インド放浪記11 　　トラ・トラ・トラ

「へい・モーニン～～～トラ！」
む～んとした気だるい暑さの中に曇り空から晴れ間が覗いていた
「イエス・サー！トラ・トラ・トラ・・・」
毎朝通ってる軽食屋はインド人３人兄弟が助け合いながら運営していた

ここには僕以外に２人の日本人が通っている
そして先日から日本人を見ると～直立不動の姿勢を取り
トラ・トラ・トラと挨拶するようになった

「なんだよぉ？
そのトラ・トラ・トラ・・・って？」

日本映画を見てきたらしい
真珠湾攻撃の映画だったらしい
それを見てヤンキー共を日本兵がやっつけてくれた・・・！
と笑顔と尊敬の眼差しで僕たちを見るようになった

それまでは・・・、ジャップ！とまでは言わなかったけど
泳いだ目で、あぁ～、なにを喰う？
という態度がその映画で一変した

外国にいると国籍を軽蔑されるのか尊敬されるのか？
これが凄い感覚で響いてくるものだ
僕はそれを当時のインドで知った

昨年も、チベット（中国）からの亡命者と京都であったとき
日本人のおかげだよ・・・といわれたのは、日本が欧米と
肩を並べてくれたおかげで僕たちアジア人がアメリカでも
ヨーロッパでも一人前の顔して歩けるようになった！

僕が商社勤務で初めてヨーロッパに出張した際
相手の白人のマネージャーと商談中に、笑顔で今晩時間あれば
食事どうかね？と誘われたので嬉しくてひとつ返事で呼ばれた

相手の年がおやじ程度だったので変に安心してリラックス
できてたのだが、その時、その紳士は言った
「日本人も変わったものだなぁ～
君は僕たちと対等に喋っている・・・僕は日本に偏見など
ないから逆に気持ちがいいよ。頑張れよ！」という感じだった

日本では普通の日常会話に戦争の話など出る訳がない
ある意味で歴史が断絶してる世界でも奇妙な現象なのだけど
海外ではアジアでもヨーロッパでも歴史が当然のごとく続いている
なので平気で戦争の話が飛び出してくる

そして話は戦争の話ですよ～といった特別なくくりなどなく
普通の日常の気持ちと連動していて・・・だから、ジャップなどと
同席したくないとか、日本の武士の兵士を知ってる～んだ尊敬に
値するほど立派だ！と時間の流れが断絶していない

たとえばフランスの田舎の喫茶店に入ると
爺さんがやってきて・・・、どこから来たんだ？
そうか、俺の先祖はなぁ～ナポレオンの軍隊にいて、ここで
戦ったんだ・・・などと平気で話す

「ヘイ、ジャック　　　元気～？」
最近、少し痩せたようだ。髪も少し短くしたようで額に垂れた赤毛の縮れ毛の間からブルーの目をギョロギョロ動かして、こちらを見た

「このクソ暑いのは～俺には向いてないなぁ～」
髪を掻きながら椅子に座った

「ビザはまだあると言ってたな・・・」
「どうしんだ？　もう残ってないのか？」
「・・・なんか方法ないか？」

「OK!　聞いといてやるよ・・・」
「ありがとう」

ヒッピーの群れに入って最初に驚いたのは
まるでスパイ大作戦のような情報網だ！
昔、中学の頃に漫画で読んでことがある
乞食の情報網はマスコミなど屁でもないという
それは漫画の話なんだろう？と思っていたが・・・ヒッピーの
情報網がまさにそれなのだ
日本の鉄道よりも正確無比でしかも無料

３日ほど後にOOの街に行くのだけど、宿はどこがいい？
と誰かに聞いておくと、誰かが明日が明後日に教えてくれる
OOという宿にOOという人がいる
値段はOO程度だ
だからガイドブックなどまったく不要

「マギー！」
「おはよう～、よく寝た？」
頭を掻きながら・・・「あぁ～、今日も暑そう・・・」

白人というのはあっさりしてるとインドで思った
何いっても興味なければ・・・知らん顔してる～けど
別に怒ってるのではない
興味がある時は一気に距離を縮めてくる

ネコの感じかな？
と思う。日本人はイヌの感じかな？
日本人は体臭が薄く、しかも清潔好きだけど
白人は体臭が濃い・・・そして汗とフケに塗れても
意外と平気だ

５分も歩けば汗を掻く
そんなの気にしない集団の中では慣れるのに時間がかかる
・・・深いお付き合いの中には、その匂いが溜まらない
という白人が意外と多いのは普通の日本人感覚では
なかなか慣れれるものじゃない

「ケン・・・。昼からどうするの？」
ナンシーが通りから話しかけてきた
「あの寺に行くの・・・？」
「ジミーも行くと言ってるの、よかったら一緒に行こう！」

僕は親指で合図を送り、ウインクをした
彼女はセクシーに顎で返事を返してきた
ブラのないオッパイがシャツの下で揺れた

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