なぜLUUPは「街のインフラ」になることができるか
こんにちは、Luupの社長の岡井です。
前回のnoteを公開してから1ヶ月ほど経ちましたが、新年の挨拶を兼ねて、今日は小型電動アシスト自転車でスタートしているシェアモビリティサービスLUUPでの取り組みを例に、LUUPがどのように「街のインフラ」を目指しているかを話します。
目標を口にするだけでは誰でも言えるのに対し、実際に実行し実現することはその数千倍も難しいのです…。なので、具体的に「どんなことをしてきていて、今後していくのか」を紹介することでLUUPが口先だけでないことを少しでも証明できればと思っています。
おまけで、スタートアップがインフラを目指すことで直面するその苦難も感じてもらえると幸いです(笑)
すでにLUUPを使ったことのある方は「あぁ、あの機能はそーゆーことね」と、そうでない方は「LUUPは他のシェアサイクルとはそんなとこが違うんだね」と、読んでいただけると嬉しいです!
そもそもLUUPというサービスとは
「LUUP」は、小型・電動・一人乗りなマイクロモビリティのシェアリングサービスです。
現在、小型電動アシスト自転車を用いた次世代シェアサイクルを、渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、品川区、新宿区の6エリアで展開しています。2020年5月25日、東京の緊急事態宣言が明けた日にサービスを開始してから、自転車数もポート数も拡大を続けており、今では200を超えるポートが街にあります。(ポートとは、LUUPのモビリティを借りたり返したりすることができる場所のことです。)
将来的には、自転車を電動キックボードや3~4輪の新しいモビリティ(ご高齢者も乗れるようになります!)に置き換えていき、幅広いニーズに対応したいと考えています。
LUUPは「街のインフラ」であり、街の皆様にもそう思ってもらえることを目指す
僕はLUUPというサービスについて考える時、「街のインフラを目指す」という視点を忘れないようにしています。
インフラとはつまり、社会生活の根底となる基盤を指し、相応の社会的な責任があります。
ご利用者様に対して、永続的に「安心」と「利便性」を提供する責任があることは当然だと考えています。
しかし、それだけでは足りないのです。
LUUPのサービスに関わる人々は、「ご利用者様」以外にも「ポートを貸してくれる街の方々」、常に街の安全と経済を考えている「自治体の方々」「エリアマネジメント関係者」「町内会の方々」「地元警察の方々」、そして「そもそもその街で生活をされている歩行者や運転手の方々」が該当します。
そのように、街の皆様全員から「LUUPはこの街のためにあった方が良い」と思ってもらえることこそ「街のインフラ」になることの条件だと考えています。
LUUPはそんな立ち位置を目指します。
LUUPは採用しませんが、海外の電動キックボードシェア事業者のように自治体や警察そして街の方々と「揉めながら」事業成長を最優先に目指すことも戦略としてはあり得ました。
(参考:サンフランシスコやミルウォーキーの事例がありますね。)
しかし、街の皆様から好かれ続けることで初めて、LUUPのサービスは本当の意味の利便性を提供できるという確信があります。
以下で、そのためにLUUPが取り組んできた機能、新しく追加する機能をそれぞれご紹介させていただきます。
「街のインフラ」としてこれまでLUUPが気をつけてきたこと
「街のインフラ」になるまではまだまだ道半ばですが、サービス提供を開始して半年間、これまでどんなことに気をつけてきたか、いくつかの工夫をご紹介します。
1. ポートにモビリティが溢れないための「目的地ポートの予約機能」
LUUPでは、機体を返却するポートを先に予約する必要があります。ポートごとにキャパシティが決まっており、どのくらい空きがあるかがアプリからリアルタイムで確認できます。目的地付近のポートに空きがあることを確認し、その場所をアプリから予約してもらう機能を採用しています。
機体を返却するポートをライド開始前に予約する機能を採用しているシェアサイクルは世界的にみても弊社のみです。
確かに、ご利用者様目線で考えると少し面倒な機能です。目的地付近に空きのあるポートがなければ、別のポートを探し出して予約する必要があります。
しかし、街やポートオーナー目線ではとても大事な機能でもあります。ポートのキャパシティを超えて自転車が置かれてしまうと迷惑がかかりますし、景観も崩れるためです。
乗る人にとっても、結果的に目的地ポートに到着したあとで返すスペースがない、という問題を避けることができるので、結果的にはwin-winだと考えます。
このように「短期的な売上」ではなく「中長期的な街の皆様からの信用」をとることこそ、インフラへの第一歩だと考えています。
2. ポートからモビリティがはみ出ないための「停車後撮影機能」
ライドを終了する際、ご利用者様には必ずポートにモビリティを停車している様子の写真を撮影してもらっています。アプリ内で写真を提出しないと決済に進めないようにしているのです。
ポートからはみ出る形で返却をしてしまうと、ポートオーナーや歩行者に迷惑がかかります。次に使う人も良い気にはならないでしょう。
先ほどの機能と同様、ご利用者様の利便性を少し阻害してしまうステップではありますが、広い目線で全体最適を考えると、やはり必要な機能だと思っています。
LUUPでは、停車後に撮影いただいた写真を確認し、綺麗に停車されているか、枠線からはみ出ていないかの確認をしており、対処が必要な場合は適宜対応しております。
こちらも、売上のことを考えると本当はやりたくない施策です…。インフラになるためにやるのです。
3. 雨天時や体調不良時のための「ポート外停車機能」
最後に、「ポート外停車機能」です。モビリティに乗っている最中に体調不良になってしまったり、急な悪天候に襲われたりなど、トラブルが発生した際を想定した機能です。
どうしても降りないといけない緊急事態を想定して、「ポート外停車」という機能を用いることができます。スタッフによるピックアップを行うための追加料金がかかってしまいますが、ポートでない場所でもモビリティから降りることができます。緊急事態の際には率先してご利用ください。
現在は、追加料金として150円支払っていただく設計になっております。(街の安全を加味して、今後予告なく変更になる可能性がございます。アプリ内から最新状況は確認可能です)
もちろん、端に寄せたり、ポート外停車時の写真撮影が必要です。スタッフによるピックアップも迅速に行わなければいけません。しかし、街のインフラを目指す以上、乗っている方の緊急事態にも対応できる体制構築が必須なのです。
再三になりますが、緊急時には率先してご利用ください。道の端などに綺麗に停めていただければ、追加料金がかかる以外にご利用者様に不利益は何一つありません。
こちらも本当はやりたくないこ(略)
しつこいですね。インフラになるためには必要なことなので、Luupとしては当然取り入れます。
[2021年12月6日追記] 2021年11月22日(月)に、ポート以外の場所での機体返却機能の提供を終了いたしました。
今回新しく追加される機能
直近のアプリアップデートでは、iOS版において以下の機能が新しく追加されています。(Android版では追って実装予定です。)
1. 他のご利用者様がポート外停車機体に乗ることができるようになりました
ポート外停車機体に対して、これまではLuup関係者が回収に行っていましたが、場所によっては回収に時間がかかってしまうことが多々ありました。
そこで、より早く回収を行うべく、付近にいる他のご利用者様がポート外停車機体に乗ることができるように変更をしました。
結果として、全てのご利用者様の利便性も上がると思いますので、ぜひ街中で緊急でポート外停車された機体を見つけた際には運が良かったと思ってご利用いただけると幸いです!
2. ポート外停車禁止エリアの仮設定を行いました
歩行者の安全のために、人通りの多い道などでのポート外停車を避けるために禁止エリアを設定しました。
アプリのマップ画面を開くと、目につくピンク色のエリアがこちらに該当します。
こちらに関しては、「雨天時などの緊急時にすぐに機体を止められない危険性」と、「道を走行する歩行者の方々の歩行の妨げになる危険性」のトレードオフとなってしまうため、街全体の安全性を考慮した上で、利用者と歩行者どちらもの安全性を向上させるために、今後検証を真摯に進めながら狭くしたり広くしたりして参ります。
技術上の限界として、GPSには数メートルの誤差が存在するため、禁止エリアの境目の少し内側において停車が可能になってしまう(逆に禁止エリアの境目の少し外でも停車が不可能になってしまう)などの事象は起こりえてしまうのでこちらはご了承いただけると幸いです。
3.(今後実装予定)やむを得ずポート外停車をした場合、一定時間以内に自身または他のご利用者様が乗れば「回収のための追加料金」がかからなくなるタイマー機能を設計
上でご紹介した機能1.の応用です。
具体的には、ご利用者様が緊急時にポート外停車をした際に、その後すぐに自分または別のご利用者様がその機体を乗った場合は「回収のための追加料金(現在150円)」をかからなくしてあげよう、というものです。
次のご利用者様がすぐに決まれば、弊社としては回収に向かわなくて済みますのでその分の「得」をご利用者様ご本人に還元するのは当然と言えます。
こちらは今後実装を予定しています。
「街の人々の安心感」と「ご利用者様の利便性」どちらもLUUPにとって最上級に重要です。そのどちらもを達成するために、今後もアップデートを重ねてまいります。
今後の進め方
LUUPは、このように「街のインフラ」として信用していただけるよう、色々な新機能を試していきます。
くどいですが、LUUPは今回ご紹介したように「短期的な売上」ではなく「中長期的な街の皆様からの信用」をとることこそ、インフラへの第一歩だと考えています。
そしてLUUPは、ただインフラを目指すだけでなく、インフラを目指す改善を「最速で」行っていくことで、「LUUPはスタートアップなのに安心できるね」ではなく、「LUUPはスタートアップだからこそ安心できるね」と街の全ての方々に感じてほしいと考えています。
引き続き、暖かく見守っていていただけると嬉しいです。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。大変な時代ですが、皆様ご自愛ください。