキのキモであり、何らかのカード(たとえば「屋敷わらし」や、ミラーマッチにおける「抹殺の指名者」)でこれを潰された際に受ける被害がとても大きい。といってもこのカードを止める手段はそう多くないので、普段は気になりにくい

  • 紙の環境で暴れていたので対策する側もこのデッキについての造詣が深く、またエルドリッチや電脳堺の対策で使われうる「アーティファクト-ロンギヌス」がこのデッキにも刺さってしまう

  • 十二獣ドランシアはそう遠くないうちに紙環境同様に禁止カードになる可能性が高い

みたいな感じです。

おすすめしないデッキ

上記とは逆に、初心者に勧められがちながら個人的には絶対やめた方がいいと思うデッキを例示します。前述のように「コンボ」でも「コントロール寄りのコンボ」でもない、「他の変なの」が該当します。

まず一つ目が、各界で話題になっている「エルドリッチ」です。このデッキは構築に必要なコストの低さと単純な強さ、プレイングの単純さで人気を博していますが、遊戯王的なエクストラデッキを使った盤面形成や逆転はほとんど楽しむことができません。十年以上前の昔の遊戯王はエクストラデッキを利用しないデッキが多く、その当時のプレイヤーにはエルドリッチ的な罠を駆使して戦うスタイルに郷愁と愛着を感じる人も多くいますが、令和の遊戯王シーンを体感していきたいなら明らかに間違った選択肢です。

次が後攻から盤面を破壊し尽くし相手のライフを削り尽くすことを目指す「ヌメロン」や「壊獣カグヤ」です。誰もが先行を取りたがる中で率先して後攻を取る構築にすることでコインを投げる段階から優位に立つことができ、また勝つときは1ターンでゲームを終わらせるのでランクマッチを何戦もこなす際に思考の疲労や対戦にかかる時間を極限までカットできるので、対戦数がものをいう環境には強い適性があります。先行での盤面形成をほとんど考慮しないこれらのデッキのプレイ感は他のあらゆるデッキと乖離したものがあり、また大味なプレイスタイルはプレイングよりもデッキどうしの相性に左右されやすい傾向があります。初心者がゲームに慣れていく上では、やはり不適当でしょう。

また、「コンボ」や「コントロール寄りのコンボ」であっても、古すぎたりカードパワーが足りなかったりするデッキを使うことはあまりおすすめできません。あなたの対戦相手が見知った友人や、原作アニメが好きな人の集まりであれば問題になりにくいのですが、マスターデュエルでランクマッチをする上ではハンデにしかならず、ゲームの基本や楽しさを味わおうにもカードの能力の低さがそれを許してくれません。どう言い繕おうとも人は勝つのが楽しく、また勝てなかったとしてもそのために試行錯誤できるからこそ楽しいのです。そのためには対戦相手と対等なパワーレベルのデッキを握ることが必要不可欠であり、顔を知らない相手と戦うランクマッチでは極力強いデッキを握るのが一番の近道になります。

まとめ

再三言いますが、遊戯王は初心者向けのゲームではありません。遊戯王だけが持っている面白さの中の決して少なくない部分が、初心者を突き放すことによって維持されていると言っても過言ではありません。突き放された初心者の受け皿としてラッシュデュエルが存在しています。それを承知の上であなたがマスターデュエルを、遊戯王を始めようとするのであれば、私は最大限に敬意を持って歓迎します。

この記事では省きましたが、「チェーンの仕組みにともなう不可解な処理」や「空打ち不可能なルールにともなう不可解な制約」、「ダメージステップの発動制限による不可解な条件」といった初心者を泣かせるために作られたとしか思えないようなルールがわんさか存在しています。それでも、わざわざここまで読んでくれたあなたであれば、そのうち理解して乗り越えることができるはずです。


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