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面白いけど続きがまず望めないWeb漫画3選

私は学生の頃から、ネット上で誰かが無料で公開しているタイプの漫画をよく読んでいた。2chがまだまだ元気だった当時、そう言った漫画は個人サイトや非営利の投稿サイトに存在しているものだった。いつしか出版社による青田刈りが始まり、裏サンデーやらとなりのヤングジャンプやらで新都社等の英雄たちが羽ばたいていったのも良い思い出である。有名所だとみんな大好きチェンソーマンの藤本タツキ先生も新都社に作品を投稿していたりした、ムリゲーとか傑作なので読め。

さて、そう言った個人が趣味で投稿している漫画と言うのは、売上都合による打ち切りこそ存在しない代わりに、他のあらゆる要因でいつの間にやら更新が途絶えてしまう事が本当によくある。所謂エターなると言うやつだ。作者が出版社によって引き抜かれて終わるのならば万々歳だが、ほとんどの場合理由もわからず立ち消えて、「飽きたのかな?」「まさか事故にあったんじゃ……」なんて答えのない想像を巡らせる事しかできない。

今回はそんな中から、個人的に特に面白く、特に続きが楽しみで、特に復活を望み続けている作品を3つ選んで紹介する。「3年以上音沙汰が無い」事を条件としており、作者の生存が確認できたり、打ち切りの旨が発表されているものは選外とした(また、権利関係がヤバそうだったり下ネタやら例のアレネタやらが満載のものも今回は避けた)。当然だが何らかの奇跡によって続きが発表される事もありえるとは思うし、自分もそうなって欲しい。もしあったら教えて下さい。選出対象が新都社に偏っているのは私自身が寡聞である為で、探せば個人サイトだろうとTwitterだろうと他の面白い(かつエターなった)作品は出てくる事であろう。是非ともこの記事の読者にも選出作品の面白さと、その続きが無い虚無感を追体験して欲しい。

ちなみに選外の更新停止してそうな作品だと、百鬼装甲ガシャドクロとか8月ムゲンの続きの88月∞ムゲン勇者不在につきまして。とかが好き。

GAME

映画The Salute of the Juggerを元ネタにしたスポーツ(?)漫画。殺伐とした世紀末な世界観で、主人公は父の影を追って血なまぐさいゲームに挑んでいく。登場キャラクターは獣人で、元になった動物由来の特技をそれぞれ持っており、能力バトル的な側面も持ち合わせている。

途中で終わってしまってはいるが、第一部的な部分は完走した上で終わっているので喪失感は薄い(人間病なんかもそうかも)。もし続いていればチームを組んで残酷な社会に向かって挑んでいく感じの話になったのかなあと思いを馳せたくなる。

Alice in the BigCity

不可思議な雰囲気の街を少女が歩く感じの漫画。それらしい背景設定があるようにも見えるが、雰囲気だけで十分楽しめる。ものすごい伏線や表現みたいなものがあるとかではなく、ただ雰囲気が気持ちいい。ゲームでも漫画でも、こう言う異世界の散歩感のある作品が私は大好きなのです。更新が止まっていると言っても、元々一話完結でストーリーがどうこうみたいな作品でも無いのでまあいいやみたいな気持ちにもなる。

同作者によるSHEENAは雰囲気が近い上に完結まで描かれているので、こちらもおすすめ。

命令するな

ぶっちゃけこの記事はこの作品を紹介したいが為に書いている。ドラクエ的なJRPGファンタジーを下敷きにした作品で、タイトルもドラクエの「めいれいさせろ」から来ている。魔法が大得意な主人公マジュは自分の実力を試したいが為に勇者パーティに加わるのだが、勇者がこれでもかと言うぐらいケチで、お金だけでなくMPすらも徹底的に倹約されてしまい、ろくに魔法を使わせて貰えないギャグ漫画である。が、ちゃんと読み込んでいくと物語の端々に伏線が張り巡らされている事に気づくだろう。段々とこの漫画がただのRPGのパロディ漫画ではない事に読者が気づき始めたあたりで、勇者パーティの行く末を大きく左右する大事件が起きる。そしてついに伏線回収が始まり……そこから漫画の更新が止まってしまった。

伏線が丁寧なので、最後まで読めばこの漫画に仕掛けられた仕掛けの正体についてはだいたい察する事ができるだろう。しかしそれが全て明らかになった後、主人公や勇者、そしてパーティの仲間たちはどのような選択をするのだろうか。ここまでの伏線や伏線回収(途中まで)がとても面白いだけに、この先の展開もきっと面白いものになるのだろうと期待させてくれるのが却って罪深くも見えてしまう傑作である。


と言うわけで、個人制作フリーWeb漫画道はお金こそかからないものの、唐突に訪れる終焉からくる虚無感との戦いである。品質自体も「ハンターハンターが下書き連載だって?オレはそんなもの見慣れているよ」みたいなものが大半だが、探せば探すほど光る原石が現れてくる喜びもある。だからこそ、それが突然無くなってしまう悲しみもひとしおである。お金で信用を買うのは、そう言う面での安心も担保できているのだと思い知らされる事だろう。しかし所得のない学生の頃の自分にはそんな選択肢は無かったし、社会人になってもなお当時の趣味の延長線上で、いつ消えてしまうとも知れない輝きを見つけては一喜一憂している。

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