第一回サムネ

なぜ楽天は最下位→翌年CS出場できたのか【打者編】

 お疲れ様です。ルパン22世です。

 2019年度公式戦がすべて終了し、CSの季節となりました。今年はセパともに3位争いが非常に激しかったことが印象的です。結果として、セリーグでは阪神が0.5ゲーム差で、パリーグでは2ゲーム差で楽天がCS出場を果たしました。

 この2チームの共通点は”昨年度最下位だった”ということです。
 昨年度最下位だったチームが、1年で3位まで順位を上げることができたのはなぜでしょうか。

 この記事では楽天に着目して、その理由の考察をしていきます。
 また今回は【打者編】として、打者の打撃、守備面を分析していきます。

 なお、今回の分析では「*WAR」「*OPS」「*UZR」という指標を用います。

*WAR (Wins Above Replacement):
 打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標である。同じ出場機会分を最小のコストで代替可能な控え選手(リプレイスメント・レベルの選手)が出場する場合に比べてどれだけチームの勝利数を増やしたかによって計算される。
*OPS(On-base plus slugging):
 打席あたりの総合的な打撃貢献度を表す指標。
*UZR(Ultimate Zone Rating):
 UZRとは同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べてどれだけ失点を防いだかを表す守備の評価指標である。
1.02 Essence of Baseball より引用

 今回の構成は以下の通りです。

1. 昨年度との違い

 昨年と今年の主な指標の違いを分析するために、昨季と今期の成績を比べます。
 特に印象的な指標を色付けしています。

201819成績比較1

201819成績比較2

201819成績比較3

 かなり成績が上がっていることが分かります。
 特に打撃面では2ベースヒットの増加による長打率の増加、四球の増加による出塁率の増加、そしてこの2つの指標の増加によるOPSの増加が顕著です。
 また打点・得点も昨季より増加しました。

 また守備を測る指標のチームUZRもかなり増加しています。これは西武(35.5)に次ぐリーグ2位です。

 しかし、盗塁数は昨季から21減ったにも関わらず盗塁死は1しか減っていません。つまり、盗塁成功率が64%→56%に悪化しています。そのため走塁に関する指標(*wSB, *UBR)は断トツでリーグ最悪となっています。
 チーム方針として盗塁<打撃に重点を置いている可能性はありますが、石井GMの発言によると次期監督には走塁面での貢献を求めていると考えられるため、来季からの改善点と言えるでしょう。

*wSB(weighted Stolen Base runs): 盗塁を試みた事によりどれくらい得点に貢献したかを表す指標
*UBR(Ultimate Base Running): 盗塁以外の走塁でどのくらい得点に貢献したかを表す指標

 これをまとめると、
①OPSが増加した(2ベースヒット・四球の増加)
②UZRが増加した
③打点・得点が増加した

 この3つの部分が昨季から変化した部分だと分析できます。

 ではなぜこれらの指標が上がったのでしょうか。
 次項ではこの理由を分析していきます。

2. 仮説①「新加入選手の活躍」

 まず考えられるのが、2019年度に新加入した選手の活躍によって指標が変化したのではないか、ということです。
 この仮説を検証するために新加入選手の成績を分析します。

 以下が新加入選手の主な成績です。

2019年度新加入選手成績

 浅村選手、ブラッシュ選手などの補強選手を含め、9人中5人の選手がWARにおいて+の値を記録しています。
 また1年目捕手として55試合に出場しUZR 1.0を記録した太田選手、WARは+ではないものの、70試合以上に出場し、満塁時打率 0.500(6打数3安打)という好記録を残した渡邊選手の活躍も光りました。

 その中でもWARが大きく+だった選手の今年度の活躍について少し振り返りたいと思います。

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 ① 浅村選手

画像3

 浅村選手の今季の成績は以下の通りです。

浅村2019成績

 西武から楽天へFA移籍した今年度は主に2塁を守り、唯一の全試合出場を果たしました。

 今季も変わらぬ活躍を続け、チームトップのWAR 6.1を記録しました。
 四球93個、本塁打33本はチームトップ、また2塁打26本もチーム2位の成績を残し、チーム全体の指標を上げています。

 得点圏打率は高いとはいえないものの、チーム2位の打点を記録。その理由としてリーグ2位の犠飛を記録し、チャンス時に「最低限をこなした」ことが大きいと考えられます。

 ② ブラッシュ選手

画像4

 ブラッシュ選手の今季の成績は以下の通りです。

ブラッシュ2019成績

 ブラッシュ選手は2019年度にエンゼルスから楽天に加入した、独特なフォームが印象的な長距離バッターです。
 今年度はチームトップのOPS 0.936を記録し、加入1年目から助っ人外国人選手としてすばらしい活躍をしました。
 浅村選手とともにチームトップの33HRを放ち、四球もチーム2位の81個を記録しています。

 チームトップの打点を記録したブラッシュ選手ですが、浅村選手とは異なり得点圏打率が非常に高いです。また浅村選手は93得点を記録しているため「浅村選手が出塁しブラッシュ選手が返した」ため打点を多く記録できたということができます。

 個人的にですが、2HRで試合を決めた試合があったからこそ3位に食い込めたんだと思います。
    ホームラン確信歩きがカッコよすぎですね。

 ③ 辰己選手

画像5

 辰己選手の今季の成績は以下の通りです。

辰己2019成績

 辰己選手は立命館大学を経てドラフト1位で今年度から楽天に加入しました。そのビッグマウスぶりで注目を集めましたが、オープン戦で活躍をすると、シーズン途中からはセンター・ライトのポジションを務め124試合に出場しました。

 辰己選手はその華麗な守備が印象的です。
 UZRではチーム最大の11.8という記録を残しています。また規定打席には到達していないものの、センターで791と2/3イニングを守り、700イニング以上を守った選手の中ではリーグ1位のUZR(9.7)を記録しています。

 辰己選手の守備のすごさは
①肩の強さ
②打球判断能力
③足の速さ
 の3つを挙げることができます。
 よくパリーグTVに出演しているので、ここで説明するよりも実際に見たほうが分かりやすいと思います。

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 以上をまとめると
①浅村選手+ブラッシュ選手のおかげでOPSが増加した
②辰己選手の守備でUZRが増加した

 と言えます。

つまり、新加入選手の活躍によって成績が上がったという仮説は正しいという分析結果が出ました。

3. 仮説②「平石監督による戦力の底上げ」

 では次に考えられるのは「去年に比べ戦力の底上げができたのでは?」という仮説です。
 実際に梨田監督から平石監督に変わり、監督の指導のおかげで覚醒した選手がいるのでは、と考えました。

 この仮説を検証するために、昨年よりWARの値がよかった選手を分析します。

現有戦力2019

 茂木選手、藤田選手、銀次選手、そして嶋選手の4人が昨年よりWARを上げています。
 しかし、4人以外の選手は昨年よりWARが落ちる、または-の値を記録しています
 つまり現有戦力の底上げによってチーム成績が上昇したとは言い難いと考えます。

 今回は昨年から+1以上WARを上げた2選手、また昨季よりWARは低かったもののチーム4位の島内選手の成績を詳しく見たいと思います。

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 ① 茂木選手

画像7

 茂木選手の今季の成績は以下の通りです。

茂木2019成績

 今季の茂木選手はチーム2位のWAR 4.4を記録し、昨季より大きく上昇させました。
  リーグ1位の28本の2塁打を放ち、打撃面で楽天の指標を上げたと言えます。

② 銀次選手

銀次2

 銀次選手の今季の成績は以下の通りです。

銀次2019成績

 昨季は打率 .276に終わってしまいましたが、今季は3割に到達。浅村選手の加入により1塁守備に専念することができ、UZRも大幅な+になりました。

 今季の銀次選手ベストゲームといえば、10年ぶりにキャッチャーを務めたこの試合でしょう。
 ベンチ3人目捕手として構想することができれば采配にも幅が出るのではないでしょうか。

 ③ 島内選手

画像9

 島内選手の今季の成績は以下の通りです。

島内2019成績

 今季は昨季には及ばないものの2桁本塁打を放つなど安定的な成績を残した島内選手。
 守備でもレフトで129試合に出場し、チームUZR増加に貢献しました。

 一方で、昨季よりも成績を落としてしまった理由は、田中選手のけが・不調によりスタメン出場が多くなり、疲労があったせいではないかと考えます。
 来季はレフトのポジション争いをしながら調子の良さを継続できると、さらに活躍できると思います。

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4. まとめ 

 以上をまとめると

① 新戦力として2019年より楽天に加入した浅村選手・ブラッシュ選手の活躍により2ベース数・四球数が大幅に増加し、チームOPSが上がった。
② 「浅村選手が出塁しブラッシュ選手が返す」という3.4番を構築し、昨季より多く得点・打点を記録した。
③ 1年目の辰己選手のリーグトップ並みの活躍によりチームUZRの指標が上がった。
④ 多くの選手は昨季より成績が下降したものの、茂木選手・銀次選手は昨年からWARを大きく増加させた。また島内選手も打撃・守備面で活躍し、チーム4位のWARを記録した。

 この4つの理由により打撃・守備面で成長を遂げ、楽天は1年で最下位から3位へと順位を上げることができたと分析することができました。

 ただ、今回は「リーグワーストの走塁指標の低さがチームWAR及び順位に与えた影響」を考えることができなかったため、今後の研究課題とさせていただきます。

 次回は【投手編】として、投手をデータから分析していきます。

 ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。
 ご意見・ご指摘などがあればどしどしコメントをお願いします。

 では、また次回。 

5. 参考

 1.02 Essence of Baseball
 sportsnavi
 Baseball LAB






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