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こんな時代だからこそ

以前ファッション雑誌を読んでいた時に、妙に目を引くコラムがあった。

「偏愛」について書かれていた。言葉の意味を調べると「ある物や人だけをかたよって愛すること。また、その愛情。」とのことで、マイナスに捉えがちな言葉だが、何か夢中で好きになれることがあるって、人生を豊かにするし、いいことだよねという内容。

「好きなものが多くていいよねー、羨ましいわ。」と言われることが少なくない。小さい頃から収集癖があり、人より何かにハマりやすい性質であることは自覚している。しかしジャンルも系統も統一性がない。
例えば音楽でいうと、いわゆるエモい感じの詩的なポップスも好きだけど、クイーンのようなブリティッシュオールドロックも大好きだ。
直感的に良いと思ったものにハマってしまうため、どハマりするけどすぐに覚めてしまうものもあるし、好きと言いつつそこまで詳しくないものもある。
多分そのコラムが心に残っているのは、「偏愛」という言葉のチョイスもあるが、何より自分が肯定された気がしたからだ。好きなものによっては、そんなものハマってどうするの?と言われることもあるし、ちょっと質問されて、調子に乗ってアツく語ってみると冷ややかな目線で見られることも少なくない。

「自分とは」という問いに答えるのって、大人になってからの方が難しい。こういう風に答えた方がインパクトに残るかな?印象がいいかな?これ言って恥ずかしくないかな?と世間体を考えてしまう。けれど、些細なことでもいいし、気持ちの大小に拘らずに「偏愛」をリストアップしてみると、自ずと自分らしさが現れてくるのだ。そのリストを見るだけで、楽しい気分になれるし、系統は違えど、こういうところに惹かれるんだなという共通点も見えてきて、これが私!と思えるようになってくるのだ。

前置きがかなり長くなってしまったが、その頭の片隅にあった「偏愛」という言葉を思い出させてくれたのが、花田菜々子さんの『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』という本だ。一回目にしただけでは、てにをはを正しく覚えられないくらい長いタイトルだが、その強いインパクトのタイトルを裏切らない爽快感があり、面白い内容で、あっという間に読み終わってしまった。全体の内容はタイトルそのままだが、この花田さんの本に関する知識がすごいし、本当に本が大好きなんだなということが伝わってくる。そして何より本について語ってる時に生き生きとしていて、力がみなぎっているのがわかり、本に対する愛が伝わる。

花田さんは、その人に合う本を実際に勧められるレベルだから相当な知識量だけど、私的に推したいポイントはそこじゃなくて、好きって、生きる力になるんだなってことだ。時にそれが人に役立つ時もあるし、つながりを生むこともある。

趣味がこれといってないという人でも、好きなものはあるはずだ。スイーツでもいい、アイドルでもいい、スポーツでもなんでもいい。嫌なことがあったときに、youtubeのこれを見ると元気になるとかでもいい。ざっくりと、仕事!でもいい。というかそれは素晴らしい。
そして、それについて特に詳しくある必要は全くない。けれど、自分の好きという気持ちを大切にしてほしいのだ。

冒頭でこんな時代だからこそ、と書いたのは、コロナの影響で家に閉じこもることが多くなり、自然と気分も参ってしまうが、好きなことがあるとそんな時すらも楽しく過ごせるのだ。
仕事などでストレスが溜まった時も、これを見たら癒されるというものがあると強い。私の友人が、大人は自分の機嫌は自分でとると言っていたが、それにも役立つ。

好きなもの、楽しいことがあれば人生が楽しくなる。ただし、注意点もある。ハマりすぎて夜通し没頭してしまい、寝不足がたたると健康を害してかえってストレスをあげてしまうこと。そして、見落としがちだが重要なことは、自分が好きだと思うものは相手も好きだとは限らないため、アツく語りすぎないことだ。笑

友達を失ってしまっては元も子もない。笑
程よく「偏愛」を楽しんで、人生を充実させたいところだ。

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